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スルーされがちな”大学の想い”をストレートにぶつける手段。大学×歌の可能性をあらためて考える。

大学の歌というと、校歌や応援歌のような愛校心が濃縮されたような歌をイメージしがちですが、最近はそれだけではなさそうです。受験生や在学生に向けたオリジナルソングやコラボソングというものも、ちらほらと出てきているみたいです。なぜ、大学は、わざわざオリジナルソングをつくるのでしょうか。またそこにはどんな可能性があるのでしょう。今回はそんなことについてボヤボヤと考えてみようと思います。

まずは今回、歌を調べようと思うきっかけになった曲から紹介させてもらいます。曲名は『STORIES 2022~』。シンガーソングライターの河口恭吾さんと京都橘大学のコラボで生まれた曲になります。

この曲は京都橘大学の「応援ソングプロジェクト」のなかで生まれ、作詞作曲やミュージックビデオなどを河口さんと学生たちが一緒になって制作しているのだとか。曲を聞くと、まさに応援ソングという言葉がしっくりくる内容で、コロナ禍で大変だった学生たちに寄り添った内容になっていました。

他にもないかと見ていたところ、下記のようなものを見つけました。

あと先日、このnoteで紹介した帝京平成大学のWebCMに使われている楽曲も、男女デュオ「まるりとりゅう」が帝京平成大学のために書き下ろした楽曲のようで、これも大学とのコラボソングと言えるのかもしれません。

これらの曲を聞いていて感じるのは、大学をアピールするような情報がほぼないんですね。強いていうと拓殖大学のコラボソングに、同大学のキーカラーである「オレンジ」というフレーズがあるぐらいです。まあ、自大学の魅力や精神を歌い上げる曲をつくったところで、関係者しか好んで聞かないので、結果的に大学のPRにならない、という考え方もあるでしょう。でもそういうことじゃなくて、そもそもの動機が、大学を伝えることではないからなのかなと、立て続けに何曲かを聞いて感じました。

今回、取り上げた曲から強く感じたのは、どれも受験生や在学生に寄り添い、エールを送りたいという気持ちです。ひねくれた見方をすれば、若者を応援する曲なんて巷にあふれているわけで、大学がわざわざつくる必要なんてない、ともえいます。それでも大学がつくったのには、そうしたいという強い気持ちがあったからではないでしょうか。

そして、受験生がんばれ!とか、勇気を出して挑戦しよう在学生!とか、大学がパンフレットやウェブサイトに書いたとしても、これってあんまり印象に残らないと思うんですよね。だいたいどこも言っていることですし…。でもその想いを、歌にすることで、すごく届きやすくなるように感じました。メッセージ性を強くしたり、情緒的な情報を上手く伝えるというのは、音楽の持つ力なのでしょう。そう考えると、受験生や在学生にエールをどうしたら届けられるかということを真剣に考えた結果、これら大学は歌という表現にたどり着いたのかもしれません。

歌をPRに使う手法として、CMソングというものもありますが、あまり教育・研究機関である大学のイメージとはそぐわないこともあって、これまで大学広報で、歌が積極的に取り入れられることはなかったように思います。しかし、教育内容や支援制度は具体的なため受験生に伝えやすいものの、大学が”あなたを応援している”というメッセージはなかなか伝わりにくいもの。日常的に教職員と接っする在学生ならまだしも、受験生の場合、実感できるシーンはほぼないでしょう。他大学と差別化をはかるうえで、こういった大学の想いを上手く伝えるというのは一定の価値があるのかもしれません。

加えて、現在、学修者本位の学びが重視され、大学が何を教えたかよりも、学生が何を学んだかの方が、その大学の価値とされるようになってきました。こういった状況のなかで、大学が在学生を真剣に応援することは、大学の価値を底上げするうえで意味があります。教育内容や支援制度が整っていれば、それで学生が伸びるのかというとそうではなく、ハード面とソフト面の両輪がそろってこそ人は育つわけです。歌はソフト面の充実を在学生、そして支援する側の教職員が意識するうえで役に立つ可能性があります。

いろいろと考えていくと、単に言語化するだけでは上手く伝わってこない大学の想いを学内外に浸透させるための手段として、歌はけっこう有能なのかもしれません。大学広報、そして学内コミュニケーションの手段として、歌についてちゃんと検討してみてもいいかもです。

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