社会人教育に今日的な軽さを。
近年、映画や雑誌、音楽、はては食物やファッションまで、ありとあらゆるものがサブスクリプションで利用できるようになりました。この流れは、どうも大学にも及びつつあるようで、なんとサブスク的に利用できる社会人向け講座なんていうものもあるようです。
取り上げたのは、湘南工科大学の「アカデミックパス」という制度。これは定額で、同大学が開講する科目のうち、年間およそ300科目を自由に受講できるというものです。
比べるものとして適切かどうかはわからないのですが、全国でトップレベルの講座数を誇る有料公開講座に、龍谷大学の「RECコミュニティカレッジ」があります。こちらの開講数がおよそ400講座になるので、湘南工科大の300科目というのは、けっこうこれに近い充実ぶりです。しかも龍谷大だと、受講料が1講座あたり5000~1万円程度かかりますが、湘南工科大は半期5万円で受け放題です。
ちなみに、「アカデミックパス」はとても今日的な取り組みだと思ったのですが、リリースをよく読んでみると、実ははじまったのは2004年とのこと。かなり時代の先ゆく取り組みだったようです。
社会人教育のボトルネックの一つは、講座紹介等のわずかの情報をもとに、自分の興味にマッチした講座を見つけないといけないことです。学生であれば、友達や先輩から生きたアドバイスをもらえるし、教員の人となりもある程度わかったうえで、科目選びができます。しかし、社会人には、ほぼこういった情報がありません。この状況のなかで、たくさんある講座ないし科目のなかから、自分にあったものをピンポイントで見つけ出さなくてはいけません。「アカデミックパス」は、お試しでいろいろな科目を受講し、そこから面白かったもののみ、続けて受けるという使い方ができるので、これって社会人にとってかなり心強いように思います。
ただ、社会人視点というか、自分が受けるならと考えたとき、「アカデミックパス」で気になる点があります。それは一度見逃す(受講し損ねる)と、その回の授業をもう受けられないことです。サブスクでよく利用できるコンテンツ(映画、ドラマ、音楽 etc)は、好きなときに好きなところから、好きなだけ利用ができます。でも、大学の開講科目はそれができません。過去の授業を動画等で見ることができるようになれば、この社会人向けの取り組みは、とても今の人たちの感性にあった取り組みになるんじゃないかなぁという気がします。さらに図々しく要求するなら、一つの大学だけでなく、同じエリアにある複数大学でやってもらえると、もう、これ、最高です。
大学の学びは深さ、濃さ、という意味では、非常に説得力があるのですが、良くも悪くも軽さはあまり感じさせません。「アカデミックパス」には、今日的な軽さを、大学の社会人教育に持ってくるヒントがあるように思いました。