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「子どもたちの動くこころのすぐそばで」家庭医の私から町の子どもたちへ、言葉の届かせ方

2024年4月、ほっちのロッヂ(医療法人オレンジ)に入ってあっという間に過ぎていく中で、私どんな言葉を届けられてきただろう?と、こっきー(藤田)が話し手、ひなこ(勝木)が聴き手となり、町の子どもたちとの関わりを振り返りました。


これまで行ってきたこども達との活動について


ひなこ)これまで行ってきたこども達との活動について教えてください。

こっきー)2024年4月からほっちのロッヂに来て、この1年だけでも様々な場面で子どもたちと出会ってきましたが、イベントとして数えられるものとしては大きくは3つありました。

1つ目はほっちのロッヂが園医として関わっている保育園で医師の仕事について3〜5歳のクラスでお話をしてほしいという依頼をいただきました。医師の仕事やほっちのロッヂの紹介をした上で、体調が悪い時だけではなく、「元気な時のことも知りたい、好きなことにのめり込むみんなを応援したい」というメッセージを伝えてきました。

ほっちのロッヂの近くにある保育園でのお話会の様子

2つ目は学校法人 軽井沢風越学園(以下 風越学園)の5,6年生を対象に"こころとからだの時間"の中で予防接種をテーマに授業を行いました。学校医として養護教諭の先生と定期的な話し合いの機会を設けている中で出てきたテーマです。軽井沢は他の地域に比べて予防接種の接種率が低く、打たないという意見にも出会う中でも、子ども達が自ら考えて決断できるようになるためのきっかけになればとの思いでお話しをしました。

風越学園での授業後、子どもたちとの対話

3つ目は、同じく園医を務めるポピンズナーサリースクール軽井沢風越(保育園)での4歳、5歳児クラスの健診での実践です。健診で単に身体やこころの成長を確認するだけではなく、対話をきっかけに自分の身体のことに関心を持ったり、自分の強みを自覚できるような関わりをしていきたいと考えています。事前に保育園との打ち合わせを重ねる中でプライベートパーツについても取り扱って、その延長線上に自分の身体の好きなところや疑問について対話を行うような機会を設けました。

子どもたちへ言葉を届けるときに意識していること

ひなこ)健診の中でプライベートパーツについての伝え方は難しいそうですし、年齢層も幅広いなと聞いてて思ったのですが、子どもたちへ言葉を届けるときに、意識していることはありますか?

こっきー)私が以前所属していた診療所でも、生まれたばかりの赤ちゃんとお母さんのためのサロン活動を行っていましたが、子どもたち一人一人との対話の中でお互いを知り合うような機会って意外となかったなという気づきがありました。
健診は子どもたち、集団に対してのアプローチであるという側面ももちろんあるんだけど、その人が何を大事にしてるか、何が好きで、どんなことに好奇心を持っているのかというところに、ほっちのロッヂみんなの意識も向いてるし、そのことを話せる子どもも多い。

特に学校医として関わっている風越学園は学校の方針も相まって、子どもたちが自分のことを表現することが上手なので、私も対話の中で面白さを感じています。子どもたちの表現の多様さに気づいてからは、私も質問の仕方をざっくりではなくて、何が面白いと思ってるんだろうとか、質問をしたときにどんな言葉が返ってくるのかなっていうのによりフォーカスするようになったなっていうのがあります。
予防接種をテーマにした授業もありましたが、軽井沢いう土地柄もあって皆が等しく予防接種打っているというわけではなく親御さんの考え方があって打っていない子どももいる中で、難しいテーマでした。事前準備をする過程では、11歳、12歳のみんなに情報をどのようにして伝えるかということについても皆で検討を重ねました。

自分のことを主体的に自分で決められることに繋げたいという思いがあったので、あまり一方的にならずに、みんなの顔を見ながらどれぐらい理解してくれてるのかとか、反応はどうかな?と、手探りでやってきました。

ひなこ)私も一緒に行かせてもらったときに、こっきーさんが話しながら子どもの反応を見て話を変えてるなっていう印象を受けました。そこはすごく意識してるのかなっていうことが伝わりました。

こっきー)そうですね。予防接種でいうと小学校6年生はHPVワクチンの定期接種開始のタイミングでもあって、がんについても授業の中で触れたのですが、みんな反応がぐっと変わりました。中には周りの大人ががんになったということも経験している子もいたみたいで、予防接種は命にも関わることなんだなっていうことをそれぞれの経験と重ねて感じてくれていました。

