マッドパーティドブキュア 320
領域によったシワは、マラキイに握りしめられてできた空間の歪みが形を持ったものだ。形のないものはメンチには切れない。だが、こうして形を得たものならば、メンチはどんなものでも切り裂くことができる。それがメンチだ。メンチの魔法少女ドブキュアの力だ。それをマラキイは数度の共闘を通じて知っていた。
切り拓く力、その力であればこの袋の壁を破ることができるはずだ。マラキイが形を与えさえすれば。
マラキイはメンチの目を見つめて、もう一度言った。
「ぶった斬れ」
「お、おう」
メンチは戸惑いながら斧を振り上げた。斧の刃が七色の輝きをまとう。
「お前ならできる、やっちまいな」
「ドブキュア! マッドネスストンプ!」
裂帛の叫びとともに、斧が振り下ろされる。
マラキイは空間を掴む右手に、衝撃を感じた。激しい衝撃だった。全身の骨が軋み、感覚が一瞬消失する。
激しく揺れるマラキイの視界が少しだけ落ち着く。斧を振り下ろしているメンチが見えた。まだ、袋に穴は空いていない。
袋の壁は依然として強固に内外の存在の行き来を拒み続けている。
「そんな」
メンチが目を見開く。振り下ろした斧を呆然と見つめている。
「まだだ!」
マラキイは叫び、手に魔力を込める。今度は両手だ。両手で空間を掴む。先程よりも大きなシワが空中に発生する。
「メンチ! もう一発だ!」
マラキイは再び叫ぶ。メンチが肩で息をしながら顔を上げて、頷く。メンチが斧を振り上げる。七色の光。マラキイは顔の前で大きく手を広げる。マラキイの目の前で、空間が深いシワを作る。
「一緒に切られるなよ」
「お前が上手いこと切れよ」
メンチの言葉に、マラキイは笑って答える。怯むわけにはいかない。怯めば、掴んだ空間の確かさが薄れる。マラキイはメンチの目を見返す。空間を握った両手に魔法少女力を込める。メンチが頷く。来る。
斧が振り下ろされる。
世界を砕く衝撃が、マラキイの全身を襲った。
【つづく】
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