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育てると増やすは違う?異色の講演会から感じる、ベンチャー企業創出拠点づくりをめざす近畿大学の本気

つい先日、近畿大学のインキュベーションの話題を取り上げたところなのですが、今回も近大のインキュベーションネタです。見た瞬間は、これってどうなの!?と感じたのですが、あれこれ考えた結果、一周まわってこれはこれで有りなのかなぁと思うに至りました。何であれ、目的さえ明確なら、そこに至るアプローチは自由なのかもしれません。

近大「KINCUBA Basecamp」で開催する異色の講演会

今回、取り上げるのは、近大のベンチャー企業創出拠点「KINCUBA Basecamp」の講演会です。起業関連の取り組みで講演会を実施すること自体は、そんなにめずらしいことではありません。ただ、今回はテーマが「吉本新喜劇的起業のススメ~川畑泰史のコケてもいい話~」で、登壇者が今年3月まで吉本新喜劇で座長を務めた川畑泰史さんなんです。

…いや、うん、正直ちょっと聴いてみたいですよ。でも、世に起業家が星の数ほどいるのに、なぜ新喜劇の元座長なのかと。おそらく、このリリースを見た人のうち相当数がそう思うのではないでしょうか。起業経験があるわけではないし、社会人経験はあるものの、いわゆるビジネスの世界とは異なる芸能の世界で活躍する人です。起業を志す学生にとって、どれくらいタメになる話ができるのだろうと感じました。

でまあ、ここまで考えて、何か他に面白そうなリリースがないかと、次を探そうと思ったんですね。けど、その前にいちおう「KINCUBA Basecamp」をのぞいておこうと思い、サイトを見てみたんです。そこで、この講演会の印象がちょっと変わりました。

「KINCUBA Basecamp」は、近畿大学の「創立100周年に、100社の近大初ベンチャーを」創出することをめざして生まれた拠点になります。開設したのが2022年10月で、近大が創立100周年を迎えるのは2025年。2年と少しの期間で、100社のベンチャーをつくろうということになるので、外から見ているだけでは、かなりの無理ゲーないし、とりあえず威勢のいいことを言っているのかな?という気がしてしまいます。

しかし、どれだけ施設が活発に活用されているのかは、実際に訪れていないのでわからないのですが、サイトを見てみると、相当の量のイベントを開催しているんですね。6月だけでも9回イベントをやっていて、さらに7/3、6のイベント告知も載っていました(7/6は川畑さんのイベント、7/2現在)。しかも基本無料。週に2~3回イベントをやっているわけで、これってめちゃくちゃ本気です。

「KINCUBA Basecamp」の開催イベント。6月後半は1~2日に1回のペースで開催していたよう

起業家を育てると、起業家を増やすは別のミッション

本気で100社創出という目標を達成しようとした場合、起業したい学生を支援するだけでは足らないわけです。新規獲得をしなくてはいけない。そう思ったら、川畑さんのイベントはけっこうありなのかなと思いました。なんというか、ギラギラとした起業家スピリッツというのが全面に出ると起業をめざす学生にはグッとくるけど、そうでない学生は一歩引いてしまいます。ぼくは、わたしは、そっちじゃない、と。そう思わせないために、あえて起業家っぽくもなければ、ビジネスっぽくもない人に出てもらう。でもここで、川畑さんが、吉本お笑いの秘訣!とか、吉本新喜劇の裏側大紹介!とかを話してしまうと、講演を見たところで、あー楽しかったで終わってしまい、なんの意味もありません。

起業に興味がない学生に、起業に少しでも関心を持ってもらうにはどうしたらいいか?そんな問いを近大なりに考え抜いた答えの一つが、この人選とテーマの微妙なアンバランスさなのかなと感じました。あと「KINCUBA Basecamp」に行ったことがないので、なんとも言えないのですが、たぶんここは場としてすごく魅力的なんだと思います。でも場に力があるゆえに、起業を志していない学生には足を踏み入れにくい場になっているのかなと。起業に対して強い思いがない学生にも、とりあえず一度は訪れて欲しい、そのきっかけみたいな意味合いも、このイベントにあるように感じました(推測というより妄想に近いですが…)。

インキュベーション施設だからといって、いや、だからこそ、起業というテーマのど真ん中を射抜かないイベントをすることに意味がある。今回の近大の取り組みから、そんな気づきをもらえたように思います。

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