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(1)医心方 巻二十七 養生篇 谷神第二 鳳凰堂流解釈
ここから養生篇の各論に入ります。
先ずは老子道徳経の成象第六を挙げています。
難しいと思われる方に、誤解を恐れず端的に書くと、
「気を用いるのはゆっくりのびやかにすべきで、急に早くすべきではない。」と言う言葉に要約されます。
呼吸をゆっくりと腹式呼吸で伸びやかにすると解釈しても良いですし、
行動や活動に使う時間に余裕を持たせ、いつもスケジュールを詰めて時間に追われる ような事はしないと解釈しても良いと思います。
呼吸は無意識にしている場合がありますが、意識して行う事もできます。
意識と無意識、玄牝、混沌を呼吸でコントロールしています。
人の外側と内側の境界でもあります。
老子道徳経から直接解釈すると、専門用語が多くまだ具体性が少ない為、
具体的に養生として考えると、
神と谷を養う事の重要性を説いています。
谷とは、ここでは母である地面に存在し、人のエネルギーとして摂取できる飲食物や飲食物を吸収して自身の気にする五臓六腑。
神とは、人それぞれに宿っている本性(本来の性質)とそこから派生する感情や意志など。
東洋医学では、神を五種類に分け、心神、肝魂、脾意、肺魄、腎志としています。
全てをうまく循環させると、養っている事になります。
つまり、ここから派生する怒喜思憂驚恐という七種の感情(東洋医学では七情と呼びます)をどのように発揮し、どのように治めるかが大切。
我慢しすぎると自分を傷つけ、発散しすぎると誰かを傷つけます。
どちらにしても自分の五神(魂・神・意・魄・志)を傷つけてしまいます
この、難しいけれど絶えず生まれては消えていく、浮かんでは沈んでいく感情とその奥にある本性をコントロールすることで、自身の軸、その根がしっかりと性命を育みいつまでも成長できる魂が醸成されるのだと考えています。
天(五気=風・熱・温・寒・燥)が地に降り、地から発生する気を鼻から五藏に入れる事で心にしまう。
五気が細かく作用していれば精神はハッキリと健やかであり、声や言葉として五性(静・躁・力・堅・智)を表現する。
魂は勇ましく雄として、鼻(魄・肺)で出入をコントロールしながら天と気を通じている。
つまり鼻が玄であり、渾沌としたものをコントロールする端緒となる。
地が人を養う際には、五味(酸・苦・甘・辛・咸)を使って口から気を入れて胃に収める、
五味は濁り固まって精気となり、形をつくって骨肉、血脈となり、それが感情になる。
この本性を魄と呼び、魄は雌である。
口から出入りして、地と気を通じるので口は牝としている。
このような理由から、玄牝の門とは天地の根と同じ意味であると言っている。
こうして綿々と呼吸は存在し続けている。呼吸は無意識に行っており、疲れることはない。