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マッドパーティードブキュア 328
――やはり構えられていたか
マラキイは小さく舌打ちをした。可能性を予測はしていた。だから、対応はできた。だが、対策は思いつかない。もう一度仕掛けても同じ結果になるだけだろう。
「マラキイ」
メンチが呼びかけてくる。肩越しに振り返る。
「いこう」
メンチが語りかけてくる。声は発していない。メンチの目から発せられる尽きぬ殺意がマラキイの目に向かって、意志を叩きつけてくる。
そうだ、とマラキイは拳を握りしめた。
この場でラゲドを止められるのはマラキイとメンチの二人しかいない。
ドブヶ丘の街の混沌はいけ好かないが、ラゲドの、正黄金律教会の連中の思い通りになるのはもっといけ好かない。
だから、マラキイは身構える。先ほどと同じ格好で。ラゲドにまっすぐに狙いを定めて。
同じことを繰り返して、違う結果を期待するのは狂気の沙汰だ。だが、この街の力の顕現であるドブキュアが狂って居ないことなどありうるだろうか。
低い体勢でマラキイはラゲドに跳びかかる。メンチ同時にメンチが高く飛ぶ。上下差のある同時攻撃。これには対応できるか? ラゲドがため息をつくのが見えた。指先にこわばりを感じる。マラキイは指先に絡まり始めていた黄金の呪文陣を握りつぶす。来ることがわかっていたら対応できる。距離を詰める。だが――
舌打ちを一つ打って、距離をとる。ラゲドに近づくにつれ、呪文陣の密度は高くなっているのを感じた。あと半歩でも踏み込んでいたら完全に動きを止められてしまっていただろう。その密度はもはや障壁と言っても過言ではないほどの堅牢さだった。
障壁?
マラキイは浮かんだ自分の思考に、かすかなひっかかりを感じた。高密度の呪文陣、障壁。
「マラキイ」
低い呼びかけが聞こえた。マラキイは顔を上げた。誰だ? メンチの声ではない。聞いたことのある声だった。袋を切り開くときにマラキイの意識を繋ぎとめた、あの声だった。
「私の話を聞きな」
【つづく】