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「寅さんの鉛筆売り」は役に立たない
「寅さんの鉛筆売り」とは?
「男はつらいよ」シリーズ第47作、「男はつらいよ 拝啓車寅次郎様」で、ビジネスの場で多く引用されるシーンがあります。
どういうシーンかといいますと、約20分辺り。地元(柴又)に帰って来た「寅さん」こと車寅次郎(渥美清)が、甥の満男君(吉岡秀隆)と会話をするシーンです。
満男君は大学卒業後、靴会社で営業をしているのですが、会社の仕事がどうも好きになれず家族に対して愚痴を漏らしている…
すると寅さんは、そんな甥に対し、近くにあった鉛筆を彼に差出し「(この鉛筆を)俺に売ってみな」というのです。
最初に満男君がやった売り方はこんな感じ。
満男「おじさん、この鉛筆買ってください。ほら、消しゴムつきですよ」
当然ですが、全く売れません。そもそも鉛筆を買う気がない相手に対し、消しゴムがついているというだけで買ってくれるなら誰も苦労しないですよね…
そして沈黙してしまった可哀想な甥に対し、自分の売り方を実演して見せます。
寅次郎「おばちゃん、俺はこの鉛筆を見るとな、おふくろのこと思い出してしょうがねえんだ。不器用だったからねぇ、俺は。鉛筆も満足に削れなかった…夜、おふくろが削ってくれたんだ。」
~中略~
「その削りかすが火鉢の中に入って、プ~ンといい匂いがしてなあ。綺麗に削ってくれたその鉛筆を、俺は落書きばっかりして…勉強ひとつもしなかった。でもこれぐらい短くなるとな、その分だけ頭が良くなったような気がしたもんだ」
すると周囲にいた家族は、その話にすっかり聞き入ってしまい、「買った」となるのです。
ビジネスのセミナーやコンサルティング等では、このシーンがしばしば、
◆付加価値を付けて売る方法
◆商品ではなく、ストーリーを売れ
この具体例として紹介されます。そして、その内容を聞いた受講生の多くが、
◆やっぱり○○先生はすごい
◆このセミナーに参加してよかった
となる。
では、そのセミナーで「寅さんの鉛筆売り」を知った受講生は、その後、商品が売れるようになったでしょうか?残念ながらそのような話は全く聞きません。
実はこの、寅さんが実演した販売テクニックには、
とんでもない欠陥
が存在しているのです。それは一体何かといいますと…
大卒者は低学歴を武器に出来ない
ここで一旦、冷静になって考えてみてください。
実際に鉛筆を売るのは一体、誰でしょうか?
当然ですが甥の満男君です。寅さんではありません。
前述のとおり、満男君の学歴は大卒です。寅さんとは学歴に加え、生きている時代も違うわけです。
「僕は全然、勉強が出来なかった」
「不器用で、鉛筆が削れなかった」
学歴のない自分を「自虐的に」ネタとして扱うのは、学歴のない人間だから出来る事です。逆に学歴のある人間の場合、これは使えません。
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