ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ
2024/10/24投稿
ほめです。
ですが、純粋に面白かったかと問われると言葉に詰まります。
色々思いを馳せた結果、あとからじわじわくるパターンです。
人生の底にいるかのようなわびしい男が、ある意味で夢を叶えた前作。
一方、物語の続きとして新たな生きがいを見つけるも、演じるということ自体を諦めてしまった本作。
それはいわば、本質的に陰と見せかけた陽の話と、陽と見せかけた陰の話という、きれいな表裏一体のストーリー構成になっている。
さらに、どちらも「人生とは」というテーマにおいて一貫しており、今作においての感情表現は空想のみならず歌も交えて提示する。
重要なセリフはすべて歌詞が代替しており、アーサーが世界をどうとらえているかが、映像も含めて理解しやすい。
とはいえ、それが作品としての面白さにつながっているかと問われれば疑問である上に、やはり前作との雰囲気にギャップがあることは否めないだろう。
それは作風のみならず、ジョーカーというキャラクターの解釈、設定をどこにもってくるかという点にも現れている。
ホアキン・フェニックスの演じるジョーカーはこれ、という事自体になんら問題はない。
端的に、こんなに頻繁に歌う人ではなかったではないか、という点と、笑いの発作がほぼ収まっていることは解せない。
また、道化を演じることができなくなった弱く年老いた男の姿というものが、結末を含めてなんともやるせない気持ちにならざるを得ない。
偶像として上り詰めたからこそ得られたハーレイという存在と周囲の熱狂が、暴力に屈し心が折れた結果失われてしまった。
ピエロのメイクをしているからジョーカーなのではなく、彼は彼でしかないということを突きつけられて、虚構を保てなかった。
そうなればもはやアイドルたり得ず、一人の何も持っていない男に逆戻りだ。
鑑賞中はつまらないオチだと感じていたが、思い返せばあれ以外の着地はなかったとも。
あの時点では仮面を剥ぎ取られた一犯罪者にすぎず、何も特別なことのない相応な形だったのではないかと。
然るべき報いかは判断できないが、冒頭から左唇の端を流れる血というメイクに絡めたモチーフの扱いは上手。
何をおいても前作ありきの作品であり、さまざまな対比や音楽を用いて主役二人の心情、行動を描いたことは素晴らしい。
しかし、女性への執着に生きる希望を見つけるも、頑張りきれなかった、ダメでしたという話なので盛り上がりには欠ける。
そして、夢を諦めること、苦しさから逃げてしまうことがこんなに悲惨な末路をたどるのか、という視点において大変悲しく救いもない。
ヴィランの物語に勧善懲悪など求めてはおらず、因果応報が気持ちよくないという側面もあるかもしれない。
モヤモヤするのはエンタメとしての面白さ、すごかったという満足度が足らなかったからだろうか。
そういった意味では、名作の続編は難しいというジレンマに打ち勝てていないのではないかと。
特報でWhat the World Needs Now Is Loveのモチーフで、口紅に顔を合わせるシーンが震えるほど良かったんですけども。
劇中ではclose to youの最中となっていて、そこはとても残念。
あの静かな演出にしびれたんだけれど。
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