離婚原因あれやこれや
「こういう理由で離婚が認められるのか?」と言うのは、飲み会の席での定番の話題なのだけれど、最近は飲み会そのものが開催できないので、文章にでも書いておくか。なんて思いつつ。
まず、大学時代に民法の教科書でびっくりしたのは、性行為(という遠回しな言い方も裁判だよな)の際に、靴を履くことを強要されたという妻からの離婚請求が認められたという裁判例。いわゆる「性の不一致」に当たるのだろうけれど、こういう特殊な性癖を裁判官がまじめな顔で判断していると考えたら、ちょっとおかしい。あ、でも結構変態の多い職種だったりしてね。どこかの所長あたりが通勤中の電車で痴漢だったか盗撮だったかで捕まったこともあったかと。裸に靴って、ハイヒールだったらまだ想像できるんだけど、そっち系の趣味だったのを、思い切り柔らかく遠回しに表現してるのだろうか。しかし、こういう濃厚な世界が法廷にあると思うと、大学生の僕にはびっくりなのでした。これは確か昭和30年代の裁判例だったので、昔から変態はいたのですねえ。
最近、ダウンタウンのまっちゃんの発言で注目されたのが「セックスレスは離婚原因となるか」と言う論点かと思います。裁判例の原文に当たっていないので、何と表現するのか、よく分からない。僕が当事者の代理人として書くとしたら、いわゆる「セックスレス状態」(以下「本件不接触状態」と言う。)とか言って1回だけ、自分の言葉ではないけれどわかりやすいから使うけれど、と言う体で書いて、後は言葉を替えるかな。裁判所だと、「性行為不履行状態」とか言うのかな。
とりあえず、下級審レベルではあるけれど、一方が求めているのに、他方が正当な理由なくこれを拒むのは、離婚原因になると判断されている傾向があるように思われる。ネット見てると、いわゆるツイフェミ系の人達がその手の裁判例を引いて「セックスは義務なのか」と批判してるのを見かけたりもするけれど、婚姻当事者の一方に性欲があって、他方が応じないとなると、強要するか、外で解消するかの二択になってしまうわけで。特に外で解消となると、これを民法では「不貞行為」と呼ぶわけである。これ自体が拒んだ側からの離婚請求の原因になるわけだし、不法行為にもなるというのが、いまの裁判所の立場だし、拒否された婚姻の当事者は進退両難の地位に追い込まれてしまう。順を追って、婚姻を解消したうえで、第三者との間で解消する手順を踏む離婚くらいは認められてもいいというのが、裁判所の傾向だと思うけれど、まっちゃんの発言とは対立するのかな。まっちゃんの発言を引いているネットの記事に引用されている裁判例なんかは本当にすごくて、妻の求めに応じない夫がAVで自慰行為にふけるなんて。平成5年の福岡高裁らしいから、そんなに最近の裁判でもない、と言うのも意外。結局、妻からの離婚請求を認めているけれど、さすがにこれは、ツイフェミあたりのひとも是認する結論だろう。
もしこれが、離婚原因にならないと判断するのであれば、拒否された側が婚姻外の性行為に及んだとしても、不貞行為に当たると判断しにくくなるわけで、裁判所という立場上は、そういうバランスも考えておかないといけないのかもしれない。
ただ、もうそうなると、そういうことは外で済ませて来て、「セックスと仕事は家庭に持ち込まない」というまっちゃんのような立場の方には、都合の良い解釈と言うことになるのだろうけれど、もはや婚姻って何なんだろうという気がするのである。
個人的には、DNA鑑定なんて到底考えられなかった時代に血縁関係を明確にするために、仕方がないので1対1の男女関係を基本とか倫理的と考え出した方策の遺物なのではないかと思っている。DNA鑑定で整理できるわけだから、新世紀の家族関係って、婚姻に縛られないものを考えてみた方がいいのではないか。
と、あれこれ考察している限り、婚姻制度そのものが諸悪の根源なのではないかと言う極論を言ってみる。ふと考えてみると、セックスレスとそれによる不貞との両方ともが離婚原因になり得るとしたら、有責配偶者からの離婚請求は認めないという最高裁の立場を前提とする限り、どちらからも離婚請求が認められないということになりかねない。もう、形式的に、3年くらい別居したら、離婚可能で、後は金銭的解決というのが妥当なのではないかと思う