新刊『生きもの毛事典』
新刊のお知らせです。
このほど、毛の本が出版となります。
『生きもの毛辞典』(文一総合出版)
保谷彰彦 著
川崎悟司 イラスト
2022年6月刊行
定価1,650円(本体1,500円+10%税)
出版社の紹介サイト
保谷彰彦ウェブサイト
丸ごと一冊、毛の本です。生きものには、いろいろな「毛」があり、その働きは多様です。この本では、哺乳類だけでなく、昆虫や植物、微生物などなど、様々な生きものについて、毛の働きを6つに分類して紹介しています。全体を読んでいただくと、毛は生きものたちの命を支える大切な存在であることを実感いただけるのではないかと思います。もくじは以下のとおりで、54の話題と6つのコラムがあります。
もくじ
◎ はじめによみたい 毛の基礎知識
◎ 本文
1. 毛で断熱する
2. 毛で身を守る
3. 毛で感じとる
4. 毛で暮らす
5. 毛で移動する
6. 毛でつながる
7. 毛からヒトをみる
◎ さくいん、引用文献
この世界にムダな毛なんてありません。
お手にとって、毛の深い世界をお楽しみいただければ幸いです。
この本を作るのに、多くの方にお世話になりました。川崎悟司さんには印象的で、わかりやすく、楽しいイラストをたくさん描いていただきました。どのイラストにも、スゴさを感じます。ブックデザイン/アートディレクションは辻中浩一さん、小池万友美さん、三木麻郁さん、村松亨修さんです。素敵な本にしていただきました。文一総合出版の今井悠さん、志水謙祐さんには、いつも優しく、そして丁寧かつ速やかにご対応いただきました。本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。
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以下、おま毛の記事です。
よろしければ、ご覧くださいませ。
「毛」に注目したワケは?
一口に「毛」といっても、そこには驚くほど多様な世界が広がっていますす。比較的シンプルな形なのに、いろいろな毛があり、多様な役割があるということが面白いと感じたからです。
多くの生きものには毛が生えています。「毛」は狭い意味では髪の毛や哺乳類の体毛を、広い意味では哺乳類だけでなく、全ての生きものに見られる「毛のようなもの」を指します。要するに、昆虫や植物などにも毛はあり、肉眼では見えないような微生物や、ヒトの細胞にも毛があるのです。「毛の本」では、生きものに生えている多様な「毛」や、その名称に「毛」とつくものを紹介しています。
多くの「毛」は糸状で見た目がシンプルですが、その役割は意外にも多様です。そこで、「毛の本」では、毛の役割に注目して、最新の研究成果を交えながら、生きものにとって毛は生きるために欠かせない存在であることを紹介しています。
「毛の本」を書くことになった経緯は?
1つには、最新の科学論文を記事として紹介している中で、「毛」の興味深い研究に触れる機会が多かったことがあります。
これまで、私は植物を主なテーマにして本を書いてきました。特に注目してきたのが、その多様性や進化です。それと同時に、ここ10年ほど、『子供の科学』誌を中心に、雑誌やウェブメディアなどに、最新の科学論文にもとづく記事を寄稿してきました。それらの記事では、植物だけでなく、動物やキノコ、微生物などにも注目して、その多様な世界を紹介してきました。その中で、「毛」にまつわる、いくつもの楽しい研究を知ることになりました。
こうして、これまでのノウハウを生かしつつ、「毛の本」では科学論文にもとづいて、誰かに話したくなるような楽しい毛の話を書きました。
「毛」への個人的な思いは?
私は昔から「植物の毛」に魅力を感じてきました。最初に「植物の毛」を意識したのは大学1年生のころで、植物を同定するのに、毛がポイントになることがあるのを知ったときです。その後、タンポポ研究や植物観察会(草花散歩会)など、いろいろな場面で「植物の毛」に魅力を感じてきました。
というのも、なぜ毛が生えているのか? この毛が何の役に立つのか? などなど、「植物の毛」を見ていると、あれこれと考えを巡らすことになり、とても楽しいのです。これが魅力の1つです。そして、ルーペを使うと、それらの毛は格別に美しく見えるというのも大きな魅力です。
ちなみに、自著『タンポポハンドブック』でも紹介していますが、タンポポの同定でも、毛は隠れた重要ポイントになっています。
そして、科学記事を書く中で、「毛」に隠されたヒミツを知るようになりました。このように、「毛」への思いは長い時間をかけて、じわじわと盛り上がりながら、ついに「毛の本」としてまとまったのです。
「毛の本」を書くのは楽しかったか?
ものすごく楽しかったです。この世界にムダな毛なんてないことがよくわかりましたし、毛の深い世界にもっと迫っていきたいと思っています。
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最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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