小額寄付の優秀なプラットフォーム。恵泉女学園大学の取り組みから考える、クラファン✕寄付のポテンシャル。
18歳人口が減っているうえ、国からの支援も先細っている現在、多くの大学では寄付金募集に力を入れるようになってきています。しかし、日本にあまり寄付文化が根づいていなかったり、経済的に余裕がある人がそう多くないこともあって、寄付金募集が上手くいっている大学というのはごくごく限られている印象があります。今回、見つけた恵泉女学園大学の取り組みは、この何かと難しい寄付金募集における面白いアプローチだと感じたのでご紹介したいと思います。個人的には、あ、これ、ありなんや!と思いました。
寄付を集める場としてのクラウドファンディング
ではどんな取り組みかというと、開学35周年記念で実施したクラウドファンディングです。クラウドファンディングの目的は、「カリヨン」と呼ばれる鐘楼のついた塔状の建築物兼楽器の整備と、学生たちが学びやすい環境づくりのためです。
大学のクラウドファンディングというと、研究者が自身の研究活動を推進するためであったり、学生が地域活性化等のプロジェクトに取り組むためであったり、公益性が高く世の中をよくしていくから寄付してね、というものが多いように思います。今回の恵泉女学園大の目的に公益性がないとはいいませんが、どちらかというと大学としてやりたいけどお金が足りないから寄付を募っているように感じました。じゃあ、これが悪いのかというと、ぜんぜんそんなことはありません。むしろすごく可能性を感じたんです。
恵泉女学園大のクラウドファンディングの目標設定額は400万円でしたが、それを大幅に上回る821万7千円が集まりました。目標の2倍以上です。クラウドファンディングを実施したREADY FORのページを見てみると、どの金額のコースに、何人寄付をしたかを見ることができます。ちなみにどのコースでも返礼品は、寄付金受領証明書、お礼状、大学ホームページ上に寄付者として名前が載る、という3つで統一されていました。で、コースごとの寄付者数を見ると、3,000円が24人、5,000円が29人、1万円が74人、3万円が16人、10万円が5人、30万円が3人、50万円が1人、100万円が3人になっており、8割以上の人が1万円以下の寄付金額なんです。
私は小額の寄付と高額の寄付はそもそものアプローチからわけて考えた方がいいと思っていて、小額の寄付を募る場としてクラウドファンディングはかなり優秀なのではないでしょうか。先述したように大学のクラウドファンディングは公共性の高いテーマでないといけないと勝手に思い込んでいたのですが、今回の恵泉女学園大のテーマでもしっかりと機能しています。そうであれば、ややこしい大学の寄付のシステムを使うより、クラウドファンディングを使うほうが、よっぽど手軽に寄付ができます。
ふらっと寄付ができるクラファンの仕組み
大学の公式サイトや基金サイトを経由して寄付する場合、寄付の用途を選んだり、やり方を確認し必要事項を記入したり、慣れていない人なら30分はかかりそうです。クラウドファンディングの場合、そのクラウドファンディングを過去に利用していたなら、とても簡単に寄付ができるし、そうでなくても寄付までのステップが洗練されており、負担はだいぶ軽減されます。数千円を寄付しようという軽いモチベーションの場合、気持ちはあっても寄付までの手間が嫌で断念するというのが、けっこうあるように思います。
また大学の基金サイトには、一口1万円からというのと、寄付額の目安を提示していないものがけっこう多くあります。1万円は個人のお小遣いから出そうとするとなかなか負担ですし、寄付に慣れている日本人なんてそういないので目安額がないのも、それはそれで不安になります。恵泉女学園大のクラウドファンディングのように、幅広く寄付金額のコースを設定している(つまりどの金額でも受け入れているし歓迎している)と明示しているのは、寄付する側としてはありがたいように思いました。
さらにいうと、男女共学の大学よりも女子大学の方が寄付金集めに苦戦する傾向があると言われています。今は変わってきてはいるものの、ひと昔ふた昔前は良妻賢母を育てることを目的にした女子大学がけっこうあり、これら大学の卒業生には専業主婦として家庭に入っている人も多くいます。自身で仕事をしていないと高額の寄付はやりにくいし、ある程度高齢になっているのに小額の寄付だと申し訳ない……。そんなことを感じている人も、なかにはいそうです。こういう人にとっても、小額の寄付コースがいくつも設定されているのは、喜ばしいことだと感じました。
寄付金募集✕電子マネーの可能性
いろいろと書きましたが、要は高額の寄付は丁寧に丁重にお願いして寄付していただくようにして、低額の寄付は手軽かつ低額でも罪悪感(?)を感じないように寄付できる仕組みがあればいいと思うのです。恵泉女学園大の取りは、これを再確認させてくれたように思います。
そして、この低額寄付の路線をもっとエッジを立たせていくなら、paypayとかで大学に寄付ができるようになるとよりよさそうです。たとえば、寄付テーマと関連する公開講座を開催して、そのときに配られるチラシからQRを読み込むとすぐに寄付ができるとかでしょうか。うちで運営している、大人に大学の魅力を伝えるウェブマガジン「ほとんど0円大学」とpaypayとのコラボで、何か面白いことができるのでは?と、ここまで書いてだんだんと思ってきました。うーん、何かやってみたい。これ、もうちょっと考えてみるようにします。