養生訓 巻第七 用薬 鳳凰堂流解釈㉘
原文を現代文に改変
今世醫家に泡藥(ひたし)の法あり。
藥劑を煎ぜずして沸湯(ほうとう)にひたすなり。世俗に用ゆる振藥にはあらず。此の法振藥にまされり。
その法藥劑を細かにきざみ、細なる竹篩にてふるい、もれざるをば、又細かに刻み粗末とすべし。布の藥袋をひろくして藥を入れ、まず碗を熱湯にてあたため、その湯はすて、やがて藥袋を碗に入れ、その上より沸湯を少しそそぎ、藥袋を打ち返して又その上より沸湯を少しそそぐ。
兩度に合わせて半盞ほど熱湯をそそぐべし。藥液(のしる)の自然に出るに任せて振り出すべからず。早く蓋をしてしばし置くべし。久しくふたをしおけば、藥汁出過ぎてちからなし。
藥汁出て熱湯の少しさめて、温になりたるよきかんの時飲むべし。
かくの如くして二度泡(ひた)し、二度のみて後そのかすはすつべし。袋のかすをしぼるべからず。藥汁濁りて悪しし。
この法藥力つよし。利薬にはこの煎じ法も宜し。外邪、食傷、腹痛、霍乱等の病には、煎湯よりもこの法の功するとなり。用ゆべし。振薬は用ゆべからず。
この法薬汁早く出て薬力つよし。たとえば茶を沸湯に浸して、その煮えばなをのめば、その氣強く味もよし。久しく煎じ過ごせば、茶の味も氣もあしくなるが如し。
鳳凰堂流意訳
今の医療には泡薬(ひたし)法というものがある。
薬剤を煎じず沸かした湯(ほうとう)にひたす。一般的に用いられている振薬ではない。
この方法は振薬よりも優秀である。
具体的な方法としては、薬剤を細かくきざみ、細かな竹の篩でふるいにかけ、落ちない物は、更に細かく刻み粗末にする。
布の薬袋の口をひろげて薬を入れ、まずお碗を熱湯であたため、そのお湯はすて、その後薬袋をお碗に入れ、その上から沸かしたお湯を少しそそぎ、薬袋を返して又その上から沸かしたお湯を少しそそぐ。
2回に合わせて半杯ほど熱湯をそそぐ。
薬液(のしる)が自然に出るのに任せて振り出してはいけない。早めに蓋をしてしばし置く。
ある程度の時間ふたをしておけば、薬汁が出きって袋がしぼむ。
薬汁が出て熱湯が少しさめ、温かい状態になった良い感じの時に飲む。
このようにして二回泡(ひた)し、二回飲んだ後そのかすは捨てる。
袋のかすをしぼってはいけない。薬汁が濁るので良くない。
この方法は薬力が強い。利薬であればこの煎じ方を使うのも良い。
外邪、食傷、腹痛、霍乱等の病では、煎じ湯よりもこの方法が効果があるので用いた方が良い。振薬は用いるべきではない。
この方法は薬汁が早く出て薬力つよい。たとえば茶を沸かした湯に浸して、その煮えばなをのめば、その氣強く味もよい。
長く煎じ過ぎれば、茶の味も氣も悪くなるのと同じである。
鳳凰堂流解釈
軽く浸して薬とするか、振り出して煮だすか、茶の作法と薬の作法も道理は同じだと言っています。
但し、薬はどのような作用を期待するかで煮出し方を変えた方が効果は更に上がります。
生薬を煮出して使う人で、速効性を期待する場合はこの方法は良さそうです。
鳳凰堂は試した事がないので、機会があれば試してみます(養生で賄えている為、機会は少ないと思いますが、、、)