ダ・ヴィンチのノートのサイズ
1994年11月11日、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツがあるものを落札しました。
それは、ダ・ヴィンチの「レスター手稿」と呼ばれるノート。
落札額は30,802,500ドル。
当時の相場が1ドル当たり97.5円だったため、日本円にすると約30億円。
サラリーマンの生涯年収が大体2億円と言われているので、平均的サラリーマン15人分の生涯年収です。
落札された本として、世界で最も高価な本として当時話題になり、2010年時点でもその地位は変わりませんでした。
「レスター手稿」は36枚で構成されており、1枚の表裏に記載されているので、合計で72ページ。
30億円を72ページで割ると、1ページあたり、約4000万円となります!
ダ・ヴィンチの残したノートの量
ちなみに、現存するダ・ヴィンチのノートは約7200枚ほど。
すでに失われてしまったノートを含めると、現存する数の4倍、つまり28,800枚はあったのではと推測されています。
この計算の根拠は、弟子のメルツィが、ダ・ヴィンチの手稿からまとめた芸術に関する著作集です。
その著作集のうち、ダ・ヴィンチの自筆原稿が現存しているのは四分の一程度。
よって、少なくとも四分の三のダ・ヴィンチのノートが、失われたと考えられています。
ダ・ヴィンチのノートのサイズ
とんでもない価値のついたダ・ヴィンチのノートですが、彼がいったいどんなサイズのノート、または紙を使っていたのか気になり、調べてみました。
参考にしたのは、ダ・ヴィンチ研究の世界的権威のひとり、NYメトロポリタン美術館のキュレーターを務めるCarmen C. Bambach(カルメン・C・バンバック)の『Leonardo da Vinci Rediscovered 』。
4巻本、合計2350ページというとんでもないボリュームで、ニューヨークタイムズにおいて、2019年のベストアートブックスの一冊として選ばれた本です。
著者は執筆に24年間を費やしたと語っており、その熱量が感じられます。
その本によると、ダ・ヴィンチは基本的に4種類のサイズのノートを使用していたことがわかりました。
① folioサイズ
縦29-31.5cm x 横22-23cm 大きさの紙です。
現在市販されているものだと、A4サイズの用紙(29.7cm x 21cm )とほぼ同じ大きさ。
ちなみに、上記で紹介した『レスター手稿』もこのカテゴリーにはいり、1ページの大きさは29cm × 22 cmです。
② quartoサイズ
こちらは20-30cm x 14-17cmの大きさ。
市販のものだと、A5サイズの用紙(21cm x 14.8cm)が近いです。
③ octavoサイズ
大きさは14-15cm x 10cm 。
現在手に入るものとしては、A6サイズの用紙(14.8cm x 10.5cm)が近いといえます。
④ sedicesimoサイズ
最小のサイズで、9.5-10.5cm x 8 cmほどの大きさ。
こちらは市販のものだと、A7サイズの(10.5cm x 7.4cm)が近いです。
ダ・ヴィンチのルーズリーフ的ノート術
上記のノート以外にも、1枚A3程度の大きさの用紙を使った例もあり、兵器のアイディアや地図などが描かれ、パトロンに見せる用に使用したと思われています。
さらに興味深いことに、上記の①、②のサイズのノートに関して、ノートとは別に、A3用紙の大きさの紙を1つ折ったもの(①のA4の紙が2枚できる)、または二つ折りしたもの(②のA5の紙が4枚できる)を使用していたようです。
それはなぜかというと、ルーズリーフ的な使い方をするため。
ダ・ヴィンチは意図的にバラバラの紙を使用し、後でテーマごとに整理することを考えていた、とバンバックは述べています。
そしてなんといってもA3のサイズの紙の良さは、用途によってA3からA5サイズ(もっと折ってさらに小さく)まで用紙の大きさを選べること。
A3の紙を四つ折りにしてA5サイズの紙にすることによって、ポケットに入れて持ち運びもできるので、持ち運ぶにも便利だったようです。