今、地方の飲食店が「レトルト加工」をするべき理由。
先月当社がリリースし、長崎新聞はじめメディアでも取り上げていただいた「飲食店向けレトルト加工プロジェクト」について、改めてnoteでも説明します。
※前半はレトルト加工についての説明が長いので、「理由」だけご覧になりたい方は目次で後編へ飛んでくださいm(_ _)m
1.レトルト加工食品について
・そもそも「レトルト加工」って何?
まず、以下がレトルト加工食品の定義です。(公益社団法人日本缶詰びん詰レトルト協会HPより)
合成樹脂(プラスチック)フィルムやこれとアルミはくなどをはり合わせた光を通さない材質のパウチ(袋)または成形容器を用い、内容物を詰めて完全に密封(ヒートシール)し、加圧加熱殺菌(レトルト殺菌)を行い、常温下での長期保存性を与えた袋詰または成形容器詰食品。
簡単にいうと、パウチなどに袋詰めにされた食品を、110~120度を超えるような温度で熱する(加圧加熱殺菌といいます)ことにより、食品内部のボツリヌス菌をはじめとする菌を殺菌し、常温保存かつ長期保存できるようにした食品、ということになります。
具体的な商品としては、当社の「五島の鯛で出汁をとったなんにでもあうカレー」もそうですし、大塚食品さんのボンカレーやハウス食品さんのククレカレー、今では各ご当地でもたくさんのレトルトカレーが発売されていますよね。
<五島の鯛で出汁をとったプレミアムな高級カレー>
・レトルト加工のメリットって?
レトルト加工のメリットは以下です。
①常温で長期保存可能であること。
②備蓄食、保存食、防災食としてストックしておけること。
③調理が簡単であること。
④加工できる食品の種類が豊富であること
①常温で長期保存可能であること。
上記で説明したように「加圧加熱殺菌」をされている食品なので、普段の料理のように冷蔵庫や冷凍庫へ入れる必要はなく、常温で長期間保存ができます。当社の製品ですと賞味期限は「製造から現在1年半」としています。(原理的には5年いけるそうです)
賞味期限が長いだけであれば干物や冷凍食品といった加工方法もあるのですが、干物だと対象食品が限られてしまいますし、冷凍食品は冷凍保存するのに冷凍庫+光熱費が必要な上、配送はクール便になるので送料も高くなってしまいます。
※当社の主力商品「ごと焼きごと芋」も10年以上冷凍食品として販売していますが、美味しさを保てる反面、管理と配送には常に悩まされています。。送料高杉!
②備蓄食、保存食、防災食としてストックしておけること。
①で説明したとおり常温保存かつ長期保存できること、そして1袋あたりは約100g~300g程度の大きさですので、保存に場所もとりません。
従って、災害など非常時の際はもちろん、手の混んだ料理が面倒な際などに使い勝手がとても良いのです。
③調理が簡単であること。
レトルトパウチ食品は、袋そのままの湯せんで5分程度、もしくはレンジで2~3分温めるだけで、美味しく召し上がることができます。(落合陽一さんのように温めずにそのままストローで飲む方も中にはいらっしゃるようですが…)
忙しい主婦の方や仕事が遅いサラリーマンの方など、調理する時間がないときはよくレトルト食品を活用されているかと思います。
④加工できる食品の種類が豊富であること
最も有名なレトルト食品といえば「レトルトカレー」だと思いますが、他にもシチュー、パスタソース、スープ、雑炊、介護食、お肉まで様々な加工に対応可能です。
当社もレトルト加工をはじめて3年目になりますが、加圧加熱殺菌という過程上、「煮込む」ものには比較的相性よく感じています。
2.今、地方の飲食店が「レトルト加工」をするべき理由。
ここからがタイトルの通り、本題です。
・五島の状況
私が住む長崎県五島市は多くの産業が観光によって成り立っています。特にここ数年のメディアでの五島の露出増、そして2018年に「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」が世界文化遺産に登録されたことにより、五島への観光客は飛躍的に増加しました。
<世界文化遺産に登録された奈留島の江上天主堂>
観光客の増加が見込めれば、その需要を見越した飲食業、宿泊業等への投資が始まります。五島でも昨年頃から多くの飲食店やホテル、ゲストハウスのオープンが相次ぎました。計画中のものも多数あります。
五島以外の、インバウンドで観光客が増加していた離島や地方も似た状況だったのではないでしょうか?その状況下でのコロナ禍。もちろんあとにはひけません。乗り越えるにはどうすればよいか。
そこで、まず飲食業の方々はレトルト加工を検討すべきだと考えます。
・レトルト加工を勧める理由
以下、理由を列挙します。
①島内だけでなく、島外出荷が可能となり、販路を分散。収入減を抑えられる。
②賞味期限が長いので、在庫消化のペースをコントロールしやすい。
③「自分の店」「自分の地域」の味を全国の方々に知ってもらえる。
④アフターコロナの世界で、むしろ成長するチャンスがある!
