絶叫杯のライナーノーツ的なやつ
ごあいさつ
バール様主催、『野郎どもが互いの名を叫びながら殺しあう小説大賞』通称、絶叫杯の結果が出ましたね。優勝した遊行剣禅の大哥まじでおめでとうございます。
まさかまだ読んでいない方はいないと想いますが、もしあなたが読んでいないならばあなたは読むべきである。つづけて他の作品も読んで見るべきである。
というわけでいろいろ提出作のライナーノーツ、元ネタの解説をしていきたいと思う。需要があるのかと問われると、知らんと答えるが、わしが書きたいので書く。えーっと第二回があったときのために、脳内を記録しておきたい? あと普通に語りたがりなものだし、なによりこのタイトルを見た参加者がこぞってライナーノーツを書き始めたら俺得だ。
与太はさておき、始める。
今回は二作品書いた。長いのと短いのだ。
Hide and Seek, Hunter and Freak.
元ネタは高橋葉介の傑作「狼と狩人と女」。
「男たちが絶叫して殺し合う」というレギュレーションを見たとき、この話が浮かんだ。狼と狩人が殺し合い、復讐に燃えた狩人の後継者が逃げる狼を追うヴィジョンだ。
クライマックスは当然狼と狩人の殺し合いになる。
小説にするにあたってもう少し内面の衝突のようなものが欲しくなって、狼は人狼になり、狩人と親友ということになった。
その上で「どのように殺し合えばいいのか」を考える。この二人は殺し合いたいのだろうか? 殺し合いたくないのだろうか? 「殺し合いたくないけど、殺し合わなければならない」あるいは「殺し合う必要はないけど、殺し合いたい自分は捨てられない」みたいなのにしたくなった。
悲劇にしたかったのかもしれない。どうだろう。
作り方としては連載形式のやつを最後にがっちゃんこする作戦をとった。だって、こんなに長いの一気には書けんもん。書いているうちにめりめり話が膨らんでいった。プロット段階では助手とか部下はもう少し影が薄かったのだけれども。
おかげで最終日にエナドリ決めながらぎりぎりぶっこむ羽目になった。夏休みの宿題は大方を7月中に済ませて、8月31日にやり忘れてるのを見つけて青くなるタイプだ。
同じくぎりぎりにぶっこまれたのがグエン氏の「ラァス・オブ・ワースレイヤー! 」だった。奇しくもおれの作品と同じく人狼モノでヘッダーのテイストが似ていたので、少し混乱して、真相に気がついて少し笑った。こちらも興味深いので未読ならぜひ。
その他の細々したこととしては、登場人物たちの名前だろうか。すべていろんな言語での色の名前で揃えてみた。オースターの幽霊たちのパクリだ。師匠が「マロン」(茶色)なのあたりがわかりやすいだろうか。
たしか一回冒頭を書いたあたりで逆噴射ワークショップがあったのを覚えている。冒頭のシーンの重要性がとうとうと語られていて、「ああ、そうだよな」と思って、読み返してうーんって思って、気合を入れて書き直した。なのでバールさんに冒頭いいねって褒められたのでめっちゃ嬉しい。
書いているうちに色々矛盾とか設定とか結末とか変えたくなったので、連載版と別に提出版でかなり手を加えた。かなり違う(具体的には生存者が異なっていたりする)ので興味がある人は読み比べてみても面白いかも知れないね。
儚く脆いその手を握る
短いほうだ。
冒頭の一文でおわかりの通り、この小説はホロライブ4期生所属、キャッチコピーが「握力50キロ、ギュッギュ握りつぶしちゃうぞ」なVTuber天音かなたの決め台詞「この世のすべては弱すぎる」から着想を得た作品だ。
https://www.youtube.com/channel/UCZlDXzGoo7d44bwdNObFacg
まさかご存知でない方はいらっしゃらないだろうが、彼女はキャッチコピーの通り「握力が50kg(!)」という特性を持ち、加えることに持ち前のDEXの低さから触るものすべてを破壊したという数々のエピソードを持つ。
この件については以下の切り抜きが詳しい。
https://www.youtube.com/watch?v=IMEnzukEvgQ
この他にも(オカルトめいた話だが)ぐっと力を入れたらyoutubeの通信機能が悪くなったとかいろいろ逸話を持つ人物だ。
あ、握力以外にも根性とか運の悪さとか魅力の強い人物なので気になった人はチェックしてみてほしい。
……なんの話だっけ?
