滑川(なめがわ)大滝への旅
山形県米沢市の山の中にある滝で、日本の滝100選の一つ。
日本の滝100選に選ばれるにあたって、地元自治体は、交通至便で白布温泉街に近い白布大滝を推薦したが、滑川大滝をよく知る選考委員が滑川大滝を選んでしまったという。
確かに、誰しもが容易に見学できる白布大滝に比べ、滑川大滝はJR奥羽本線峠駅から細い道を車で20分。そこから先は30分の登山をしてやっと見ることが出来る。そんな滑川大滝と比べれば、お手軽感のある白布大滝を100選に選びたがるのは理解できる。
しかし、交通の便利さを度外視して、二つの滝を見くらべて、どちらか一方を選べと言えば、10人中9人は滑川大滝を選ぶだろう。その迫力が圧倒的に勝っているからだ。
2005年5月、私は友人らとこの滑川大滝を訪ねることになる。
当初の目的は、秘湯滑川温泉福島屋旅館に泊まり湯につかることだった。
福島駅から奥羽本線の各駅停車で30分、山間の峠駅はスノーシェッドに覆われた駅だった。ホームに待合所があるだけで駅舎そのものはない。
元々はスイッチバック駅で、この時はまだ現ホームの左前方にホームが残っていた。
山形新幹線開業と同時に廃止されたのだろうか。
山形新幹線つばさは、私たちが福島からのって来た普通電車の走る同じ線路を走っている。新幹線建設時にレールの幅を標準軌(1435㎝)に改軌し、それに合わせ駅設備等も改良新設をした。勿論普通電車も標準軌用の新しい車両に変わった。
新幹線といっても、在来線(奥羽本線)を改良しただけなので、福島新庄間では最高速130km/hしか出せない。
そして、新幹線はこの峠駅はすべて通過する。
峠駅前には一軒だけ、峠の力餅として有名な店がある。
駅から見た感じではこの店以外、民家も何もない。
宿の送迎車に乗り、新緑美しい木々に囲まれた、対向車とすれ違うのも難しい細い山道を20分ほど走ると宿になる。
宿の脇を川が流れる。
滑川大滝のある川ではない。大滝は尾根を一つ越えた向こう側にある。
同行の一人が近くに滑川大滝があるから行こうということになった。
宿に荷物を置き、小さな吊橋を渡り尾根にとりつく。
約30分ほどの山登りで尾根上にたどり着くと、目の前に滑川大滝が現れる。
https://note.com/hotakaktaros/n/n2561649c4cfe
滝の周囲は急峻な山に囲まれていて、滝の水はその谷底に流れ落ちる。
この滝は、日光の華厳の滝や、那智の滝のように、水が滝の上部から一気に滝つぼに落ちる滝ではなく、岩肌を這うように落ちて行く。
しかしその斜面はかなり急なため迫力があるし、落差80mもある。
この様に岩肌に這うように流れ落ちる滝を滑(なめ)滝と呼ぶので、そこから滑川の名がついたのかと思ったが、実は江戸時代に、ある郷士が川で滑って転んで温泉を発見したというのが、滑川の名の由来だという。
滑川温泉の前の川の事だろうと想像するが、この川の名前は宿の前の川だけに前川というらしい。(笑)
因みに神奈川の鎌倉に滑川(なめりかわ)という、同じ字を書く川がある。
富山には滑川(なめりかわ)市、房総には行川(なめがわ/住所表記としては浜行川)という地名があるが、いずれも川の水が川底の岩盤を滑るように流れ落ちて行くような場所があるからだろうか?
滑川大滝、その落ちるところまで行くには、この展望のきく場所から谷底まで降りて行かなければならない。さらに川を渡渉せねばならない部分もあるという。
当然のことながら、そこまではいかない。(笑)
尾根から見下ろす滝の姿に満足して宿に戻った。
翌日は峠駅から電車で米沢まで行き、米沢牛を食べた。
人生はじめて、牛肉に4000円以上の大枚を払った(笑)
生が苦手なのでウェルダンにしてほしいといったが、焼きは一種類、ミディアムという感じだった。
米沢からは新潟県の坂町を結ぶ米坂線がある。
現在は自然災害で不通区間が生じている。
復旧するのかどうか、地元では当然復旧を願っているだろうが、JRはおそらくこのまま廃止したいと思っているのではないか。
昨今のJRは利益第一主義のような感じがするので、災害不通をこれ幸いと思っているような気がして仕方がない。
米沢からは奥羽本線を北上して、山形を経て仙山線に乗り換え山寺をお参りして、帰途に就いた。
煩ささや 岩にしみいる 人の声
※上記の写真及び文章の内容は2005年当時のもの。