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ホスピタリティマネージャーの備忘録

5月中旬を最後に大好きな大好きな香林居を卒業し、東京に戻って来ました。
少し休暇をいただいた間に気持ちを整理したくて書き残しておきます。

金沢にいた1年9ヶ月はものすごく濃密でした。一瞬だった!と言いかけたけど、濃すぎたからなのか全然一瞬ではなく、しっかりと1年9ヶ月分の体感があります。むしろもっと濃縮されてる。

ーーー私は香林居に何を残せたのか。

この問いがずっと頭にありました。なんとなくこれかなと思い当たる言葉は思いついていたけど、もたもたしてたら先に支配人の笠井さんからこんな文章が送られて来て泣いた。

「第2の山野さんを再現するために整理したんでみてください〜」みたいな軽いノリで送られてきたんだが

なんなの?ラブレターじゃん🥺そして何となくの感覚としての結論は、他者から見ても間違ってなかったみたい。(うれしい)

ーーー確かに私は香林居に愛を残した

いやいや抽象的すぎるだろ!と思いますよね。
その愛とは何なのか、ざっくりですが以下2つかなと現段階では考えています。

【1】リスペクトを口に出す文化
【2】人のために動くことが当たり前という文化

私調べ

私の近くにいる人は当方が根っからの感覚人間ということをご存知でしょう。ですから特に上記2つを100%意識的&計画的にやっていたわけではないのですが、強いて言葉にするなら、といった具合です。

結果的に文化を作ってそれをブラッシュアップしながら持続し、いいチームができたのだと思いました。
以下は上記をどうやって確立したのか、という備忘録です。
私なりに言葉にしたので下手くそですがお付き合いください🤭


【1】リスペクトを口に出す文化の確立

1- 開業準備期間での決定的な失敗

開業は2021年10月1日。私たちが金沢入りしたのは同年8月19日。ご近所のLINNAS kanazawaさんに2ヶ月間泊まり込みでお世話になりました。

私自身初めてのホテル立ち上げ、社内初のラグジュアリーライン。とにかく毎日「終わらない〜!」と叫んでいました。
ほとんど夜中まで作業しており普段よりお給料が多かったことを記憶しています。どんだけ残業したんだ。笑
でも金沢という縁もゆかりもない土地の魅力を少しずつ味わいながら、毎日朝から晩までメンバーと顔を合わせ、時にはみんなで夕飯を作り、迫り来る開業日にヒリヒリしながらがむしゃらに過ごしたあの期間は、記憶こそないけれど1番楽しかったかもしれない。(開業してからじゃ絶対できないけど、香林居のラウンジでみんなでマクドを食べたこともいい思い出🍟)

一方で、私にはマネジメント経験がない
これが香林居が始まる前1番のコンプレックスでした。
新卒から4年半ホテルニューオータニで一通りのことは学び鍛えられましたので、プレイヤーとしては十分に動ける自信がありました。しかし問題は私が部下(この呼び方には違和感があるのですが)を持ったことがなかったこと。支配人の笠井、副支配人の篠原はそれぞれ他の拠点で支配人をしていましたが、私だけ何もないことが怖かったんです。

まだベッドが搬入される前のお部屋でホスピタリティについてのmtg(翔子さんInstagramより引用)

それでもオープニングとして採用したアルバイト約10名は間違いなく入社してくるし、社員を含め価格に合ったホスピタリティの体験設計を落とし込まなきゃだしで勝手に焦った結果、準備期間中に一度メンバーから「自分達らしい接客ができていない感じがして苦しい」と言われてしまいました。敬語や所作を含めた指導もしていく中で、この価格帯ならこうでなくてはいけない、という凝り固まった考え方をメンバーに押し付けてしまっていたのです。高価格帯での接客をしたことがないメンバーばかりだからとみんなを信頼できていなかったことを心から反省しました。実際結構へこんだ。

今思えば、社員やアルバイトのメンバーの気持ちから絶対に目を離さず、正面から向き合おうと心に決めたのはこの時だったかもしれません。
実績もマネジメント経験もない私ができることは本当にそれだけだったから。

2-メンバーの得意な部分に目を向けとにかく感謝を述べた

上記の失敗があってから、私の中での優先順位は以下へ変化したように思います。

自分がやりたい / やらなくてはいけない接客

今いるメンバーでできる最高の接客は何か

もちろんある程度高価格帯のホテルですから、それに見合っていないサービスは許されません。その最低限の部分は底上げしつつ、まずはみんなのことを知ろうとしました。アルバイト全員と1on1をしたり、プライベートで社員と飲みに行ったり。そうすると必然的にコミュニケシーション量が増えていきました。私とはもちろんですが、メンバー同士も。たわいもない話をしたり、年の離れたアルバイトにはこちらから質問を投げかけたり。これは意識的にやってたことですが、何か質問をされたり話しかけられたら、私が何をやってても手を止めてその子の方に体ごと向いて聞く、など。
それから、仕事のことでフィードバックをする際は直すべき部分とは別に必ず1つは良いところを伝えていました。どんな感じだったのかなと当時のtweetを遡ってみたところ、

(全然意識的にやってないな笑 感情的に褒めているw)

