【舞台脚本小説】 Draw The Curtain (5)
この作品は2010年に公演した舞台脚本を小説にしたものです。
この【Draw The Curtain】は1時間45分の会話劇でした。
その為、膨大なセリフ量を小説にしているせいか、とても長い作品になる予定です。
ゆっくりではありますが、小説へと変換させていきますので
気長に読んでいただけると嬉しいです。
もし舞台関係者様がこの作品を読まれて、
気に入った!そして舞台で公演したい!と思った方は是非、お気軽にお問い合わせください。
※この小説にした【Draw The Curtain】は多くの方に見てもらいたいので無料で公開しますが、
舞台で公演する場合は営利目的になりますので、有料でのお貸し出しになります。
予めご了承の上、お問い合わせください。
それでは【Draw The Curtain】とはどう言う話なのか
本編をお楽しみください。
※掲載させていただいている写真はイメージです
※このお話は続きものです。
これ以前の話や続きはマガジンにまとめております。
是非ご覧ください。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
杭瀬が集めた、そして桐生が部屋へ案内した客は、3組だったいた。
1組目の客は、木島という男。
木島は身長が高く、やや痩せ型だが、目元に鋭さを感じさせる男だった。黒いジャケットに、少し無造作な髪が特徴的だ。彼の目は、桐生の案内する言葉に対してあまり興味を示していないように見えた。
桐生は、そんな彼の冷徹な雰囲気に少し圧倒されつつ
「こちらの春の部屋をお使いください。」と、案内した。
すると木島は部屋に入るなり少し不満そうに眉をひそめ、
そして、部屋に飾られている絵の前に立ち止まった。
「春の部屋…春っぽくないですね。」
木島は、独り言のように、桐生に話しかけた。
桐生は穏やかに微笑み「名前だけなので。」と、言い訳をした後
トイレとシャワーの場所を木島に教えた。
木島は相変わらず桐生の言葉に反応せず、鞄を椅子に置き
「連れは後で来るので、もしきたらここへ案内して下さい。」と素気なくいい、改めて部屋を隅々を確認し出した。
桐生は木島の言葉を受け、お辞儀をし部屋を出て行こうとした時、
「あと…本当にいいんですよね、ここの料金は、あれで?」
と、木島に問いかけられた。
桐生は一瞬、戸惑いの表情を浮かべ
「えっと…すいません、管理しているのは私ではないもので。」
と、杭瀬から詳細を聞いていなかったことを悔いた。
木島は軽く息をつき「あの、他の部屋って空いています?」と、尋ねると
「確か2部屋、開く予定ですけど。」と、桐生は、少し考えてから答えた。
木島は納得したように頷き
「そうですか…もう大丈夫ですよ。」と、桐生の退室を促した。
では、ごゆっくりと声をかけて、桐生は微笑みながら扉を静かに閉めた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
2組目の客は、火野と名取と名乗る、2人組の男だった。
火野は背が低く、しっかりとした体格をしているが、その表情にはどこか不安げな陰が見え隠れしている。
一方、名取は高身長でスタイルも良く、どこか冷静で落ち着いた印象を与える男だった。
この二人は会社の先輩後輩だという。
桐生は部屋の中央に立ち、静かに口を開いた。
「こちらの夏の部屋をお使いください。」と、二人に告げた。
火野は無言で鞄を開け、何かの準備を始めた。
名取は、周囲を見回してから、疑問を口にした。
「ここは旅館ですか?それとも民宿?」
桐生は軽く微笑みながら
「そう言った呼び名は…ただの山の中にひっそり佇む宿泊施設です。」と答えると
名取はそれを聞いて、静かに頷いき
「そうですか。どうもありがとうございます。」
と、桐生に笑顔を向けた。
桐生が礼儀正しく頭を下げ、そして部屋を出る準備を始めた。
名取が火野に声をかけた。
「火野さん、これからどうします?」
火野は鞄を閉じながら、「は?そんなの決まっているだろ…復讐だよ。」
と、低い声でか細くつぶやいた。
「…はい?」
火野の発言に戸惑う名取の声とともに、桐生は扉を閉めた。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
3組目の客は、金村と水城という、こちらも2組の男だった。
金村は、まるで荒々しい風のように部屋に入ってきた。身長はさほど高くないが、筋肉質な体つきの強面で、常に眉間に皺が入っていた。
金村は短く指示を出す。「早く入れよ。」
すると、水城の背を押し、部屋の奥へと押し込んだ。
水城はどこにでもいそうな優しさと穏やかさが漂う、気弱そうな男だった。水城は、金村に押し込まれるようにして部屋に入るや否や、体が硬直したように動きを止めた。水城はどうやら、金村に無理やり連れてこられたみたいだ。
水城は、何も言わずただただ部屋の真ん中で、息を殺すように立ち尽くしていた。
桐生は部屋に案内しながら言った。
「…こちらが、秋の部屋…。」
「すいませんね。もう、大丈夫です。」
と、金村は桐生の案内を打ち切った。
桐生は何かを察し、そのまま静か部屋を出ようとした瞬間、
「女将さん!」と、水城は逼迫した声で女将を呼び止めた。
桐生は驚いて振り向いたと同時に、金村が険しい顔で声を荒げた。
「女将さんに何か用か?」
水城は戸惑いながら黙っていると
「女将さんに、何か用かって聞いてんだよ!」と
金村は水城に圧をかけるように同じ問いをかけた。
水城は金村の圧に押され「…いえ、何もないです。」と言い、俯いた。
金村は水城に目を向けながら、少し冷ややかな口調で
「ですって。すいません、呼びとめちゃって。」
と、再び桐生に部屋を出るような雰囲気を向けた。
「はい。では、ごゆっくり。」
と言っていいのかわからなかったが、桐生は金村の雰囲気を読んで、
静かに扉を閉め出ていった。
【巡り合わされた客】終了 【春の部屋】へとつづく