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素の大学を伝える、ステキな取り組み。大学の図書館開放の価値・ポテンシャルをあらためて考える。

公開講座をはじめ、大学の社会に向けたイベントや取り組みというのは多数あります。今回、取り上げるのはそういったもののひとつです。この取り組みは、地味ではあるもののすごく魅力的だと思うんですね。どこがどう魅力的なのかは、これからじっかり語っていきたいと思います。あ、取り組みの内容は何かというと、大学の図書館開放、です!

大学の図書館開放は、常に開放しているところもあれば、長期休暇期間のみであったり、高校生限定であったり、はたまた自習や図書の貸出はNGだけど図書閲覧のみOKだったり、実施大学のなかでも内容はまちまちです。今ぐらいの時期になると、夏季休暇期間に図書館開放をする大学がプレスリリースを出すので、それでよく目につきます。かくいう私も武蔵大学と実践女子大学のリリースを見て、そういえば……と思い、この記事を書くに至りました。

それで、図書館開放の何が魅力的なのかというと、大きくは二つあるように思います。一つは、その大学の“知”を感じ取れる良い機会になること。大学図書館は、そもそも何のためにあるのかというと、そこで学んだり、研究したりする、学生や教員のためにあります。彼ら彼女らにとって役立つ本や資料を中心にそろえているわけです。そのため、経済系の大学であれば経済関連の書籍が充実しているし、美大であればアート本が豊富にあります。図書館を見比べることは、あまりないと思うのですが、よく見て回るとその大学の専門領域がよくわかる場なのです。あと、ちょっと意地悪な視点で図書館を見回すと、学生たちの勉強に対する姿勢みたいなものも感じることができます。

もう一つは、素の大学を知る機会になる、ということです。考えてみると、大学が告知をして人を呼び込むときって、特別なときだけなんですね。シンポジウムもそうだし、学園祭もそうだし、オープンキャンパスなんてまさにそう。大学は一般の人ないし受験生を呼ぶために準備をするし、準備ができたうえで来てくれた人たちをおもてなしします。

でも、大学の図書館開放は学外者を呼ぶことを第一目的にした取り組みではありません。長期休暇で使う人が少ないからとか、図書館の稼働状況に多少の余裕があるからとか、そういった余剰分を提供しようという、もったいない精神と社会貢献の混ぜこぜになってできた取り組みです。もちろん、大学PRの意味合いもあります。でも、それを主目的にしてゼロから立ち上げたイベントや取り組みとは、成り立ち部分から異なります。だからこそ、よそいきではない大学を知るきっかけになるのだと思うのです。

さらにいうと、大学博物館ほどではないものの、大学図書館でも企画展示を開催することがあります。学外者より在学生を意識した展示が多く、これら展示を見ていると大学の考え方やスタンス、学生に対する眼差しみたいなものをリアルに感じ取れたりします。こういった情報に触れられるのも、大学図書館ならではなのではないでしょうか。

……と、あれこれと書いていて思ったのですが、そもそも図書館資料のラインナップから大学の“知”を感じるとか、学外向けイベントでは伝わってこない素の大学を知るとか、そういったことを学外から訪れる図書館利用者が求めているかというと、ほとんどの場合そうではないですよね、きっと……。これって、大学図書館を利用する学外者のメリットではなく、大学にとってのメリット(になるかもしれないPR要素)、ですよね。

ここらへんを上手く活用すると、新たな大学の魅力発信や、社会とのコミュニケーションの回路が生まれるかもしれません。でも、それを意識しすぎると今度は素の大学を伝えるという良さが損なわれるのか……。とまあ難しいところはあるものの、大学図書館を使った学外との交流は、スペースの利活用に収まらない価値やポテンシャルがあるはずです。学外者が気軽に大学とつながる接点はそう多くないので、ぜひ多くの大学に、上手く、前向きに、図書館開放に取り組んでで欲しい。そう、無責任にも強く思ってしまうのです。

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