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不思議な老人からの教え その② 自分の時給は、その都度変えろ

カネオヘ生活が始まりました。
ワイキキ住みで、会社に通勤していた時とは違って、1時間かかります。
朝出勤時はまだ暗くて、とっても眠いのですが、頑張ってシャワーを浴びてワイキキまで通いました。
カネオヘは、ワイキキから見ると、ちょうどオアフ島の反対側にある街です。ワイキキまで通う場合は、コオラウ山脈を越えなくてはいけません。
毎日毎日、山越えをして通勤です。
今考えると、かなりガソリン代を使っていたと思うのですが、思い返してみましたが、「ガソリン代がかかるなあ」、と感じていた記憶がありません。
そこまでガソリンが高くなかったからでしょうか。
記憶が正しければ、ガソリンが空になった時点で、満タンに給油をするとちょうど20ドルでした。
まず、ガソリンスタンドに入ります。ポンプの前に車を停めて$20札をスタンドの店員さんに渡してから、給油し、ちょうど$20入れた時に、カチッとポンプが止まる仕組みになっています。
車に乗り込み、ガソリンメーターを見ると、うまいことちょうど満タン位なりました。

僕が勤めていたゴルフツアー会社の時給は、うーん、いくらだったかな。おそらく8ドルくらいだったような気がします。
1日8時間働いて、64ドル。
週5日働いて320ドル。

アメリカの会社は、2週間に一回給料を支払ってくれます。
このゴルフツアー会社もそうでした。
源泉徴収をされた上での給料が、小切手で渡されます。
たまにお客さんからチップももらえました。
また、お客さんが、追加でゴルフ場を予約するようにオーダーを取ると
会社からコミッションがもらえて給料に加算されていました。
あの頃にしては、まずまずのお給料だったように記憶しています。

山根さんは、大きな屋敷の中のマスターベッドルームに一人で住んでいました。僕の部屋は道路沿い。山根さんの部屋は奥の左隅。
大きな家で、男の二人暮らしです。

僕の車は、安物なので、外に停めていましたが、山根さんの車は全てガレージに入れています。
全部で6台の車を持っていました。すごい!
まずは、一番出番の多い錆びたVW。それから古臭いシェビーのピックアップトラック。
そしてポルシェ928が2台、あとはガルウイングのメルセデスベンツ、BMWのMパワーです。
不思議だったのは、ポルシェ928です。全く同じ車を2台購入してガレージに置いていると言うんです。
こんな人は初めてみました。

「車は、資産か道具か?に分けて所有している」と言う事でした。その考えを持たずに車を買うと、結局は損をすると言う独特の考えです。
まさに今流行りの残価クレジットとかカーリースとかでしょう。
お金が無いのに、かっこいい車に乗りたいとか、皆が乗っている車と同じ車に乗りたいなどと考えて、無理をして車を購入している人。結局はお金が減っていくだけかもしれません。

山根さんの所有車は、極端です。壊れそうな車が2台。しかし、ガルウイングは、おそらく10万ドル以上。ポルシェやBMWも、5万ドル以上はする車です。
どう言う感覚で、この車のセレクションをしているのか、初めはわかりませんでしたが、時間とともにわかるようになってきました。

「車や時計をShow Offしない。」と彼はよく言ってました。なぜなら、「金持ちだと思われたら大変なことになるので」と。

だから普段の買い物や、遊びに出かけるときは、古いトラックかVWです。
ポルシェや、ガルウイングは、たまーにエンジンの調子をキープする目的で朝早くから乗り出して、どこかを走って午前中には帰ってきていました。

ポルシェ928は、彼曰く、スペシャルチューニングのモデルで、世界で50台限定と言っていました。その50台のうちの2台を一人が所有しているなんて言うことがあるんだ。と一人で感心して聞いていました。

ある日曜日の朝、カネオヘのショッピングモールの第二駐車場で開催しているフリーマーケットに行くことになり、山根さんのシェビーに乗せてもらい、二人でフリーマーケットに行きました。
このフリーマーケットは、毎週日曜日の午前中だけ開催しています。
駐車場にはいろいろな店が出店していて、ガラクタばかりですが、見ていてとても楽しい光景です。
僕は、古いKAMAKAのウクレレを見つけて40ドルで購入!あとは相当古いLeeのGジャンを1枚を5ドルでGetしました。
山根さんは、何を考えてのことか、古い電話機を買ってました。
アロハスタジアムのフリーマーケットと違って、ローカル色の濃いマーケットです。プロがほとんどいません。個人の出店で、自宅のガレージや部屋にある不要なものを並べて売っている感じでした。