質問としても「他にも予防できるがんってあるんですか?」「女性のがんって他にもありますか?」と核心を突くような質問もありました。みんなの真っ直ぐな眼差しを目の前にして、彼らにとって初めての情報を届けるということの責任のようなものも感じました。初めて聞くことって、とても印象に残りやすいものだと思うので。

自分のことを自分で決めるために


一緒に授業に参加してくれた学校の先生から、「予防接種を打たないという選択肢も手渡すのだとしたら、打たない側の考え方も盛り込むべきなんじゃないか」という意見もいただきました。
確かにそうだなと思いつつも、打たない人の立場について私がどのくらい理解できてるのか、それを子どもたちに伝えるときにどのように自分のメッセージとして伝えられるのかということについてとても悩んで、ほっちのロッヂのメンバーとも話し合いました。
2日目にも同じ授業を行ったのですが、話す内容について再検討しました。

風越学園での授業後の風景(1日目から2日目へ向けてのミーティングの様子)

全体の大きな流れは変えなかったのですが、予防接種を打たない人もいるけど、私たちほっちのロッヂとしてはそのことが良い悪いって断定するのではなくて、そのことについていつでも話したいと思っているというスタンスを強調しました。
授業後に将来の自分にメッセージを書いてもらうと「打つのはやっぱ怖いと思う。」「注射は大っ嫌いだけど」といった前置きがあった上で、「自分で決めていい年齢にはなっているし」「でもやっぱりわからないから調べてみよう。」「その時の注射が痛くても、命は大事だな。」という葛藤が2日目のメッセージからは伺えました。
大人がどのようなスタンスで話しをするかで、子どもたちが考えていくための基礎になる部分や感じ方にも変化が起きるという学びもありました。この話をきっかけに自分たちでさらに調べてもらえるように、信頼できる情報源を提示することも意識しました。

ひなこ)今の話を聞いて感じたのは、目の前に来た大人がどのような姿勢、本気で伝えようとしてるのかっていうことって結構子どもたちは見ているのかなと思いました。打たない側の意見についても考えて、葛藤しながら1日目から2日目で伝え方を変えたという話もありましたが、そういう熱量が伝わるんじゃないかなと聞いてて思いました。

こっきー)今回の準備段階で学校の先生や、保育園の先生と対話を重ねていく中で、自分の考えも整理されたり、思考を巡らせる中で、当日子供たちにどう伝えればいいのかなという不安がありながらも、伝えたいっていう気持ちが高まってくるのは感じていました。
あとは、学校や保育園との関係性もこういう機会に深まっていくなと感じています。事前準備での対話は普段からお互いが大切にしていることを共有し合う場に自然となっていました。こうやって地域の健康に一緒に関わっていく仲間を増やしていくことで、子どもとの関わりしろをさらに広げていきたいと思っています。
もちろん子どもたち個人の琴線に触れる瞬間の目の輝きを感じるようなその子との関係性もあって、どちらとも大事だなと感じています。

今後、子どもたちとの関わりの中で、力を入れて進んでいきたいところ

ひなこ)ありがとうございます。今後は子どもたちとの関わりの中でどんなところに力を入れて、進んでいきたいと思っていますか?

こっきー)ほっちのロッヂは様々な形で子ども達が普段から来るんですよね。予防接種、風邪ひいてくる子、土曜自習室、みんなのアトリエ、医療型短期入所や放課後等デイサービスなど通いの場。子どもが出入りする環境にせっかくいるので、何となく今日も子ども達きているなだけではなくて、今日はこの子がこれに興味持って活動しているなみたいなことをもっと知っていきたいと思っています。
ほっちのロッヂにきてそろそろ1年で、顔がわかってきている子どもたちもいるので、彼らと全力で向き合う中で、私もみんなの心動くことを応援できる一人でありたいし、私自身が一生懸命な姿も見せていきたいと思います。

ひなこ)こっきーさんらしくてなるほどと思いました。ありがとうございました!

最後までお読みくださり、ありがとうございます。

あの人に届くと、もしかするといいかもしれない、そんなことが頭に浮かんだならば、ぜひ教えて差し上げてください。

ほっちのロッヂにご興味のある方は、よければ、ご友人に直接話をしてくださったり、このnote記事に「スキ」、ツイッターなどSNSでシェアしてくださると、嬉しいです。

ほっちのロッヂ
info@hotch-l.com
書き手:藤田耕己(こっきー)、勝木日南子(ひなこ)
文責:藤岡聡子(さとこ)