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話題のMMT(現代金融理論)は正しいのか?

MMT(Modern Monetary Theory: 現代金融理論)が連日紙面をにぎわしているので、予定を変更してMMTについて書きます。


結論から先に言います。上の記事のように否定的に報道されることが多いのですが、MMT派の主張は財政破綻論者よりずっとまともだと思います。


MMT派の主張はだいたいこんな感じです。

1. 外貨建て債務を持たず自国通貨を持つ国は財政破綻しない
2. だってお金を刷ればいいんだから
3. そういう国は財政赤字を恐れず、財政政策をたくさんやればいい
4. ハイパーインフレなんてどうせ起きないんだから


1はMMTの中核をなすメッセージです。私の三角関係理論と同じ結論です。
ごく簡単に言うと、政府がお金を使って赤字になると、そのお金を受け取った国民が同じ分だけ黒字になっており、国債はしっかり消化されるし国の富の総和も減らない、ということです。
「政府の赤字は国民の黒字」という概念は重要なのでぜひ覚えておいてください。ここが国の財政と企業財務の大きな違いです。


2は半分合っていて半分間違っています。私の三角関係理論に「お金を刷る」プロセスは含まれていません。確かにお金を刷れば破綻はしませんが、お金を刷らなくても破綻はしません。

今、日本政府が発行した国債を日銀が大量に買っています。これを「日銀がお金を刷って国債を買っている」と解釈する人もいます。仮にそうだとして、日銀が買うのを止める(≒お金を刷るのをやめる)と日本は財政破綻するでしょうか。答えは"No"です。日銀に買われてしまって国債を買いたくても買えなかった投資家が飛びついて買うでしょう。金利は1%も上がらないと思います。

ただ、お金を刷るのと国債を発行するのは大差ないので、ここはこだわらなくてもいいかもしれません。


3も半分合っていて半分間違っています。
財政破綻はしませんが、国富(=国の富の総量)を考えれば、公共事業の非効率はマイナスに働きます。道路を掘って埋める公共事業を繰り返していれば、それに使われる資源分の国富が失われていくのは明らかです。
非効率の小さい、単純な減税であればやっても構いません。が、10,000円使って9,000円を配るこども手当や軽減税率は、道路を掘って埋めるのと同じくらいの愚策です。
非効率を小さくできるのであれば財政政策は有効ですが、財政政策の性質上難しいのではないかと思います。

MMT派は「限界を迎えている金融政策より財政政策で景気を刺激すべきだ」というスタンスですが、金融政策にはまだまだ余地があると思いますし、非効率の大きな財政政策より効率的な金融政策の方が効果は大きいと思います。大胆な金融政策+そこそこ大きな財政政策の組み合わせ、つまり今の日本の政策が大枠では正しいと思います。


4は正しいと思います。
財政破綻論者は「このまま財政が悪化するといつかハイパーインフレ(=通貨暴落)が起きる」と20年前から叫び続けています。

為替相場はビルトインスタビライザー(Built-in Stabilizer: 自動安定装置)を内蔵しています。円が安くなると輸出が伸び、輸入が抑えられます。すると経常黒字が増え、円高効果が生まれます。つまり、円相場が一方向に偏らない機能が備わっているのです。

このスタビライザーを破壊するものが存在します。それが外貨建て債務です。円安になると外貨建て債務は膨張し、さらなる円安要因になります。円安が円安を呼ぶわけです。幸い日本は外貨建て債務を持っていません。スタビライザーが正しく機能するのです。

結局、円の価値=日本の価値。日本の持つ資産や国民、生産力、外部環境などの総合的な価値によって決まるものであり、それが非連続的に変わることは無いため、円が非連続的に暴落することも無いのです。

ハイパーインフレが起きないからと言って、それでいいわけではありません。緩やかな円安でも緩やかに資産が目減りするわけですから。円の価値を落とさないためにも、日本の国富を増やす努力が必要です。


【結論】
MMT派の言う通り財政破綻もハイパーインフレも起きないが、だからと言って財政支出を大きく増やしていいわけではない。引き続き、金融政策をメインに置くべき。


マクロ経済学は検証にとても時間がかかり、かつ、同じ状況が何度もあるわけではないため、1つの理論の正誤を証明することが困難です。
そのため、他の学問分野に比べ驚くほど完成度が低く、誤った理論も多く存在します。権威ある人が語る理論が正しいとは限りませんし、著名人が批判する理論が間違っているとも限りません。いろんな意見を聞いてみて、どの理論がしっくりくるのか。好みの理論を探してみてはいかがでしょう?


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