フォールガイ
2024/08/22投稿
ほめです。
ブレット・トレインぶりのデヴィッド・リーチ監督の新作は、自身のキャリアを主役2人に託したなんとも解像度の高い作品となっています。
劇中では愛ゆえにという行動原理が一貫しており、それは映画の裏側と、そこで描かれる人々の情熱と狂気が垣間見えます。
そして、映画というものはこう作られているという状況説明を逆手に取り、それを一周回ってエモく描写するというロジカルな魅せ方。
オペラハウス前の海から上がってくるシーンや、ヘリからの落下シーンなど大変気持ちが良かった。
フォールガイというタイトルのダブルミーニング、自身のトラウマである事故とラストの対比。
落ちる、という言葉に対する意味の変遷が秀逸です。
色々差し込まれる映画の小ネタや演出、ドベタに見える展開の具合も良く、ドキュメンタリーとしての側面が加わると驚くほど新鮮です。
仕事を取り上げる作品ならではの舞台裏を覗く視点は、既視感がある展開でも見え方がまったく変わってしまう。
このさじ加減がちょうどよかった、の一言につきるかもしれません。
スタントマンという職業にフォーカスしつつ、フィクションとしてアクションする。
そのうえで、それ自体がフィクションであり、そこにはスタントダブルが存在するという構造はおもしろい。
構造のメタ的なおもしろさと、境界の曖昧さはライブや舞台的であるともいえるのではないかと。
すべてのキャラクターが担う役割に対して、シリアスになりすぎず、物足りなくもならず、それなりにちょうどよい。
深刻さが一線を越えないあたりや、基本的に人が死なないことも含めて、より現実的な設定でした。
また、そのウロウロする具合が妙に観客との距離が近かったと感じた要因だと考えています。
とはいえ、やれメタだのカメオだのと食傷気味ではあるのですが、現実と物語との双方向性を生む手法が本作と相性が良いことは確か。
殺人以外はなにをやっても問題なし、というのは脇が甘いというか、フィクションの範疇を越えはしないですけれども。
「DUNE/デューン 砂の惑星」オマージュであろう、ジェイソン・モモアに対してはさもありなん。
もはや予定調和の域じゃなかったですか、アレ。
なぜだか、なんかいいなあ、ってぼんやり考える場面が多かったです。
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