
My Thanks Week
年に一度、私だけのサンクスウィークなるものがある。
選挙カーのように「ありがとう、ありがとう、ありがとうございまーす!」と(心の中で)叫びながら通勤の自転車を飛ばす。
そろそろその時期がやってくるのでそわそわしてきた。
クルマをやめて自転車通勤を復活させなければ、と決意した。
治療を始めて3か月。
体力低下を覚悟しながら、久々の片道30分の自転車漕ぎ。
すばらしき電動アシスト付きとはいえ復活初日はクタクタ。
でも問題なし。疲れより気持ちよさが勝る。
私が毎年秋のある時期に、朝っぱらから感謝を送り付けるお相手は、民家。見知らぬ他人の家。
玄関先や庭先に金木犀を植えているお家なのだ。
何の変哲もない住宅街の道が、甘やかな香りで満たされる秋の朝。
幸せな通勤時間。
植えてくださったうえに剪定までしてお手入れいただき、今年も見ず知らずの私に香りの提供ありがとうございます!と各お家に感謝する。
2022年のサンクスウィークも無事開催できそうで、数か月前の自分を思うと奇跡のようだ。
またあの香りに再会できる。
というわけで、自転車通勤を再開させた私の仕事は、まずは一番お気に入りの大木の様子を確認すること。
住宅街の古い民家の庭にある、他では見たことがないくらい大きな金木犀。
???
見過ごして通り過ぎてしまったか。
何度も確認して分かった。
大木のあった場所は駐車場になっていた。民家もなくなっていた。
どなたかの木だけど、勝手にMy tree登録して大切に思っていた。
自転車こぎながら泣く権利があるのは青春期の若者だけと分かっていても、
涙を流す中年の自転車女はヤバいと分かっていても、泣けた。
あの大木を思うとずっとつらい。
でもしかたない。
こんなに悲しいのは、私がこの1年頑張って生きてきた証。
伐採されたあの木の分も、しぶとく枝を張ってがんばろう。
他のたくさんの金木犀が、もうすぐ香りを届けてくれるはずだし。

通勤の道で金木犀ほどじゃないけど、なんだか植物の良い香りがすると思ったら、古いフェンスにセンニンソウが満開になっていた。
ずっと通っている道なのにこれまでまったく気づかなかった。
センニンソウは秋が深まると、まったく別の可愛い表情になっていく。
楽しみもまたひとつ。