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物語の原体験——駅前書店と恩田陸

文章を書いてからかなり経ったので、雑誌に寄稿したコラムを公開したいと思います。

元々は、ミネルヴァ書房という出版社からの依頼で、同社のPR誌に寄稿しました。PRの表紙を開いたすぐ右手に、研究者や文筆家が本にまつわるエピソードを書く「書物渉猟」というコラムでした。

コラムにまつわる話や振り返りは、本文の後に記すことにして、ひとまず書いたコラムをば。



物語の原体験——駅前書店と恩田陸

 2006年のことだと思う。高校に上がって隣の市に通うようになり、詳文館という書店に出入りするようになった。地元にしか展開していない老舗の書店で、駅前にある百貨店の一階に位置していた(近くに大型書店があるためか、2014年頃に閉店したらしい)。学校や部活のない日も、商店街にある予備校に行ってちまちま勉強していたので、ここには通いやすかった。

 私の記憶する限り、詳文館は特定の作家の小説をやたら潤沢に並べていて、まんべんなく取り揃えるような感じではなかった。小説自体は好きで、よく学校図書館のファンタジー小説やミステリを読んでいたものの、あまり作家を気にせずに適当に読んでいた私は、そこで「恩田陸」と出会うことになった。

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