クリエイティブ・カルテができるまで③:ダンスを観て、カルテを書く。ほっちのロッヂのメンバのアプローチとは? #交換留藝 #クリエイティブカルテ
2021年7月から9月まで、ほっちのロッヂの滞在制作企画「交換留藝」の一環で小林三悠(こばやし・みゆき)さんと共に歩んできた本企画。3回にわたる連載で、あらためてその背景とプロセスを振り返ってみています。
▶前回の連載はこちらから
クリエイティブ・カルテとは?なぜ診療所でダンスの創作を?については、前回までの記事をお読みください。
1、「踊らない」選択から、「踊らなくてもいいけど、なんだか踊ってる」場づくりへ。音をからだで感じるワークショップ、できました。
滞在開始直後に踊らない選択をして、ほとんど身体を動かさずに過ごした夏の日々。ロッヂのメンバに助けられながら自分を見つめるうちに、みゆきさんの辿り着いたひとつの境地が「音舞寺」ワークショップでした。
滞在開始から2ヶ月半を経て9月に行われたワークショップでは、言葉はほとんど発しません。あえて踊ろうともしません。ひたすら呼吸を整えて、自分の身体がどのように動いて、どのように空間に反応しているのか、感覚を通してコミュニケーションしていきます。
いつの間にかみゆきさんは憑依されたようにゆっくり動き始め、瞑想するお客さんの間を行ったり来たり。
プレ公演1日目では、舞台を日常と切り離し、演出された非日常体験が繰り広げられました。いっぽう音舞寺では、日常の延長の中に感覚を研ぎ澄まし、思うままに感じ、動ける環境づくりに注力しました。
踊ろうとしていない人も、踊っているように見える。踊っている人が、踊っているように見えない。いつの間にか「踊り手」と「観客」の境界はあいまいになり、波のようにお互いの存在を感じ合う、あったようでなかったような、不思議な空間―。
ワークショップ参加者の方からは、自分ごとに集中する時間を持てたという声が多数。目を開けた時、ワークショップが始まる前に時に見ていた景色がまったく違うように見えたという人もいらっしゃいました。
さてしかし、なぜこんなに違うパフォーマンスが引き出されたのか。滞在の2か月の間に、どんな対話と変化があったのか。気になりませんか?ほっちのロッヂのメンバが作成したカルテと対話の記録から、創作の軌跡をぜひ辿ってみて下さい。
2、カルテを読む前に:カルテを書くのに使う「SOAPメソッド」とは?
実際のカルテを見る前に、ほっちのロッヂのメンバがどうやってカルテを書いているかについておさらいしておきましょう。たいていの病院のカルテでは、「SOAPメソッド」という整理の仕方が原則となっているそうで、ほっちのロッヂの診療所・訪問看護ステーションでも、例にもれずSOAPメソッドを使っています。
「S=Subject(主訴)」
コミュニケーションを通して得られた、話し手自身の訴え。話し手が何を考えているか、何を言っているか、ということをそのまま書き出すことが多い。全体の会話から聞き手が何を書き出すかによって、聞き手が何を大事と思っているか、どこを重点的にとらえたかが見えてくるかもしれません。
「O=Obejct(客観的情報)」
状況・状態の客観的な描写。血圧、体温、食事の量など、数値で表される指標や、身体の状態を表す言い回しが含まれる。
「A=Assessment(評価)」
「S」「O」を総合的に見て下す評価、診断。根拠を挙げて、確からしいと思われる診断名や疑いについて書く。
「P=Plan(計画・方針)」
「A」を踏まえ、どういう治療やサポートをするかについての方針。特にほっちのロッヂでは、その人の状態だけでなく、趣味や特技、願いなども加味して申し送りされることが多い。
3、できあがったカルテは、まるで即興セッションの記録のつらなり
「まるで皆とセッションしてるようでしたよ」一連のカルテ作成を終え、みゆきさんが漏らした一言。まずはとにかく、できあがったカルテを読んでみてください!
※見づらい場合は、三点マークから全画面で表示してください。
音舞寺は今後も折にふれて開催していく予定です。ぜひご注目くださいね。
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あの人に届くと、もしかするといいかもしれない、そんなことが頭に浮かんだならば、ぜひ教えて差し上げてください。
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ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
書き手:唐川恵美子(エミリー)
デザイン:西川理奈(企画タイトルデザイン)、大隅康平(音舞寺タイトルイラスト)
写真:清水朝子(2021年9月より交換留藝にて滞在中!)
会場協力:宝珠院
企画協力:ほっちのロッヂのメンバ
文責:唐川
(2021.11.3)