デザイナー歴19年の大学准教授が伝えるデザインの引き出しの増やし方3つ
「デザインのアイデアの引き出しってどうやったら増やせるんですか?」
「なんで毎回ネタ切れにならないんですか?」
デザイナーになってまだ数年の友人にそんな事を聞かれました。
たしかに駆け出しの頃は「引き出しを増やすには!?」と必死になっていたように思いますが、デザイナー歴12,3年あたりからそんな悩みが表面化しなくなり、欲しいときに欲しいひらめきが出てくることが増えてきました。
(とはいえ、どうしていいかわからなくて悩む事も未だに多いですけど!)
申し遅れました。デザイナーの市角と申します。デザインしたり映像作ったりしながら、大学准教授としてデザイン思考について教えてみたり、デザインとビジネスに関するワークショプを企業や自治体で行っています。
毎週木曜日は、#デザイナーの頭の中 シリーズを書いています。
引き出しが多いとはどんな状態か?分析してみる
そもそも引き出しが多い状態ってどういう状態でしょうか?
ここでは、「欲しいときにほしいアイデアが出てくる状態」と仮に定義してみましょう。
この状態を作るために、パッと思いつくだけでも3つの要素がありますね。
・01 アイデアのストック量
・02 ストックしてるアイデアの多様性
・03 的確なアイデアを検索する能力
インプットしてないものはアウトプット出来ません。この世の摂理ですね。
なのでアイデアの絶対量は当然重要。
さらに、同じようなアイデアばかり蛸壺的にストックされていてもメモリの無駄遣いに陥ってしまう。アイデアそのものの多様性も重要になります。
そして現場で求められるのが上手に引き出しを開ける力。
今必要になってる「何か」を「なんとなく」検索して脳内で持ってくる力がないと、ただストックされてるだけで終わってしまいます。
今回はこの3つを順番に考えていきたいと思います。
01 ストックを増やすには?
意識的にストックを増やそうと思って展示にいったり、ピンタレストを観たり、本を読んでみたりするのも当然効果があります。
とくに右も左もわからない状態では雑食動物のように片っ端から誰かの作った作品に触れるのはおすすめです。
ただし、量でいうとこの方法には限界があります。
忙しい毎日を過ごす中で、そんなに頻繁にイベントに行けないし、何十分も画面とにらめっこなんて出来ません。
スポーツでもそうですが意思の力に頼るのはどんな分野でも危険で、
習慣の力には敵わない。
そこで継続してインプットを続けられる習慣を作ってみることをおすすめします。
僕がやってる習慣は
・散歩
・旅
の2つ。
散歩をしてると、誰かがデザインした色んなものが飛び込んでくる。
「あれ?これちょっといいかも?」と思ったものは迷わずスマホやカメラで撮影してストック。
旅をしてるときも同様ですね。旅は特殊な体験なので感覚が鋭くなり、いつもよりもストックがはかどります。
そうしてるとただ街を移動しているだけでも毎日アイデアが増えてくる状態になります。頑張らなくていいから続く。おすすめです。
旅とデザインストックについて書いたnoteはこちら。
02 アイデアの引き出しに多様性を持たせるには?
雑食であることが大切だと思います。
よくやっちゃいがちなミスとして自分が好きなものばかり集めてしまうというのがあります。そうすると同じようなアイデアばかり溜まってくる。
「ちょっとこれ微妙だなあ?」と思ったものも撮影してストックしてみましょう。後で持ち帰り、「なんでこれ微妙って思ったんだろう自分?」と自分と対話するのに使えるし、グッドデザインのストックだけじゃなくて「やっちゃいけないデザイン」のストックも作れる。
さらに「自分はいいと思えないけど、これをいいと思う人達がいる」という事実を理解できるし、「この人達が好きそうなデザインってこういうのだ」みたいな引き出しも開発されてきます。
そしてたまに、「あれ?これ系のデザイン、、、ちょっと好きかも??」
みたいに自分の好みのチャンネルが一つ増えたりも。
食べ物に似てますね。パクチー嫌いだった人が好きになるみたいな。
それでも人間マンネリ化から逃げることは難しいので「誰かからのお誘い」を上手に使うようにしています。
自分の場合、絶対に進んでいかない「宝塚」とか「ナイター」とか、知らないアーティストのライブとか。そんな場所に誘われたときはチャンスで、そこでどんなデザインが試行錯誤されてるのか?見ることが出来ます。
月イチはいつもは断るイベントに顔出しする。
みたいなルールを決めると良いですよ。
03 的確にほしいアイデアを引き出す力はどう磨く?
3つ目はちょっと難しいです。
アイデアを引き出すためには、アイデアのストックを上手に「ラベリング」する能力が求められる。
これはインプットのときに行う作業です。
例えば、スーパーマーケットでインスタントコーヒーのパッケージを観たとします。そのデザインを頭に入れる時に言語化しながら頭に入れましょう。
例えば
「コーヒーの茶色を引き立てる補色を使ってるな」「高級感とか意味がないので、マット紙じゃなくて目に付きやすいコート紙」「クリーミーな感じにするために全部の要素が円で構成されてる」「書体の端っこも丸みがあって味を表そうとしてるな」
などなど。
目に入ったデザインを分析して脳内でタグ付けしていく感じですね。
このタグ付けがうまく行ってると後で関連する仕事でアイデアが必要になったときに、「そういえば??」と思い出しやすくなります。
人間が脳内で情報を検索するときはかならず「連想」を使うので
連想しやすいキーワードを考えて覚えていくと良さそうです。
他にもいろんな引き出し増加のための習慣がありそうなので自分を観察したり友人に聞いてみてまた記事にしてみたいと思います!
そんなかんじで毎週木曜日は、#デザイナーの頭の中 シリーズ書いてます!
デザインについてのお話、他にもありますので興味があったら。