大白小蟹『うみべのストーブ 大白小蟹短編集』について
面白かった。こないだアキ・カウリスマキの映画を観て、「心がじわじわと温められる」といった感想を書いたのだが、この漫画もそんな感じだった。急激に心が揺さぶられるわけではないが、温もりがずっと心に残るような、そんな感じだった。
自分の漫画に対する浅い知識と読書経験と照らし合わせると、この漫画はなんとなくよしもとよしともの漫画に近い雰囲気を感じた。淡々とした絵柄がそう感じさせるのかも知れない。
しかし、よしもとよしともの漫画って、俺が読んだものだと結構グロかったりぶっ飛んでたりする表現があったと記憶してるんだけど、この大白小蟹の漫画はそうではないと思う(少なくとも本書は)。あくまで、読者にも似たような経験があるんじゃないかという、現実味のある内容だ。そんな内容の中で、登場人物が何を感じ、何を思ったかというような描写が絶妙で上手だなと思った。大袈裟な表現ではなく、「ああ、確かにそうよな」と共感させるような表現になっているというか。これって結構難しいことだと思う。
俺が特にいいなと思った話は、学生時代に小説を書いてたけど、今は会社員として働いている人物が主人公の話。その人物の彼氏が、もう一度小説を書いたらいいじゃないかと話すシーンがあるんだけど、そこがとてもいい。これは、俺自身も公務員として働きながら暇を見て音楽を作ったり文章を書いたりしているので、共感できるところがあったのだろうと思う。
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