自衛官とドラゴンの物語『ひそねとまそたん』
個人的に面白かったアニメをご紹介。
内容は、航空自衛隊に配属された新人隊員が、いきなり巨大なドラゴンのパイロットになる話。
絵柄から「ゆるふわな非日常アニメ」を想定していたら、いい意味で期待を裏切られる骨太な青春群像劇アニメです。
そんな『ひそねとまそたん』を魅力を以下三点紹介します。
魅力的なキャラクター
主人公である「甘粕ひそね」には「思ったことが口に出る」という特徴があり、それにより友人をつくれずにいます。
それが彼女の悩みでもあり、どちらかというと引っ込み思案な性格を形作っています。
あえて気を抜いてつくられた彼女のキャラクター造形も、いってしまえば「華」がなく、キラキラのヒロインといった感じではありません。
そんな悩みを抱え、見た目が凡庸な主人公が、ドラゴンとの出会いをつうじて変わっていきます。
自分の大切なものを見つけ、いきいきと目を輝かせ、それを守るために主体的に行動をしていく姿に震えます。
そんな彼女を中心に、まわりのメンバーもそれぞれに悩みをかかえており、個性的かつ魅力的。
色々な表情や、いきいきとした姿を見せてくれる動きとあいまって、何気ない掛け合いでも見ていて楽しいです。
登場人物の性格や心情変化、それらにもとづくドラゴンとの相性や関係といったアイデアが、視聴者を引きつけます。
変形ドラゴンのカッコよさ、かわいさ
悩みをかかえた女性を飲み込み、航空機に変身する不思議なドラゴン。
その変身シーンがカッコよすぎます!
また、ドラゴンの形態のときの動物としてのかわいらしさがアニメーションでいきいきと表現されており、カッコよさとかわいさのギャップに心奪われます。
航空機に姿を変えるドラゴンが物語に違和感なく溶け込んでおり、なぜ悩みをかかえた女性を飲み込むのか、なぜ航空機に変身するのかといった設定や世界観も楽しむことができます。
ドラゴンが空を飛んでいるときの迫力はアニメでしかできないような演出で見ごたえがあります。
既存の価値観への反逆
本作を観ていて気になるのは、「ごく自然に男尊女卑描写が散りばめられている」ということ。
たとえば、自衛隊のなかで「女性が性的対象として採点される」というセクハラ描写がされています。
普通に考えると大炎上しそうな内容です。
ただこれらは、制作側が意図的に描いていると思いました。
というのも「思ったことが口に出る」女性を主人公に据えているから。
彼女は、自分が不快だと感じたことにどんどん声をあげていきます。
彼女を代弁者に、人の気持ちを故意に踏みにじることや、男尊女卑といった昔からの価値観に疑問を持ち、「それはおかしい!」と声をあげ、「既存価値観のアップデートをしていこう」というメッセージを感じました。
物語のエンディングもしかり、彼女は日本古来からの伝統に反逆します。
おわりに
個性豊かなキャラクターに、かわいくもカッコ良いドラゴンを楽しめるアニメです。
登場人物たちがいろいろな衝突や葛藤をつうじて成長していく姿はすがすがしく、彼女たちを応援したくなります。
ストーリー自体もキレイに終わり、見終わったあとは心地よさに浸ることができました。
まさに、骨太な青春群像劇アニメでした。