不思議な老人からの教え その⑥ まずは、種銭を貯めろ!(前編) 金持ちになる方法は、3通りある。
山根さんと、家の中で顔を合わせても、お互い全く話さないことも少なくありませんでした。
そんなある日、朝から雨が降っていて何処にも出かけずにリビングでコーヒーを飲んでいたら、山根さんがリビングに焼酎を持ってきて
何も言わずにソファに座りました。
日本の焼酎です。誰かからもらったのでしょうか。
山根さんはグラスに焼酎を注いで、ストレートでやってます。
普通、この状況だと
「いっぱい飲むか?」
なんて聞いてくるんじゃ無いかな、と期待するでしょう?
でも、この老人の面白いところは、飲み物、食べ物、その他、一切分け与えてくれません。
子供の頃から僕は、親からよく言われていました。
人から恵んでもらわずに、自力でなんとかしなさい。人に迷惑をかけないようにしなさい。人を羨ましがる気持ちは持ってはいけない。
と。
なので、彼が一人で焼酎を飲んでいたって、「ちょっと一杯飲ませてください!」
なんて気は、全く起こらないんです。
それも、彼と馬が合っていたところの一つかもしれません。
リビングの奥の全面ガラスから外を見ても、いつもの綺麗な景色が見えません。昼間だっていうのに、黒雲が覆って、嵐のようです。
彼は焼酎をチビリチビリと飲みながら、僕に話しかけてきました。
「今、金はいくら持ってるの?」
といきなり言うんです。
え?何? と思いました。
山根さんは、結構、ズケズケと言葉を出してくる人でした。
その頃の僕の貯金は、はっきりは覚えていませんが、1万ドル(日本円で150万円)有るか無いか?だったような記憶があります。
それを言うと、山根さんは
「金持ちになりたかったら、まずは種銭を貯めるんだな。」
とボソボソっと言うんです。
僕は、種銭っていう言葉を初めて聞きました。
そこで彼に聞き返したんです。「種銭ってなんですか?」と。
山根さんはすぐに、
「種銭っていうのは、商売を始めるのに必ず必要な金だよ。商売をスタートする時の金。その額は決まっていない。が、おおよそ10万ドルくらいあれば
どんな職種もスタートできる。
もちろん、今持っている1万ドルでもスタートできるが、運転資金や自分の生活費などを考えると、1万じゃ寂しい。」
そうか、なるほど。
種銭とは、ビジネスの初めの資本金みたいな物なんだな。と、半分理解しました。確かに、10万ドルあれば、ワイキキの小さなお弁当屋さんを買い取って弁当屋を始めることもできるし、バンを買ってツアー会社を始めることもできる。
そんな事を想像していると、また、山根さんは、
「種銭を貯めて金持ちになるには、3通りの方法がある。」
一つは、人から借りる
二つ目は、女から引っ張る
三つ目は、自力で貯める。
「人から借りるというのは、銀行からの借入も含み、要するに借用書を書いて他人から借金をして、その金を元に事業を立ち上げるということ。
これは、あとあと必ず借りた金を返す必要がある。踏み倒せると思っていても必ず返す事。必ず返すことに意味がある。それによって自分のステージも上がり、信用も得ることができる。」
「女から引っ張るというのは、多くは、水商売の女を自分のものにして、女の恋愛感情を利用して金をもらい続ける。こういった金を女に返金したという話は一度も聞いたことがないので、ほぼ女の金を横取りするようなもの。夜の世界でそういう事例が多い。
特にホストは、女から金をむしり取るためにやっている職業なので、ホスト出身で事業を立ち上げたという男も少なくない。
大金持ちになったとしても、自己顕示欲が消えず、品格が備わらない。ルイビトンの服を着て、ベントレーに乗っても、本質は低次元のホストのまま。
初めの種銭は、女から、かすめ取った金なので、いくら事業が成功したとしても、どれだけ金持ちになったとしても、自分のステージは底辺から一生上がれることはない。」
うわー、山根さん
結構エグいこと言うんだなー、、と思いながら聞いていると、
「あとは、自力で貯めることだな。今やっているゴルフ屋の給料を貯めて10万ドルにするって言ったって、それはそれは大変なことだと思うし、10年いや20年くらいかかるんじゃないか?
しかし、それをやり遂げて、人に迷惑をかけずに、自力で貯めた金で商売を成功させたなら、とても強い精神力が備わり、品格を身につけ、自信に溢れた輝くステージに立てるはずだ。
ただ気をつけないといけない事がある。金と時間は比例もすれば反比例することもあると言う特質を持っている。この金の特質を理解して動かなければ危険なことになる。
時間をかければ、金は貯まるが、大切な人生の時間=年齢を犠牲にすることになる。」
「それ以外に金持ちになる方法は、宝くじやカジノで一発当てるとか、元々が大金持ちの家に生まれたボンボンだということもあり得るが、そういう金は有り難みが無いため、金銭感覚、価値観がずれて、散財してしまう傾向にある。なので、それは考えないで、金持ちになりたかったら
さっき話した三つの方法のどれかを決めて、まずは種銭を貯めてみろ。」
こんな事を聞くのは初めてでした。学校でも習ったことはなし、うちの両親はサラリーマンで、商売のことなんか、全くわかってないから、きっと種銭なんていう言葉自体知らないでしょう。
この雨の日の会話は、すごく僕の心に影響を受けました。その話を聞いた瞬間、おへその下あたり、きっと丹田だと思いますが、そこが、カーッと熱くなったのを覚えています。
なにか人間が決死の覚悟というんでしょうか、そういう気構えを持った瞬間ってこうなるんだな、と初めて感じた感覚でした。
借りるあてもなければ、ホストにもなれないので、がむしゃらにお金を貯めるしかない!と、決心しました。
その日から僕は人が変わったように、金を貯め始めることになります。
いつも、スーパーで食材を買って自炊するのですが、豪勢なおかずは買わず
パンと、納豆と味噌と米しか買わないようにしました。
納豆も、日本製は高いので、ハワイで作っているALOHA納豆に変えました。
好きなポテトチップスもキッパリ辞めましたし、ビールやワインも断ちました。
コーヒーも辞めました。
ミネラルウオーターも買わないようにして、水道水を飲むようにしました。
(ハワイは水道水が問題なく飲める)
翌日からは、朝は何もつけないパンと水。昼は安いLLドライブインのローカル弁当、夜は米を炊いて、ごはんに納豆と味噌を乗せて、お湯を沸かして掛けると、納豆ご飯+お味噌汁 みたいな奇妙な夕食が出来上がります。
こんな節約生活を何ヶ月か続けましたが、いくら銀行のステートメントを見てもお金はなかなか増えません。
10万ドルなんて本当に貯まるのだろうか?という不安と疑いが心の中に渦巻いて。
なんか身も心もボロボロになって、ちっとも楽しく無いハワイ生活を送っている自分がいました。
涙が出そうになって、自分に負けそうになっていたその頃、ちょうどインターネットが普及し出して、何気なくYAHOO JAPANを覗いていた時
ヤフーオークションというボタンに目が止まりました。
クリックしてみると、不用品を売りたし、みたいなページの作りでした。
おー!これは何かできそうだ!と、僕は、閃きました。
と思った瞬間、お腹が空いてきて、カネオヘの街のベトナム料理屋に行って
安いPhoを腹一杯食べて元気をつけました。
何か、面白い事ができそうな、そんな予感がしました。
ーー 続く ーーー
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