養生訓巻第一 貝原篤信篇録 総論上 ⑱ 鳳凰堂流解釈
[原文を現代文に改変]
人の身体は弱く脆く、風前の灯火が消えやすいようなものである。
このような危うい存在だからこそ、常に慎んで身体を健康に保つべし。
内外から身を攻める敵は多いもの。
先ず飲食の欲、好色の欲、睡臥の欲、或いは怒、悲、憂等が身を責める。
これらは全て、自分の身の内側から起こり身を責める欲であるので内敵と言える。
中でも飲食、好色は、内欲から外敵を引き入れるもので、尤も恐るべきである。
風寒暑湿は、身体の外側から入り自身を攻めるものであるので外敵と言える。
人の身体は金属や石のようなものではなく、破れやすいものである。
その破れやすいものが内外から大敵を受けているかのように、内の慎みと外の防がなければ、多くの敵に勝つ事は難しい。
この為、人は長命を保ち難いのである。
厳しく用心して、常に内外の敵を防ぐ計策がなければならない。
敵に勝たなければ、必ず攻め亡ぼされて身を失う。
内外の敵に勝ち身を保もつのも、その術を知り良く防ぐからである。
生まれつき氣が強くても、術を知らなければ身は守り難い。
例えば武将の勇があっても、知なく、兵の道を知らなければ、敵に勝つ事は難しいのと同じである。
内敵に勝つには、心強くして忍の字を用いることが大切である。忍とは堪えることである。
飲食、好色などの欲は、心強く堪えて好き勝手にしないことである。
心弱くしては内欲に勝ち難い。
内欲に勝つ事は、猛将が敵を討ち取るように行うべきである。
これが内敵に勝つ兵法である。
外敵に勝つには、畏の字を用い早く防ぐべきである。
例えば城中に籠もり、四面に敵を受けて、油断なく敵を防ぎ、城を堅く保つようなものである。
風寒暑湿に会うなら、畏れて早く防ぎ退くべし。
この場合は、忍の字を禁じ、外邪に堪えて長く当たるような事はしないこと。
古語には、風寒を防ぐ事矢を防ぐが如くすと言う言葉がある。
四気の風寒が最も恐れるべきである。
長い時間、風寒に当たらないようにすべきである。
これが外敵を防ぐ兵法である。
内敵に勝つには、コツコツと行い強く勝つ事。外敵を防ぐには、畏れて早く退く事。外敵に対してゆっくりと対処するのはよくない。
鳳凰堂流解釈
ここに関しては全く同意する部分です。
欲はゆっくりと向き合って少しずつ対処していき、気候の変化、寒暖差には迅速に対処すべき。
この二つが養生の最も大切な基本となります。