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大学案内は誰のためにつくられる?関西福祉大学の振り切った企画が問いかける大学案内の意義と役割。

そろそろ各大学の今年度大学案内が出そろってきたので、資料請求をしておかないといけないなぁと思いつつ、なかなかその時間がとれず日々が過ぎています。今回はそんな今年度大学案内でステキなものを見つけたので、それについて取り上げます。取り上げるのは、関西福祉大学の『未来発見ガイドブック/大学案内2022』です。

実は関西福祉大学の大学案内、7年間も同じ企画で発刊を続けており、以前から面白い企画だと思っていたんですね。何が面白いのかというと、半分が大学案内じゃないんです。右開きで読み進めると『未来発見ガイドブック』、左開きで読み進めると『大学案内2022』という両A面の冊子になっています。

注目したいのは『未来発見ガイドブック』で、この冊子は関西福祉大学に進学した先に広がるさまざまな未来に関わる情報、つまりどんな大学生活を過ごすべきかとか、どんな仕事に就けるのかとか、そういった情報をまとめています。とくに仕事紹介が丁寧で、「教育/保育」「健康/スポーツ」「看護/医療」「福祉」「公務員/企業」という5つのカテゴリに分かれて、かなり詳しく説明がされています。

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『未来発見ガイドブック』の仕事紹介ページ

この『未来発見ガイドブック』の何がいいのかというと、ほとんど関西福祉大学のアピールをしていないんです。大学進学をめざす高校生(とくに社会福祉系や教育系に興味がある人)にとって必要な情報をしっかり編集して届けています。しかもサイズこそA5版と小さめですが、10ページ前後の企画ではなく、166ページもある、ある種“本”ともいえる情報量なのです。

広く高校生に役立つ情報なので、リ●ルートとか、進●アドとか、どこか進学情報を扱う企業がつくったらいいのにと思うし、すでにありそうな気もします。少なくとも、いち大学がわざわざつくる必要はないのでは?と思ってしまいます。関西福祉大学と縁もゆかりもない、私ですらそう思うわけですから、この企画を実現しようとしたとき、学内からはいろんな意見が出たのではないでしょうか。そうであっても関西福祉大学はこの企画を通し、しかも7年も続けています。それはなぜなのか?……取材をしているわけではないので推測でしかないのですが、おそらく、いや間違いなく、その理由は、この情報が大切だと思ったから、なのだと思います。

文字にしてしまうと、そりゃそうでしょうよ、といった感じです。だけど大学案内という自校をアピールできる絶好のツールのおよそ半分を割いて、自校のアピールではなく、資料請求した高校生にとって必要だと思える情報を提供するって、なかなかできることじゃないです。進学後であれば、ある意味“身内”なので手取り足取りというのもわかります。

また、急がば回れというか、こういった情報提供をすることで、高校生の好感度が上がるだろうという期待や予測もあったとは思います。でも、そこらへんの打算を差し引いても、これだけのボリュームを割いて、つまりはコストと時間をかけて、さらには情報提供のチャンスを減らしてまでして伝えようとしたのには、かなり強い想いがあってのことだと思います。

なんというか、この取り組みを突き詰めていくと、結局、大学案内の役割は何なのか、みたいなテーマに突き当たるような気がします。大学案内は、自校をアピールする広告宣伝ツールなのか、それとも受験生に自校のことを伝え、ミスマッチを防ぎ、納得いく大学選びをしてもらうためのツールなのか。後者であるとしたら、その大学について知るだけでは、実際のところ情報としては不十分です。関西福祉大学の大学案内は、後者の考えをとことん突き詰めた結果のようにも思えます。

関西福祉大学のアプローチが正解かどうかはわかりません。でも、7年間も続けているということは、それなりの手応えがあるからなのでしょう。今は情報発信ツールが多様化しており、大学案内がなくても十分な情報提供が可能です。それにコロナ禍となり、以前と同じように取材・撮影するのは、なかなか難しい状況になっています。大学案内の役割を再考するには、とてもいいタイミングなんのではないでしょうか。関西福祉大学は、そのための参考事例になるように感じました。

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