風景画杯、ライナーノート

景画杯の全作レヴューが公開されましたね。主催の白蔵主さまお疲れ様です。というか、二週間足らずで50作にも及ぶ作品の一つ一つにこんなに丁寧なレヴューを書くとか、いったいどんな天狗様なんだ……。ぱないの。

 というわけで、恒例のこんなこと考えながら書いたを残していこうと思う。例によって自分用のメモと、他の人がライナーノートを書く呼び水になればよいと思う。あと、もちろん宣伝行為でもある。

 人格が割れなかったので今回は一作品だけ。

おやしきぐらし


 「事件が起こらない」というレギュレーションを見たときに、二人の作家が頭に浮かんだ。日本の漫画家つげ義春とアメリカのホラー作家、シャーリィ・ジャクスンだ。
 つげ義春と言うと「ねじ式」を代表とする夢シリーズが有名だけれども、「退屈な部屋」とかの私小説のような漫画も描いている。
   ジャクスンはそのまま「なんでもない一日」という短編小説を書いているからそこからの連想だろう。長編でも「ずっとお城で暮らしてる」の前半なんかは風景画としての美しさを持っている。
 どっちにしようかなー、って少し考えて、俺が私小説書いても面白くはなんねえなって思ってジャクスンを選んだ。面白い私小説が書けるなら、「事件が起こらない」小説が書けるだろうけれども、面白い私小説ってなんかようわからんしな。
 

少女の王国

 というわけで選ばれたのはジャクスンでした。ベースは「ずっとお城で暮らしてる」。登場人物の名前はこの作品の登場人物の一部からとっている。

https://www.amazon.co.jp/dp/B076D69FY4/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1

 これだけだとパンチが足りないのでもう少し組み合わせるものを探す。
 ところで、君は「少女の王国」という歌を知っているだろうか? 筋肉少女帯の曲だ。詩人としての大塚ケンヂのセンチメンタルに富んだ曲で俺は大好きだ。(どういう背景で書かれたのかは知らないけれども)

 月の裏側のどこかに少女の王国を作った男の歌。


 急に筋肉少女帯なんか出してどうした? と思うかもしれないね。でも、「ずっとお城で暮らしてる」を読んで、「少女の王国」を聞いたことがある人ならピンと来るかもしれない。この二つにはなにかしらシナジーが感じられるんだよ。
 月の裏側、何もない世界(あるいはセカイと書くのが正解なのかな)で少女がひっそりと暮らしているVISION。
 そういうのが嫌いな奴おる?
 俺は大好きなのでこの路線で書くことにした。

 あとはまあ、HELLSINGとかトリフィド時代とか砂の女とかごちゃごちゃ差し込んで。

ギミック

 崩壊後の世界を書くに際して「事件起きない」をどうしようと考えた。「この世界では日常です」というエクスキューズを入れるのも手ではあった。メタを読めば、パルプスリンガー勢は「怪獣が中二日で襲来する世界」を書いてきそうだなと思ってた。
 なので少しだけ軸をずらして「語り手には事件が起きていないように見える」という形にしてみた。「信用ならない語り手」ってやつだ、たぶん。
 なので、作品の中でちょいちょい事件は起きている(日常と言えばそうかもしれないけれども)。でも語り手は事件だと思っていないので、「事件は起きていない」。
 そんな感じのギミックにしてみた。

反省点

 レヴューを読んでから、改めて自作を読み返してみて、少しギミックに頼り過ぎてるところがある気がした。これは明確な反省点だ。ジツに頼り過ぎてカラテをおろそかにしてしまった。今も昔もカラテを極めたものが上を行く。

 最初のVISIONをもっと大切にするべきだった。
 つまり姉妹二人をもっと仲良く、いやむしろイチャイチャさせるべきだった。悔やまれる。なぜ、それを避けてしまったのか、それも明白だ。要は「照れて」しまったのだ。
 これは完全にWHY YOU WINを見失っていたと言える。
 テレをなくして最後の二人のイチャイチャに焦点を持って行ければ、もっとすっきりした話になっていたんじゃないかなと思う。

 そんなかんじかなー。

 そういえば、今連載中の「手口兄妹の冒険」はもちろん兄妹の話なので兄妹でイチャイチャさせる場面も出てくるだろう。同じ後悔はしないようにしよう。おーし、めっちゃイチャイチャさせるし。ブラクラのヘンゼルとグレーテルとか、メイアビのナナチとメイニャくらい。

おわりに

 
 他の出展作品はまだ全部は読めてない。なんたって50作品(!)だ。そのなかで個人的に好きだったのはazitarouさんの「ベランダバーベキュー」かなー。これこそカラテの勝利って感じがする。

 あとはishiika78さんの「ゴールデントライアングルへようこそ」。こういうトンチキをきっちりまとめられるのは本当にカラテが高いと思う。

 個人的には少し悔いが残ってしまったが、とても楽しい杯であった。
 あらためて主催の白蔵主さん、おつかれさま、そしてありがとうございました。

【おわり】

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