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【絵本】夏休み前に子供時代のワクワクをもう一度『夏のルール』【絵本】夏休み前に子供時代のワクワクをもう一度『夏のルール』
夏休みはもう少し先だが、夏休みにぴったりの絵本を見つけた。
それはショーン・タンの『夏のルール』で、「子供時代」に経験した故郷での思い出に誘う、ノスタルジアに溢れた一冊。
本作を一言でいうと、「幻想的な世界を舞台に、子供の楽しい夏の日々」を描いた絵本だ。
巨大な赤いウサギ、独房のような機関車など、ヘンテコなモノや生き物がたくさん登場する。
タイトルの通り、子供たちの間で大切だった、なんの理屈もない「ルール」がテーマとなっている。
ルールは「カタツムリを踏んづけないこと。」や「いつでもボルトカッターを用意しておくこと。」など個性的で、基本的には左ページにルール、右ページに絵が添えられ、なぜそのルールが必要なのかをあらわしている。
短かい作品だが、幻想的な絵と美しい色づかいがすばらしく、ファンタジーの世界に迷い込んだような感覚を味わうことができ、ずっと眺めていても飽きない。
著者のショーン・タンはオーストラリアの絵本作家で、文字のない絵本の傑作『アライバル』など、大人向けの絵本作品で知られている。
彼の持ち味は「寓話的な表現」で、現実を寓話的に誇張した絵と、読者に考えさせるストーリーテリングが本作にも活きている。
本書を読むことで、不思議が不思議ではなく、現実と想像の境界があいまいだった子供時代を思い出した。
一見楽しいのだがどこか恐ろしく、なんだか寂しさも感じ、それらの重層的な感情が心に染み、胸がいっぱいになる作品だった。
ルールは守ること。意味のわからないルールなら、なおさら。
という言葉が考えさせられる。
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