養生訓 巻第四 慎色慾 鳳凰堂流解釈⑤
原文を現代文に改変
孫真人が千金方に、房中補益説あり。
年四十に至らば房中の術を行うべしとて、その説頗る詳らかなり。
その大意は、お四十以後血氣ようやく衰うる故、精氣をば漏らさずして、只しばしば交接すべし。
この如くすれば、元氣減らず、血氣巡りて補藥となると言える意なり。
ひそかに孫思邈が言える意を思んみるに、四十以上の人、血氣いまだ大いに衰えずして、槁木死灰の如くならず、情慾忍びがたし。
然るに精氣をしばしば漏らせば、大いに元氣を費やす故、老年の人に宜しからず。
ここを以て四十以上の人は、交接のみしばしばにして精氣をば泄すべからず。
四十以後は腎氣のようやく衰る故、泄さざれども、壮年の如く、精氣動かずして滞らず。この法行いやすし。
この法を行えば、泄さずして情慾は遂げやすし。然れば、これ氣を巡らし、精氣を保つ良法なるべし。
四十以上猶血氣甚だ衰えざれば、慾情を絶つ事は忍びがたかるべし。
忍べば却って害あり。
もし年老いてしばしば漏らせば、大いに害有り。故に時にしたがってこの法を行いて、情慾をやめ、精氣を保つべしとなり。
これによって精気費やさずんば、しばしば交接すとも、精も氣も少しも漏れずして、當時の情欲は止みぬべし。
これ古人の教え、情欲の断ち難きを抑えずして、精気を保つ良法なるべし。
人身は脾胃の養いを本とすれども、腎氣堅固にして盛んなれば、丹田の火蒸し上げて脾上の氣も亦た温和にして盛んになる故、
古人の曰く、脾を補うは腎を補うに如かず。もし年より精気を惜しみ、四十以後彌精気を保ちて漏らさず。
これ命の根源を養う道なり。
この法、孫思邈後世に教えし秘訣にして、明らかに千金方にあらわせ共、後人その術の保養に益ありて害無き事をしらず。丹渓が如き大醫すら偏見にして、孫真人が教えを立し本意を失いて信ぜず。
この良術を謗りて曰く、聖賢の心、神仙の骨なくんば、未だ為しやすからず。もし房中を以て補とせば、人を殺す事多からんと、格致餘論に言えり。
聖賢神仙は世に難ありければ、丹渓が説の如くは、この法は行い難し。
丹渓が説疑うべき事猶多し。才学高博にして識見偏僻なりと云うべし。
鳳凰堂流意訳
孫真人が著した千金方に、房中補益説と言うものがある。
四十になれば房中の術を行うべきと説き、非常に詳細に説明している。その大意としては、四十以後に血氣が徐々に衰える為、精氣を漏らさないようにしながら、只しばしば交接すべきである。このようにすれば、元氣は減らず、血氣が巡り補藥となると言う意味となっている。
ひそかに孫思邈が言っている意図を考えると、四十以上の人は血氣いまだ大きくは衰えず、枯れ木や灰のようにはなっていない為、情慾が忍びがたいものである。
その為、精氣をしばしば漏らせば、大いに元氣を消費し、高齢の人にとっては良くない。ここから四十以上の人は、交接だけ時折行い精氣を泄してはいけない。
四十以後は腎氣が徐々に衰える為、泄さなくとも、壮年のように、精氣が動かずして滞らることはない。この法は行いやすい。この法を行えば、泄さずに情慾は遂げやすい。
従ってこれが氣を巡らし、精氣を保つ良法であると言える。
四十以上になっても血氣がまだ衰えざなければ、慾情を絶つ事は忍びがたい。
忍べば却って害がある。
もし年老いてしばしば漏らせば、大いに害がある。その為、時に従ってこの法を行い、情慾を止め、精氣を保つべきである。
このようにして精気を消耗しなければ、しばしば交接したとしても、精も氣も少しも漏れず、その時の情欲は止まる。
これは古人の教えであり、断ち難い情欲を抑えずに、精気を保つ良法である。
人身は脾胃の養いを本としているが、腎氣が堅固で盛んであれば、丹田の火が蒸し上げて脾上の氣も亦た温和で盛んになる為、
古人は次のように言っている。脾を補う事は腎を補うほどではない。年によって精気を惜しみ、四十以後は精気を保って漏らさないようにする。
これは命の根源を養う道である。
この法は孫思邈が後世に教えた秘訣であり、明らかに千金方に書かれているが、後人はその術が保養に益があり、害が無い事をしらない。
丹渓がのような大医すら偏見を持ち、孫真人の教えを立てても本意を失って信じていない。
そして、この良術を謗り、聖賢の心も神仙の骨がなければできない。もし房中を補すれば、人を殺す事が多いと、格致餘論に書いている。
聖賢神仙は世に存在に難いもので、丹渓の説のようなものには、この法は行い難い。
丹渓の説は疑うべき事が更に多い。才能、学識が高く博ければ見識が偏っているという例である。
鳳凰堂流解釈
東洋医学が失った、生命の大源に対する養生法。
人の社会は発展、文化、文明と呼んで誰かを縛り続けながら、限界に来たらリセットする事を繰り返しています。
東洋思想はそれをも暗示していますが、認識できうる人は少なく、小さな輪の中で回る事で、安定を選ぶ人がほとんど。
今では非常識となった情欲の養生法。
鳳凰堂は実践し、体感から納得しています。
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