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マッドパーティードブキュア 321
「ぐぅううう」
マラキイは歯を食いしばり衝撃に耐えた。両手に掴んだ世界の歪みに魔力を集中させる。この両手を放すわけにはいかない。手放せばこの袋から出ることができなくなる。再び同じように領域を掴むことができるとは限らないのだから。
メンチの斧の圧力が両手の間を通り抜けていく。形あるものを押しつぶし、叩き切る斧の刃。
メリ
かすかな、耳に聞こえない音が聞こえた。世界のほころびる音。マラキイの両手の間に、かすかな、しかし確かに亀裂が生じる。
斧を振り下ろすメンチと目が合う。マラキイは何も言わずに、頷く。メンチも頷き返す。さらに両手に魔法少女力をこめる。渾身の力でしわに生じた亀裂を引き広げる。
「でぇいやぁあああ!」
メンチの斧の力も増す。亀裂めがけてまっすぐに斧の刃を叩きつけてくる。
亀裂と斧の刃がぶつかり合い、まばゆい七色の火花が散る。
不意に、マラキイの両手から世界の抵抗が消え去った。
耳をつんざく轟音が響いた。
衝撃と七色の光に目がくらむ。マラキイは自分の身体が消失したような感覚を味わった。光に包まれた混沌の中に意識だけが漂う。
どちらに向かうべきかもわからず、マラキイはとりあえず目の前に進んでいこうとする。そのとき、声が聞こえた。
「そっちじゃあないよ」
聞いた記憶のない声だった。誰の声でもない。けれども、どこかで聞いたことのあるような不思議な声だった。
マラキイは振り返る。身体の感覚が戻ってくる。マラキイは我に返った。
「大丈夫か?」
心配そうなメンチの顔がマラキイを覗き込んでいた。
「ああ、大丈夫だ」
頭を振りながら、マラキイは答える。目をつむり、開く。マヒしたように遠のいていた体の感覚が次第に戻ってくる。まだめまいは残っているけれども、どこも怪我はしていないようだ。
ゆっくりと顔上げる。
「やったな」
「ああ」
目の前の壁には二人が通り抜けられそうな大きな亀裂が広がっていた。
【つづく】