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実は”のびしろ”がだいぶある?つぶしがきかない系大学&学部学科の入試広報のあり方を考える。

存在を伝える、魅力を伝える、入試情報を伝える。ほとんどの場合、入試広報はこの3つの情報を伝えることが目的のように思います。とはいえ、これら活動はとても重要なのですが、これだけでいいのかというと、はたしてどうなんでしょう…?いい大学や学部学科もあるけど、実はそうでない大学や学部学科もあるように思うのです。今回、見つけた清泉女子大学のイベントは、そうでない大学や学部学科について考えるきっかけになったので、こちらについて取り上げたいと思います。

自校のことを伝えるより、まず先にやるべきこと

いろいろ思わせぶりな出だしで書きましたが、まずは清泉女子大学のイベント内容から見ていきたいと思います。このイベントの名前は「スペイン語文化祭」。名前の通りスペイン語やスペイン語文化圏の魅力を伝えるイベントになっており、同大学のスペイン語スペイン文学科の受験を検討する人だけでなく、男子高校生や理系志望の高校生、高校教員等にまで広く門戸を開けています。

外国語大学では、よく語学を切り口に、海外文化にふれるイベントを開催しており、このイベントも同じスタンスのもののように思います。そういう意味では、とりわけユニークというわけではないのですが、スペイン語スペイン文学科の志願者を獲得するためには、大学や学部学科の情報を伝えるよりも先に、場合によってはそれよりも力を入れて、やるべきことのように感じました。

ではなぜ、スペイン語スペイン文学科の志願者獲得のために、このイベントが大切なのでしょうか。これは単純なことで、だいたいの人は、「うーん、何を学ぼう……よっしゃスペイン語や!」とはならないからです。グローバルに活躍したいからとりあえず国際系学部、やりたいことが決められないから人文系学部、などというのは思考としてはよくあるように思います。でも、スペイン語という、もう一段階具体化した選択になるとき、そこには“なんとなく”はありません。そうなると、途端に勇気がいる選択になるし、選択するには明確な意志が必要になります。

志望校選びがはじまるまでに、スペイン語を専門的に学びたいという気持ちが固まっていたなら、他大学のスペイン語学科と競り勝って選んでもらえればそれでOK。でもはたして、自然に生活をしているだけで、スペイン語を専門的に学びたいという気持ちになる人がどれだけいるのでしょうか。わからないものの、ものすごく多いかというと、そうではないように思います。とはいえ、これがネガティブな話しかといえば一概にそうとは言い切れません。18歳人口の減少は大学業界がいくら頑張っても変わらないのですが、スペイン語系学科の志願者は、この学問分野が頑張ることで、分母から変えることができる、とも考えられるからです。

熱烈なスペイン語推しの文章になっていますが、別にスペイン語に限ったことではありません。より大きな分野でいうと、芸術系なんかも同じ構図に当てはまります。また、より具体化されてマイナーな分野や職種、たとえば放射線技師なんかになると、さらに分母を増やす活動を注力した方がいいように思えます。

つぶしがきかない系大学&学部学科の広報戦略

入試広報は、存在を伝えて、魅力を伝えたら、振り向く受験生は振り向いてくれるだろうという、ある種の思い込みが前提にあって活動が行われています。でもこれはつぶしがきく学部学科だからこそ成立する考え方であり、すべてに当てはまるわけではありません。そういう意味では、受験生にとってつぶしがきく(と思われている)側なのか、そうでない(と思われている)側なのかを考えたうえで、戦略を練る必要があるのではないでしょうか。

さらにいうと、つぶしがきかない学部学科は、全受験生に向けて広報活動をする必要はない、という考えもできます。高校生が志望校や志望学部を選ぶ期間というのは、いくら長くても1年前後。このそう長くない期間に、ゼロから情報を伝えて、こちらに振り向かせるのはかなりの労力(=コスト)がかかります。であれば、入試広報は完璧にこっちを向いていなくても、ある程度こっちを向いていてくれそうな人に絞ったうえで、丁寧に行う方が、コスパがいいように思うのです。

そうなった場合、こっちを向いていなくても、ある程度こっちを向いてくれそうな人がどこにいるかを探すのが肝になります。これが容易に見つかる分野とそうでない分野があると思うんですね。芸術系の大学であれば、美術部等のクラブ活動や、若者向けのアート系イベント、コンテンツに広告を打つなど、ある程度、目星がつけられそうです。でも、スペイン語……となると、その難易度はけっこう上がりそうです。

情報発信に適した場がないのであれば、自大学やスペイン語系学科をもつ他大学と協力してイベントを主催したり、メディアを運営したりして、広告を打つ場を探すのではなく、自分たちでつくる方が手っ取り早いこともあるかもしれません。そしてまさに、今回の清泉女子大学の「スペイン語文化祭」は、スペイン語スペイン文学科への受験検討者を対象にしているので、こういった場を自らつくる取り組みだともいえます。

また言うまでもないことですが、分野に興味をもつ人を、長期的に“増やして育てる”ということも、つぶしがきかない系大学&学部学科にとっては、ものすごく大事なことです。これら啓蒙的な活動を、地域貢献としてではなく、入試広報として戦略的に、さらにコストを割いてやっていくべきなのだと思います。

なんにしろ、つぶしがきかない系大学&学部学科は、いわゆる一般的な入試広報とは異なる視点や工夫が必要になるし、それを理解したうえで、はじめて意味のある戦略が立てられるはずです。大変そうではありますが、実はこっちの方がのびしろがあるのかも、と個人的には思っています。

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