(1)医心方 養生篇 養形第三 鳳凰堂流解釈
形を養うという題名がついた養形第三章
一般的にセルフケアと呼ばれる事が多い分野です。
ここから養生要集の部分までが、養形篇のダイジェスト的な役割を担っています。
即ち、形を養う事の大まかな指標について、
内経では四時(四季)に合わせた生活の話を出し、
聖記経では、1日、1ヶ月、1年、100年、1000年の道について触れ、
養生要集では、楽と苦についての分別を自分で意識的にバランスを取る事の重要性について、
最後は見た目として現れた姿、形は見えない内の部分の反映であって、形が精華であるので、どちらも大切だと言いながら、一般的には容姿、形ばかりを気にするので注意してくださいと言ってくれています。
始めは東洋医学最古の古典典籍と言われる、「黃帝内経素問」の「四気調神論篇第二」から引用しています。
簡単に言うと、1年の四季の中で起こる寒暑による陽気の浮き沈みの変化が形をつくるあらゆるものの根本の気であり、熟慮できる人は春夏は陽気を養い秋冬は陰気を養い、根本を順序立てて養っていく事で、成長、発達の養生に対する門に入ると言われています。
つまり、鳳凰堂流として四季、二十四節気、七十二候を書いているのは、人と外的環境(空間)、四季等の寒暑の変化との対応関係を自分の身体で感じて貰う為のものです。
そして、それを少し詳細に観てみると、
春の3ヶ月は発陳と呼ばれ、天地が共に生まれ、万物が栄え始める事を表している季節です。
発陳とは古いものを出すという意味で捉えています。代謝したものがしっかりと取れていなければ、洗い流す、清めるような意味を持っています。
この季節には夜はゆっくり就寝し、朝起きてしばらく景色を観ながら散歩する。髪を縛っている人は、緩め、服装も緩やかにして気持ちを緩める為の端緒とすると志(何か目的を行う為の根本の気)を生むことになります。
1年の中では、物事、命が生まれる時期なので生む事はあっても殺す事のないように、
物事であれば与えることはあっても奪う事が無いように、褒める事はあっても貶める事のないようにするのが春の気に応じたい生き方で春の養生の道となります。
夏の3ヶ月は蕃秀と呼ばれ、あらゆるものが大いに繁り、繁栄している事を表す季節です。
天地の気が交わって、あらゆるものが花を咲かせ、実を実らせます。この季節は日が暮れるのも遅い為、夜が更けたら就寝し、朝は早く起き、太陽の日差しを嫌がらずに、怒りを慎み、咲いた華や実りのように自分の心にも志(目標)をしっかりと実現させる為、活動するのに適しています。気を体外へ出し、自分の外にも愛情をもって行動しましょう。これが夏の気に応じた養性の道となります。
秋の3ヶ月は容平と呼ばれ、あらゆるものを包みながら平均的にする事を表す季節です。天の気は急変することが多く、地の気は明るくなります。早めに就寝し、早めに起き、鶏と倶に起きるくらいが良いのです。心を落ち着かせて平穏にし、秋の気の流れをゆっくりと受け入れ、秋の収斂の気を利用して心も引き締める。志は外に出しすぎないようにし、その分体内、心の内で肺の気を使って練り込んでいく。これが秋の気に応じた養生の道となります。
冬の3ヶ月は閉藏と呼ばれ、自分の持っている気をできるだけ外に出さずに門を閉じ、温めて貯える季節です。水が凍り、地面が乾いて裂けるような季節です。熱を持った自分の気、心を余り外に出して乱すような事は避けます。夜は早く寝て、朝は遅めに起き、必ず日の光を浴びます。コタツで丸まっているかのように重々しく、ゆっくりと動きましょう。寒さを避け、温かくし、皮膚を外に晒さないようにして、気をしまい込む。これが冬の気に応じた養性の道となります。
この四種に分けた、四季の陰陽の気、寒暑による温度の浮き沈みの調整が萬物の根本的な気のリズムであり、バランスとなります。