【ホツマ辞解】~大和言葉の源流をさぐる~ その②「ひな」と「やつこ」 <90号 平成29年4月>
ヲシテ文献で使用される大和言葉を取り上げ、今に伝わる言葉との差異や、その言葉が生まれる成り立ち、深い意味、関連する言葉との比較などを探ります。
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三月三日のひな祭りが、ホツマの縄文時代にすでに年中行事(なめこと)のひとつとして定着していたことがホツマ伝承を読むとわかります。その主人公は、「モモヒナキ」と「モモヒナミ」の夫婦神であったわけですが、その「ひな」は、「未だ成熟し切っていないこと」を意味していました。
これは、「ひと」が「一(から)十」で完全、成熟を表しているのに対して、「ひな」が「一(から)七」で、まだ不完全、未熟を表すように対応しています。
ちなみに、皇位継承皇子に「ひと(現在では「仁」)」のイミナが授けられ、臣の身分には「ひこ(彦)」のイミナが授けられるのは、「ひこ」が、「一(から)九」を意味して、謙譲表現であることを示します。
さて、それでは、「やつこ」は、どうでしょうか。
ヲシテ文献では「やつこ」と「やこ」の表記があります。天朝に背く「ハタレ(悪党)」どもを征伐する際のやり取りに頻出する言葉ですが、「捕虜」「侍者」「従者」などの意味を表します。漢字表現では「奴」が当てられ、江戸時代の「中間(ちゅうげん)身分」や、現在の「ヤーコー(不良)」にもつながる言葉なのでしょう。
これが「八九」から出て来た表現であり、やはり「十」に至らない「欠けのある者」「足りないところのある者」なのか、「和(やわ)す(された)者」と見るのか、意見の分かれるところです。
実は、「つこ」という言葉も結構使用されます。
「まもるみやつこ」ホツマ20
「このくにつこに」ホツマ23
「かかみつこのこ」ホツマ20
「たまつこのこそ」ホツマ20
などで、「仕える者」「司」あるいは「(何かを)製造する部民」などの意味をもつようです。ここから考えると「やこ」は「やつこ」の短縮表現で、「やつこ」は「家(や)に仕える者」からきていると考えることも出来るかも知れません。「やつこ」の使用例からは、いわゆる「上から目線」(あるいは敢えてする謙譲表現)を感じます。
(駒形「ほつまつたゑ解読ガイド」参照)
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大和言葉の源をさぐるコラム「ホツマ辞解」の第二回は、「雛ひな」と「奴やつこ」を取り上げました。ホツマツタヱの第二章(2アヤ)では、ひな祭りの起源を実に詳しく語ってくれています。日本古来の美しい習俗である「ひな祭り」ですが、「ひな」には、「ひと」と関係する「成熟度」の意味合いがありました。
雅な年中行事と、その根底にある大和言葉の奥ゆかしさを大切に守り、伝えていきたいですね。