車窓風景:姨捨(JR篠ノ井線)
日本三大車窓といわれる姨捨駅からの善光寺平。
姨捨(おばすて)。
姥捨ての伝説が残る地として知られているが、実際に調査した人によるとこの地域ではそのような話はないという説もある。
また、姨捨の姨と姥捨(うばすて)の姥では微妙に意味が異なるが、共に老女を意味することには変わりない。
小説楢山節考では、舞台は信州だがモデルとなったのは甲州であるという。
結局よくはわからないのだが、駅としては高度感のある見晴らしの良い場所にあり、ホームからは善光寺平が一望でき、一度は訪れたい駅。
また、棚田に映る月が素晴らしく、田毎の月でも知られている。
近くにある冠着(かむりき)山は別名姨捨山と呼ばれる。(この冠着の名前にも古代の伝説があるのだが)
かつては姨捨山とは冠着山のことではなく別の山だったという話もある。
伝説や伝承という類は、結局はよくわからない。
真実を伝えているものもあれば、知らぬ間に伝言ゲームのように真実とは全く異なったものとなって伝わってしまうものもある。
加えて、誰かが勝手にほらを吹いたことや、創作したことが真実のように伝えられることもある。
伝説伝承の真偽を確かめるとなると、大変困難な作業を地道にしていかなければならないことになる。
篠ノ井線は篠ノ井から姨捨駅に向かって延々と長い上り坂を上る。
駅そのものを傾斜のある場所に作ることができないので、姨捨駅はスイッチバック駅となっている。
昨今は電車などの動力性能がアップしているため、坂の途中の傾斜した駅でも、発着が可能だが、動力の弱かった時代に、坂道発進はかなり無理があった。
だから、本線のわきに平地を作り、そこにホームを作る形となった。
列車は姨捨を発車しても上り坂をさらに上り、かつては難所と呼ばれた冠着トンネルに入る。
このトンネル内も上り坂が続き、出口の少し先にある冠着駅が坂の頂上となる。
蒸気機関車が主力だった時代、このトンネルには列車がトンネル内に入ると幕を下ろして入り口部分を封鎖して、トンネル後部の空気圧を低いままにする工夫がされていたという。
列車の後部の空気圧が高いと、煤煙が逆流し、運転士などが窒息する可能性があったということだ。
その後、冠着側のトンネル出口に煤煙の逆流を防ぐための送風装置が設置され、現在でもその遺構があるという。
私自身は数度ここを通過しているがぼんやりしていてこの遺構に気づいていない。
まあ、その程度の鉄道ファンなのだが。(笑)
そして到着した冠着駅。
これは前述の冠着山から取られた駅名。
もともとは信号所であったため、集落などは少し離れた場所にある。
ここから篠ノ井線は松本に向かって緩やかに下っていく。
※タイトル画像は、濃霧に巻かれる姨捨駅。
善光寺平は濃霧の中。2007年11月撮影。