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マッドパーティードブキュア 272
「なんだよ」
「いえ、マラキイさんがそんなことを言うなんて珍しいと思って」
「んなことは、ねえだろ」
「これは、嵐でも来るかもしれませんね」
冗談めかして笑いながら、セエジが言った。ふん、とわざとらしく拗ねて見せながらマラキイは顔をそらした。視界の端に少しだけ綻んだテツノの顔が見えた。
「そういえばよ」
話をそらそうと、マラキイはふと頭に浮かんだ疑問を口に出してみた。
「お前とメンチはどういう関係なんだい?」
「え?」
きょとんとした面持ちでテツノはマラキイの顔を見返した。
「なんだよ」
再び不機嫌そうな声を作ってマラキイは答える。
「いえ、マラキイさんがあたしに興味持つなんて珍しいと思って」
「そうか?」
「ええ、あんまりそういうの気にしない人だと思っていたから」
「そういうのって、どういうのだよ」
「だから……その、他の人の過去とか、そういうこと……ですかね」
何かひどく口ごもりながら、テツノが答える。どうせ他人に興味がないだとか、そんなことを考えていたのだろう。失礼なことだ、とは別に思わない。
自分でもらしくない質問だったとは思う。でも、テツノを不安な顔のままにしておくのはなんだか居心地が悪かったのだ。テツノはどこか笑顔にさせておきたいと思わせる何かがあった。
メンチも同じようなことを考えていたのかもしれない。メンチのテツノに対する態度は少し過保護が過ぎるような気もするけれども。
「で、どうなんだよ」
「なにがですか?」
「メンチのことだよ」
背もたれにもたれた姿勢を保ったままマラキイはもう一度尋ねた。
結局のところ、ただの退屈しのぎだ。
テツノは少し考え込んでから口を開いた。
「ただの友達ですよ。友達」
「へえ、にしてはずいぶん仲がいいように見えるけど」
「まあ、ずっと一緒にいますからね」
少し照れたようにテツノは笑った。
「ねえ、あれ、なんだろう」
ふいにうとうとと舟をこいでいた女神が窓の外を指した。
【つづく】