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ルックバック

2024/07/11投稿

ほめです。
ひたすら背中で生き様を見せつけるマンガことルックバック。
コマ間を想像で補完していた部分が余すことなく映像化され、解像度が大きく上がった。
積み上げる姿をこれでもかと言わんばかりに提示されるのだが、
京本との初邂逅後、雨の中走り出すシーンに思わず落涙。
努力が誰かに認められることほど深く喜べることなどこの世に存在せず、それまでの背中が報われる瞬間のカタルシスたるや。
また、藤野と京本の関係性が強調され、手を繋ぐシーンや木を挟んだ会話など、より繋がりを意識した演出が多い。
足を引っ張る人間のやだみもより濃厚であり、成長と挫折、達成と喪失の縮図となっている。
一方、その分テンポの良さやスピード感が失われた部分もあり、同じ作品にもかかわらず受ける印象はだいぶと違う。

構成や画角の巧みさに舌を巻いた原作と、58分と短尺ながらその濃密さに驚くこととなった本作。
正直な所、どちらにも触れて欲しい作品であり、創作に一度でも触れたことがあればこんなに刺さる作品もないのではないか、という点においては畏怖すら覚える。
まさに二度美味しく、そういった意味では絶賛の類なのだが、やはりマンガと映画では表現、味わいが違う。
そもそも原作からして、カメラ位置が非常に計算された、映画的な作品ではあるのです。
どちらか一方を選択するなら、本作は交通整理されすぎたなという印象があり、
原作の方がより自由で空想の余地があると思ってしまう。

目と表情、藤本タツキの独特な絵柄、筆致をさらに細かく美しく仕上げている。
無表情からの感情の爆発、この振れ幅は大きな魅力であり、作家性なのかとも。
目に光がない、いわゆる目が死んでいると言われている表情は、
そこに何を思っているかを観客が判断しますが、嬉しさも悲しみも込められるのだなと。

情熱と、そこに費やした時間。
他の生き方ができないとも言えますし、だからこそとも。
この作品は劇物、毒薬の類ではないか。
色々と踏み外してしまう人も出てきちゃうような、そんなパンチ力があった。


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