【建築のこと、4】初めてさわる、ほっちのロッヂのカラマツ林。植物たちを知る・守る・創る、3日間を終えて
2019年7月13日(土)から3日間、ほっちのロッヂのカラマツ林で、ある取り組みを行いました。
ほっちのロッヂのカラマツ林は、約200種類もの植物で覆われています。
ほとんどが在来種。外来植物はわずかで、軽井沢らしい林なのです。9月からの建設工事に先だち、表面の植物(植生)をとって運び出し保全してランドスケープに活かそうと、ほっちのロッヂ、ランドスケープを担当してくださっている、プランタゴ・田瀬さんが企画してくださいました。
風景をつくりだす人、ランドスケープデザイナー
田瀬理夫さんは、この本で丸ごと紹介されています。
ランドスケープ、については、別の本の中にも詳しく出ているものがわかりやすかったので、引用します。
もちろん一概に言えないことは承知のうえで経験的に述べると、「さすがランドスケープの人!」と歓迎される「知恵の提供」は多くの場合、物事を異なるスケールで眺めることによって対象を複数の文脈で理解し直すこと、物事をつねにそれを成立させているより広域の事情の徴候として捉えて、その関係性に目を向けることというようなものだ。前者を「地理学的な視点」、後者を「生態学的な視点」と言っていいだろう。
端的には、例えばなんらかの施設の建築が検討されている対象地において、そこで議論されている範囲よりもさらに広域の図面を持ち出して、その土地の成り立ちや環境を説き始めるというような役回りである。
つまりスケールを変えて行き来する視点をもっているということだ。もちろん、そのような視点をもつことは個人の資質にもよるだろうし、建築家や都市計画家、土木デザイナーやエンジニアがそのような視点をもっていないと言いたいわけではない。ランドスケープ・アーキテクトは、専門家としてそのような役割が、自他ともに期待されているということである。ここで言うランドスケープ・アーキテクトは、専門家と体的、空間的なものだけではない。過去からの歴史や未来を構想する視点であったり、物事を把握する思考の枠組みの幅であったりもする。
(思考としてのランドスケープ 地上学への誘い 歩くこと、見つけること、育てること 石川初著(2018 LIXIL出版))
ほっちのロッヂは、建物、そして建物に応答する周辺環境もまた大切なエレメント、要素です。
環境を数十年に渡って考えてゆく視点を持ったランドスケープデザイナーの田瀬さんリードの元、植生を生かすワークショップの様子を続けていきます。
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プログラム 『カラマツ林床の表層植生の保全活用』
植物の個性を生かす創造的な管理作業に参加しよう
表層植生をスキとり利用することは、浜名湖畔の「地球のたまご」計画で十分な実績があると、田瀬さんは紹介してくれました。
「地球のたまご」とは、静岡県にあるOMソーラー株式会社さんの社屋で、もともと養鰻場の跡地を整備してできた土地に位置しています。「浜名湖の湖岸を再生し、水源となる」を理想に、長期的な視点で水質浄化に取り組んでいる場所とのことです。(リンクより引用)
この「地球のたまご」では79種類確認された表層植生を8月にスキとり数キロ運搬し仮植(かしょく・植物を定植するまでの間、かりにうえること。)し、1年後に定植(ていしょく・植物を苗床から畑に移して本式に植えること。)しました。
スキとり、運搬、仮植、養生、定植の一連の作業は、当時の OM ソーラー協会の全職員で行いました。
15年を経て、浜名湖畔の環境修復を目指した水源林を構成する植生となっています。(田瀬さんより)
田瀬さんを始め、ほっちのロッヂの建築チーム、町内外の方や、大学生、施工会社の方など様々な方が参加してくださいました。
最初はオリエンテーション。翠嶺舍植物調査事務所の荒井 浩司さんによる、スキとる対象の植物や、抜く予定の種類の植物などを、敷地を回りながら話があります。
このサークルになっている外側は、外来種を選び取り除草したもの。真ん中には、草刈機で刈った細かい草を積み上げます。バイオネスト、というそう。(3日目には、これが大きく2つになりました。)
草取りや草を刈った後、草をそのままにせず、1つのところへ必ずまとめて置くこと。そうしないと、刈った後にいい草が生えないんだそうです。
それぞれに敷地内に散らばり、こうした札を目印にて、スコップを垂直に踏み込み、スキとります。
切り込んだ表層の植生を表土と共に、スコップを水平にしてスキとり、スキとったもの2つをカゴトレーに入れて運び出し、所定の場所に集めます。
東京、埼玉、福井、軽井沢町内や佐久市から、ほっちのロッヂャーのみなさんもたくさん参加してくださいました!
ほっちのロッヂの敷地内にて管理をして、来たるべきタイミングで、この植生が必要な場所へ移し替える予定です。
「ほっちのロッヂは、もう木を切ったときから、”始まっている”んですよ」
ちょうど1日目の終わりごろ、私藤岡が田瀬さんとお話ししたことを記しておきます。
田瀬さん:「この、植生をスキとる作業だったり、選択除草(この場合、在来種を残し、外来種を選び取り除草すること。詳しくは、田瀬さんが行なっている神山町での取り組みをどうぞ。)って、関わる人にも良いみたいでね。
普段使ってるものや動作を使わないで、普段使っていないものや動作を、使うっていう。
それでね、この作業が終わってふと辺りを見渡すと、風景が確かに変わっているわけ。」
藤岡:「それって、すごく気持ちいいですね。」
田瀬さん:「そうそう。それでね。こうした作業にも積極的に参加してくれたりする。ほら、今日もだいぶ進んだんだけど、やっぱりね、なんどもやってる人が来てくれてるから、早いね。」
藤岡:「・・・何だか、ほっちのロッヂが始まる前から、今日、確かに始まったなあって、思います。」
田瀬さん:「いや、それはね、もうとっくに始まってるよ。春前に、20数本、伐採したでしょう。(伐採後の木は再利用するため、製材所に一部保管しています) もう、(ほっちのロッヂは)、木を切った時から、”始まっている”んですよ。」
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プログラム 『カラマツ林床の表層植生の保全活用』 植物の個性を生かす創造的な管理作業に参加しよう
ゲストインストラクター:荒井 浩司さん(翠嶺舍植物調査事務所)
協力:富士植木/小島和夫さん、ゴバイミドリ/宮田生美さん
主催 :プランタゴ 田瀬理夫さん
日時:2019年7月13日14日15日 の 3 日間
場所:ほっちのロッヂ敷地にて
参加人数:3日間でお子さん合わせてのべ約50名ほど
左から、建築家の安宅さん、ランドスケープデザイナ田瀬さん、藤岡、建築家池田さん。ほっちのロッヂ建築チームで。