文章が得意なスタッフにはインスタの文章作成を、海外経験のあるスタッフには英訳、情熱のあるスタッフには育成、などと適材適所に役割を振りました。またそれをしっかりとやってくれるスタッフばかりだったし、私にはない才能にみんな溢れていたので、本当にありがたかった&感謝を述べまくっていた。今思えばそれは間違いなく良い発信だったと思う。

清掃さんがグラスを割った際のLINEのやり取り

例えばこの時、グラスの心配より先に清掃さんに怪我がないかをメンバーが確認しています。この流れは1度だけではなく、もちろん私がそうしろと言ったわけでもありません。この根底にはいつも清掃をしてくれてありがとうというリスペクトがある。だからこそこのような行動ができるのだという表れかなと思います。

そしてある時は寡黙な印象のアルバイトから「香林居ではみんなめっちゃ『ありがとう』って言いますよね」って言われてハッとした。元々素直なスタッフが多かったのが大きいけれど、心の中ではしっかりガッツポーズしてました。

また、気休めではありますが、Thanksカードという制度をスタッフの更衣室に作ったりもしました。

社員toアルバイトというよりもアルバイト間でのコミュニケーション活性化を狙いました

ところで私はアルバイトや後輩のことを部下だと認識したことはありません。

ぶ‐か【部下】
ある人の下に属し、その命令・指示を受けて行動する人。配下。てした。

広辞苑 ページ 17017

もちろん指示はしますが、それ以上で応えてくれる人が多かったからです。配下にいるというより、一緒に並んでる感覚。対話をすること、良いところを伝え合うことでそのメンバーが香林居に居場所を感じることができた。自分を受け入れてくれる環境があると思えた(=心理的安全性の確保)。このような環境確保を地道に自分から示し立ち回ったことが今思えば良いチームへの道筋だったと思います。

slackのこのスタンプ作ったの実は私🤭


【2】人のために動くことが当たり前という文化の確立

1- 自分たちが大切にしていることを言葉にした

 このように自分の居場所が見つかり始めると、今度は自分のためではなく人のために動けるようになってきます。

開業当初、アルバイトたちを集めたmtgの様子

開業当初、アルバイトを集めて香林居の住人としてカスタマージャーニーを行ったことも少なからず影響があったと思う。自分たちがゲストに何を届けたいのかをひとつの言葉にするというところまでやりました。

その時決まった言葉はスタッフからしか見えない部分に。

ただし新しいスタッフが入ってきても、これを決して押し付けはしません。あくまでも私たちスタッフはこれを大切にしているということを伝えるのみです。言い方は少々悪いですが、仲間をリスペクトし伝える文化が育っていればそれを心地悪いと感じるスタッフは自ら離れていくように感じます。


2- マネージャークラスが一番動いた

そんなの当たり前だろ!って感じですよね。
でも結局これが一番大切でした(あくまでも現在までのステージにおいては)。私たちが動かないともちろん他の社員やアルバイトも動けません。

清掃人員が病欠した際、真っ先に連絡をくれたのは支配人と副支配人

私が出張でお盆の忙しい時期に香林居に居られなかった時もそう。
やることいっぱいあるはずなのに、一番頑張っちゃう。その姿を見て他のメンバーも鼓舞されるのだと思います。
もちろん今後はマネージャー自らが動かなくても良い組織づくりをしていくのが望ましいとはおもっています。ただしそれはもー少しだけ先かな。

3- 結果が伴った時に成功体験となる

そうしていくうちに、仲間同士で業務を手伝い合うことは当たり前になっていき、お互いへのリスペクトが高まる。
そして次第に内側だけでなく、外側(ゲスト)へベクトルが向いていきます。

すると、口コミや館内アンケートで名指しでゲストから褒められるという、ホテリエとしてはかなり嬉しい結果を得ることにつながります。
その時は、LINEやslackなどみんなが見られる場所に共有し褒め晒しあげます。笑 もちろん直接でも。
自分の行動が、ゲストの満足度の一部になったという成功体験は何にも変え難いですよね。

まとめ

尊敬する仲間から褒められたり、感謝を伝えられたら、その言葉に説得力がでます。そしてその言葉をもらったメンバーの活力になる。上記【1】と【2】は堂々巡りをして磨かれていくと思っています。

おそらく私が残したものは再現性を持つことは簡単ではありません。これは自分を棚に上げているのではなく、サービス設計やチームビルディングというものは定量的に測ることが難しいからです。もちろん「口コミの点数が◯点上がった」「◯人のスタッフを育て上げた」というように無理やり数字化することはできますが、正解がないのです。チームは生き物だから。今回は本当にたまたま、この方法がこのメンバにハマっただけだとも思います。

正解がないからこそ模索し、そのチームならではの文化が確立できた時の結束は強いものになるのです。
そしてまだまだ成長途中!これからより素敵なチームになってお客様に最高の体験を届けてね。


余談: 今後について

香林居を去り、現在は弊社の施設である産後ケアリゾートHOTEL CAFUNEの支配人に就任しました(7/1付)。
今でも時々香林居の仲間たちが恋しくなることが正直あります。私なんかができるのかと。

でもここでのゲストは新生児のあかちゃんとそのご家族。そして一緒に働く仲間は助産師、保育士、ベビーシッター。香林居でのチームづくりとは全く違うアプローチが必要です。異なる分野の人たちとまた最高のチームを作れるように少しずつ進んでいきます!


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