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マッドパーティードブキュア 358

「どっちにしても、黙ってみているつもりはないぞ」
「そりゃあ、そうだろうとも」
 男が頷く。地上からはズウラと天使の声が低く聞こえてくる。殴り合いにも支配にも至ってはいないようだ。まだ、今のところは。つとめて冷静な声を作ってマラキイは言う。
「上もいつまでももつってわけじゃないだろ」
「ええ、さすがにズウラ君だけじゃ荷が重い」
「捨て駒ってことかよ」
 盟主の軽い口調が、マラキイの心を苛立たせた。盟主はそのままの口調で肩をすくめる。
「君たちドブキュアがなんとかできるかどうか次第さ」
「あ?」
「今この街で奴に干渉しうる力を持つのは君たちしかいない」
 盟主はそう言ってマラキイとテツノを見た。恐ろしいほどに鋭い目だった。マラキイは自分の足が半歩後ろに下がるのを感じた。
「あんたじゃダメなのか?」
「ああ、残念ながら今はね。そういう質の力を持っていない」
 そう言いながら盟主はテツノに目線をやった。
「その袋の所有権はテツノ君に移ってしまったみたいだしな」
「あの、まずかったですかね?」
 おずおずとテツノが呟いた。衣装の端を盟主の方に差し出している。盟主は首を振った。
「いや、ドブの力は自ら持ち主を選ぶ。君が力を得たということは、力が君を選んだということさ」
「でも」
「だから、テツノ君。君も戦わないといけないよ」
「はい、それは、わかってます」
 でも、とテツノが俯いた。
「どうやって戦えばいいのかがわからないのです。この袋は、メンチやマラキイさんみたいな武器じゃない。それでどうやってあんなのと戦えるんですか。メンチも、マラキイさんも奴には歯が立たないのに」
 ふむ、と一つうなり声をあげて、盟主はテツノの肩に手を置いた。
「この街の力は、使う者によってそのありようを変える。どう使うかは君にしか見つけられないものだ。だが」
 盟主はじっとテツノの目を覗き込んだ。
「私が知っているのは、力は顕現した形に縛られるということだよ」

【つづく】


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