大学はこうあるべき、にひるまない。学生発、大学Vチューバーの頼もしさが、大学広報のこれからを開拓する!?
以前、吉備国際大学のVチューバー専任講師「朝霧けい」を取り上げたことがあるのですが、Vチューバーを大学PRに活用しようという動きは、じわじわと盛り上がりつつあるのかもしれません。12月になって、立て続けに大学発Vチューバーが誕生したので、今回は彼女らについて取り上げていきます。
完成度の高さに驚く、工業大学発のVチューバー
まず一人目は、こちら。芝浦工業大学デザイン工学部PR Vチューバー「芝浦ミドリ」です。広報課バックアップのもと、企画やデザイン、運営など、すべてを学生が担当しているとのこと。個人的に興味深かったのは、自己紹介動画でプロフィールを説明しているんですが、16歳なんですね。大学を紹介するから大学生設定かと思ったら、そうでもないようです。
大学生設定であれば、自分が通う大学を紹介するというシチュエーションをつくれますが、16歳なので、これから視聴者とともに大学を知っていくというストーリーになるのでしょうか。それとも、リアルじゃないんだから、そういう細けぇことはいいんだよ!となるのか。今後の展開が気になるところです。
大学の魅力を教える、教授Vチューバー(19歳)
もう一人は、こちら!近畿大学のVチューバー「ニア教授」。近畿大学の「VRスクール」という、現在30人の学生が参加しているプロジェクトから生まれたキャラクターで、動画配信や運営等も学生たちが行うようです。リリースによると、「ニア教授は19歳の女の子で、学問を追求し、学生たちに教えを紐解く存在」とのこと。年齢的には大学生ですが、立場的には先生に近い存在のようです。伝える(=教える)立場として、教授という役職はしっくりくるものの、リアリティを求めて「ニア教授(56歳)」、みたいなことをすると、キャッチーな感じが減るどころかマイナス側にめり込んでしまうで、こういう設定がいいのかなと感じました。
ニア教授の自己紹介動画は12/24に初お目見えとのこと
学生主体だからこそできる挑戦的な大学広報
芝浦ミドリも、ニア教授も、学生たちが主体となって企画・運営する取り組みです。こういう新しいもの、とくに学術的なイメージと距離があるものを大学広報に取り入れるうえで、学生発、というのはめちゃくちゃ強いなと感じました。おそらく、大学の広報課が主導してVチューバーを全学的に広報に取り入れると、これはこれで話題になるでしょう。でもそれは世間一般の大学のイメージとの落差というか、東大生がバカやっていて面白い、と同じ類いの注目のされかたです。学生が主体になることで、ブランドの切り売りを回避しながら、新たな表現手法にチャレンジができているように思います。
また、大学のような半公的な機関が、サブカル的(オタク的?)な表現で女性を取り上げることに対して、批判的なリアクションをとる人があらわれるリスクもあります。なぜ男性キャラクターではないのかとか、スカートの丈がどうだとか。今の世の中、この種の批判はいつどこで起こるかわからないし、100パーセント回避することは不可能です。とはいえ、炎上リスクが少しでも予想できてしまうチャレンジは、大学としては率先してやりにくい。企画が立ち上がっても、炎上したらどうするの?と聞かれたら、そこで話が止まってしまいます。でも、学生たちであれば、こういう見えない壁をたやすく飛び越えてくれるし、炎上リスクも大学主導で取り組むよりもおそらく格段に低くなります。
大学広報に大学生の視点や感性を取り入れるというのは、以前からずっとあるアプローチの一つです。とはいえこれまでは、一つの媒体のなかにある一つの企画で、という考えが強かったように思います。今後は5Gが普及していき、表現手法や媒体、サービスがますます多様化していくことが予想されます。そのなかには、大学にふさわしくないけど、若者に人気なものというのは間違いなく出てくるはずです(むしろ若者に人気で、大学にふさわしいものの方が少ないような……)。大学生の視点や感性、それにエネルギーは、既存媒体の企画のエッセンスとしてより、こういった新たなチャネルの開発にこそ期待されるようになっていくのかもしれません。
<追記> 2020/12/26
大阪電気通信大学にも大学公式Vチューバーがいることを知ったので、こちらも紹介しておきます。しかも見つけた「初日乃うい」は、大阪電気通信大のVチューバーとしては二代目!初代Vチューバーは「花野てん」で、2018年の10月に誕生したようです。だいぶ時代を先取りしていたようですねぇ。