そう、「脆く儚いその手を握る」だ。「この世のすべては弱すぎる」という言葉を聞いたとき、本当にすべてを破壊する握力を持つ人物を考えた。ミダス王のバリエーションのようだけれども、接触即破壊だと生きられないので「うっかりすると」を付け加えた。
相手についてはバール様のレヴューの通り、「防御力」ではなく「創造力」を持たせた。防御力カンストも悪くないのだけれども、それだと最強の盾と矛の説話よろしくどちらかが勝ってしまうから、少しそぐわないかな、という気がしたのだ。
「呪い」と「祝福」について面白い収穫を得た。その二つは等しい、能力は独立して存在して、それをどちらで評価するかは人間なのだと気が付いた。中禅寺がよく「呪いと祝福は同じようなもんだよ」みたいなことを言ってたと思うけど、そういうことなのかなとも思った。違うかも。
その他、頑張ったし、気に入ってる部分は案外村人との関わりの部分ですね。腫れ物に触るようなまなざしと、それに気が付かないあたりの嫌な感じをそこはかとなく書けていてお気に入りだ。今度読むときはその辺見ながら読んでみて。
主人公の他者と関わっていなさとかで本人の過去を示しつつ、相手との関りについて未来につなげる形にすることで、絶叫の重さを出してみた。これによりかなり短い分量でエモを導くことに成功しているのかなあ。してるしてる。
冒頭の話に戻ると登場人物は元ネタの名前の真ん中をとってマネカ。相手は彼女の同居人であるドラゴンをイメージしてヤマタ。最初は種族:ドラゴンに設定していたけど、いまいちドラゴン感が出せなかったので種族を魔人にして名前だけ残した。ヤマタノオロチも鍛冶技術の象徴と言う説もあるから創造能力とそこまで離れてるわけではないしな。
旅に誘うくだりはなんとなく二人が同居を始めた時のやり取りを思い出しながら書いた。
二人の旅の道中はいまいち思いついてないけど、結末は見えているので、たぶんそのうち書く。
終わりに
そんな感じが私の絶叫杯だった。
ちなみに個人的に好きな作品はライオンマスク大哥の「かつて天才だった俺たちへ」ですね。
いいよね、カードゲームにまつわるドラマ。ネクロの夏を駆け抜けた12人の白騎士とか。悪魔との契約に負けて決勝を逃したデモコンデスとか。プロツアーニクスへの旅の決勝は何度も見返した。
そういうカードゲームを題材にした物語。架空のゲームを題材にしながらも確かな手触りを与え、ドラマの中心に据えている。ワザマエ!
たまたま本屋で見かけて手に取った野郎どもが互いの名前を絶叫しながら殺し合うアツいプロレス小説である「立ち上がれ、何度でも」という小説があるのだけれども、そちらもプロレスを知っている人もいまいち知らない人でも楽しめる小説だった。すげーよなー
https://www.amazon.co.jp/dp/B09635QYW4/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
いい感じの作品ができたと思って提出したら、他の人の作品を読んで面白すぎて凹んだりしたけど、私は元気です。でも、へこんでばかりじゃいられない。パルプスリンガーは日々進化中。とたまたま見たレヴュースタァライトに励まされつつ、次の作品を書いていこう。
何はともあれ、主催のバール様、お疲れさまでした。楽しい企画でした。
そして、他の作品もみんなアツくて面白いので読んでみてくださいね。
あるいは俺の作品をもう一度読んでみるのもいいかもしれない。(まさかまだ読んでない人はいないよね。いたら読んでね!)
せばな!
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