ディズニー映画が好きなあなたに、ツイステッドワンダーランドをオススメしたい。

「ツイステッドワンダーランド？今流行ってるディズニーの悪役をモチーフにした男の子達が出てくるスマートホホンのゲームだね。ディズニーは好きだけど、原作とあまり関係ないのは別にいいや。」というあなた。ツイステッドワンダーランドは、ディズニー映画が好きなあなたにこそオススメしたい作品である。

確かに、見た目だけならハンサムな男の子達が出てくる学園恋愛ゲームに見える。実際私もそう思って、どの程度の原作オマージュがあるのかと思いプレイしてみた。しかし蓋を開けてみれば、そこにはディズニー映画への愛と歴史とオマージュがふんだんに詰まった、夢の続きがあったのである。

まずはストーリーについて説明したい。このゲームは、ヴィランをモチーフにした彼らがどんな問題を巻き起こすかを楽しめるのだが、ヴィランが好きな人にとって心配な点として、「改心して欲しくない」というのがあると思う。誰だってハデス様が「オレこれからは心を入れ替えて死者の国の子供達のためにラップで食っていこうと思うんだ。」と言い始めたら泣いてしまう。（面白くて）
この点に関しては安心して欲しい、改心しない。なんなら反省もしない。ディズニーのヒーローサイドにあるような、人々の背を優しく押してくれるような正しいストーリー展開は、無い。これが最高なのである。このゲームはヴィランをヴィランのまま肯定し、生かしてくれるのだ！

おかげで学園の治安は最悪。王子様の愛の歌の代わりに聞こえてくるのは可哀想な悲鳴と邪悪な高笑いばかりだ。（愛の歌を歌っている者もいるが、彼は純粋にストーカーなので安心である。）

このようなキャラクターのモチーフを活かしたストーリーのうえに、目を見張るのはふんだんに散りばめられた原作のオマージュシーンや台詞である。なんならオマージュどころではなく、がっつり原作映画のワンシーンすら流れる（！）そして、それがゲームのストーリーと奇妙なリンクを見せ、時に恐ろしさすら覚える仕上がりになっている。ヴィランを称えるこの世界の歪みと異質さが突き付けられるストーリーは、今後どうなるのか楽しみだ。

なるほどストーリーはわかった。しかし、プレーヤーである主人公との恋愛要素があるのだろうか？そういうのは楽しいが、ヴィランのイメージとはズレてしまうのでは…私はジャファー様の奴隷になって鉄の鎖に繋がれたいだけで、私のことを愛してるジャファー様は解釈違いです、という心配もあるだろう。安心してほしい、無い。

彼らはヴィランなので、主人公に「首をはねろ」「歯の1、2本置いてけ」「あなたの部屋を押収しますね」「オアシスまで砂漠を行進しろ」と心ない言葉を浴びせてくれるし、数々の事件を経て友情が2㎝ほど深まっても「首をはねてしまうよ」「パン買ってこい」「あまりにも小汚いので雑巾かと思いました」「お前の部屋は…なんというか…うん…趣があるな…」「単純バカ農民デュース」と優しい言葉をかけてくれる。
そう、彼らはいつまでも意地悪だ。言うこと為すこと、自己中心的でうぬぼれで自由気ままでよく怒りよく笑う、そして魅力的でどこか憎めない。小さい頃から大好きだった、ヴィランの彼らがそこにいる。

このゲームはヴィランをヴィランのまま歩ませて、その続きを見せてくれる。そして彼らはヴィランのまま、少しだけ何かを手に入れて、少しだけ救われる。

ハートの女王はあの後どうなったんだろう？もしもスカーが死なずに済んだら、ハイエナ達と協力できていれば。ジェットサムとフロットサムが死ななければアースラは。ジャファーが勝っていたら。何故女王はあんな事を、あの狩人はどうなってしまうのか。ハデスだってハッピーになって欲しい。マレフィセントの強さをもっと見たい。クルエラは、ガストンは、ファシリエは…。

ヴィランに感情移入してしまうタイプだったあなた、ヴィランに勝って欲しかったあなた、ヒーローにヴィランとも仲良くして欲しかったあなた。

このゲームはヴィランとの別れに心を痛めた、あの時のあなたのために用意された夢のエピローグだと思う。