養生訓 巻第七 用薬 鳳凰堂流解釈⑬
原文を現代文に改変
いかなる珍味も、これを煮る法ちがいてあしければ味あしし、良藥も煎法ちがえば験(しるし)なし。
此故藥を煎ずる法によく心を用ゆべし。
文火(ふみひ)とはやわらかなる火なり。
武火(たけひ)とはつよき火なり。
文武火とはつよからずやわらかならざるよきかげんの火なり。風寒を發散し、食滞を消導する類の剛剤を利藥と云う。
利藥は武火にて、煎じてはやくにあげ、いまだ熟せざる時、生氣のつよきを服すべし。この如くすれば藥力つよくして邪氣にかちやすし。久しく煎じて熟すれば、藥に生氣の力なくしてよわし。邪氣にかちがたし。
補湯はやわらかなる文火にて、ゆるやかに久しく煎じつめてよく熟すべし。この如くならざれば純補しがたし。
ここを以て利藥は生に宜しく熟に宜しからず。補藥は熟に宜しくして、生に宜しからず。知るべし。藥を煎ずるにこの二法あり。
鳳凰堂流意訳
どんな珍味も、これを煮る方法を間違えてしまえば味が悪くなる。
良薬も煎法をまちがえれば効果はない。
この為、薬を煎じる方法によく心を用いるべきである。
文火(ふみひ、ぶんか)とはやわらかなる火である。武火(たけひ、ぶか)とはつよい火である。
文武火とはつよからずやわらかならざる良い加減の火である。
風寒を発散し、食滞を消導する類の剛剤を利薬と言う。
利薬は武火で煎じてはやくあげ、まだ熟していない時で、生氣が強いものを服用するのが良い。
このようにすれば薬力がつよく邪氣にかちやすい。
長く煎じて熟せば、薬に生氣の力がなくよわい。邪氣にかちにくい。
補湯はやわらかな文火で、ゆるやかに長く煎じつめてよく熟す。
このように煎じなければ純粋に補うことは難しい。
ここから利薬は生が良く熟すのは良くない。
補薬は熟が良く、生は良くない。
このような事も知っておくべきであり、薬を煎じる場合はこの二法がある。
鳳凰堂流解釈
今の漢方は生薬を煮出す事が少ない為、鳳凰堂は自身で使う時には煮だしますが、このようなちょっとした事も効果に差が出たりします。
人は五感で感じる事で、変化しますので。
文火、武火は元来、周易参同契など、道教系の導引術から生まれた言葉。
呼吸の良し悪しによっても人は病んだり、健康を回復したりします。