フリーマーケットの帰りに、ベトナムレストランでPhoを食べて帰ろうと言うことになり、早ランチをして帰宅しました。
ところがその後に、問題が発生したのです。

家に帰って、お互いが其々の部屋に戻ってしばらくしてから
彼が僕の部屋のドアを突然ノックしてきました。
え?なになに?と思い、ドアを開けたら、山根さんが、「大変なことが起きた」と。
話を聞いてみると「さっき買ってきた電話機が使えない」と言うのです。
帰宅してすぐに、電話線を繋いでCallをしてみたのでしょう。それで電話機が壊れていると言うことに気がついて、返品してくると言うんです。

ボロい薄汚れた電話機は、「いったい幾らで買ったんですか?」と尋ねたら
「1ドルで買った」と言うんです。
僕はひっくり返りそうになりました。
「1ドルで買ったんだったら、壊れててもしょうがないし、諦めたほうがいいんじゃ無いですか?」と言いました。
しかし山根さんは、諦めきれない様子で、「売っていた奴が、電話機は正常に使える」とはっきり言ってた。と。
その時点で午後1時くらいになっていたのですが、山根さんはフリーマーケットの会場に行って、返品してくると言ってきかないんです。
僕は、「これからまた行っても、もうマーケットはクローズしていると思いますし、ガソリン代と山根さんの人件費を考えると、時間ももったいないしマイナスじゃ無いですか?」と伝えたんです。
それでも山根さんは壊れた電話機を抱えて、一人でまたシェビーに乗って出掛けて行きました。

1時間も経たないうちに、山根さんは電話機を抱えて戻ってきました。
案の定、マーケットの出品者はもうすでに退散していて、その場にいなかったようです。
僕はもうあまり電話機のことで突っ込まないで、軽く違う話をして、その日はリビングには行かずに部屋に戻りました。

毎日があっと言う間に過ぎて行きました。
それから1週間が経ち、また日曜日の朝です。
僕がダイニングルームでコーンフレークを食べていると、山根さんが例の電話機を抱えてガレージの方へ向かい、車で出掛けて行きました。エンジン音からしてVWで出ていったようです。

僕はその日は、掃除洗濯Dayに決めていたので、午前中に洗濯をしていて
ちょうど乾燥機をかけていた時のこと。ガレージがリモコンで開き
ドッドッドッドッと、フラット4の音がして山根さんが帰ってきました。
顔は穏やかです。

まさか!

僕は、「お帰りなさい!」と言ってリビングに移動して
山根さんの話を聞き、びっくりしました。

なんと、「フリーマーケットに行って、電話機を売ってたやつを探したら、同じ場所で店を出してたので、返品して1ドルを返してもらった」と。

そう言うのです。

なんと言う根性!

でも、「2回も向かったらガソリン代と、それよりも山根さんの人件費で、大きなマイナスになるのでは?」と僕が言ったとき
山根さんは、「今の仕事の時給はいくらもらってる?」と逆に質問をしてきたのです。
僕の時給は8ドルだと正直に答えました。
そしたら、彼は、「金儲けをするには自分の時給は、その都度変えて行動をしないといけない」と哲学的なことを言い出しました。

僕は、電話機を買ったのが僕だったら、返品するのにマーケットに再度行く場合、ガソリン代で数ドルかかり、それに要する時間を 1時間使うとしたら、時給分8ドル。
どう考えても、10ドルくらいはかかる。1ドルの返金に10ドル費やすのであれば、意味がない。と考えていました。

しかし、山根さんは、「その考えでは一生金持ちには成れないよ。」とキッパリ言ってのけました。
考えさせられる言葉でした。
損してまで、1ドルを回収しに行く理由とは??

山根さんは、「時給を考える時点で使われの身でしかない。金儲けは給料を取ることとは全く違う。例えば時給で考える場合、自分の時給は10ドルでも良いが、時には時給1,000ドルに設定する事もある。また、時にはマイナスにして考える必要もある」と。

「壊れた電話機を、またどこかの誰かに売って、現金1ドルにするにはとても苦労を要するし、
今、車に乗って使った分のガソリンを金に変えることも非常に難しい。
でも、電話機を返品出来るのであれば、1ドルを手にすることは比較的可能性が高いので、その考えを迷わず行動に移すのみ。」

「結果、今、現金がここにある。」

と、1ドル札を見せてきた。

「行動をしなければ、この金は今ここにはない。」

と。

このような、金に対する考え方をする人に、初めて会いました。
























































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