①島内だけでなく、島外出荷が可能となり、販路を分散。収入減を抑えられる。
これはレトルト食品の「常温保存、長期保存可」という特徴があるからこそ。コロナ禍では地元の方向けの飲食提供、頑張ってテイクアウトで対応するくらいしかできないですが、レトルト加工することにより島外出荷が行え、新たな収入源の確保、そして販路の分散が可能となります。
②賞味期限が長いので、在庫消化のペースをコントロールしやすい。
製造業を営む中で、最も悩ましいのが「在庫消化」。特に食品には「賞味期限」というデッドラインがあるので、どの事業者も苦しみます。スーパーなどでは夕方になると惣菜コーナーで半額シールが貼られていたりしますよね。あれを皆避けたいのです。
その点、レトルト加工は賞味期限が(当社では)1年半と通常の食品と比べると圧倒的に長いので、無理に安売りして在庫消化をせず、自分の選択する販路に適正な価格で販売しながら、在庫をコントロールすることができます。
③「自分の店」「自分の地域」の味を全国の方々に知ってもらえる。
飲食店を営む方々は特に「自分の店」の味にこだわりをもってらっしゃいます。もちろん島外のお客さまからすると「五島のお店」にわざわざ行って、その店の雰囲気に包まれた中で食べるから美味しい、ということも十分理解できるのですが、コロナ禍ではまずお店に行くことができません。
そこで、レトルト加工することにより、自慢のお店の味を地元の方以外にも味わっていただくことができる、ということは素晴らしいことなのではないでしょうか。
また、その地方ならではの食材を活用したレシピもたくさんあるかと思います。その食材が全国に出荷されることにより、食材をつくる農業や漁業を営む一次生産者さんも喜ぶことになります。
それらの味を知っていただいたのち、コロナが収まったあとにぜひ観光で訪れていただくことにつながるのであれば、結果的にとてもよい認知度アップ施策になったといえるのではないでしょうか。
④アフターコロナの世界で、むしろ成長するチャンスがある!
私はこれが最も大きい要素だと思っています。五島だけでなく、全国の離島、地方の飲食業に言いたいです。
観光やインバウンドという要素は売上を伸ばす上での「一つの販路」でしかありません。
五島は前述の通り、ここ数年観光は上り調子でした。また、全国的にもインバウンドが好調。どうしても観光頼みの事業が増えてしまったことは仕方ありません。当社もそうです。
当社は食品製造・販売業のほか、おみやげ屋やカフェを営んでいるのですが、店舗はもちろん大打撃を受けています。特にGWは昨年度比80%減。観光客向けのイベントや新メニューも開発していたのですが。。現在はなんとか地元のお客様に支えられている状況です。
ただ、当社の場合はまさにレトルト食品を通販や卸で島外に出荷していたことにより、会社トータルとしての痛手は最小限で堪えています(今のところは…)。商品が巣篭もり需要、備蓄需要にマッチしていたことも大きかったのですが、総じて販路の分散ができていたことが要因だと考えています。
アフターコロナの世界では、よりその戦略が大事になってきます。コロナがいつ終息するのか不明なことに加え、米中摩擦の行方も気になります。観光頼み一本の戦略はありえません。
一方、日本はいつどこでも災害に襲われる可能性のある国です。保存性の高いレトルト食品の需要は高まる一方でしょう。
つまり、アフターコロナの世界において、レトルト加工食品の製造にチャレンジしない理由はないのではないか?と思うわけです。
<フジ系列「土曜はナニする!?」での巣ごもりレトルトカレー特集>
・「ごと株式会社」の飲食店向けレトルト加工プロジェクトについて
さて、そのようなレトルト加工を、まずは五島市の飲食店の方々に活用していただくというプロジェクトが当社が先月発表した内容となります。
詳しくはこちらの記事にも記載されていますが、簡単にまとめますと、、、
①対象は五島市で飲食業を営む法人、個人
②加工分担について、原材料調達や一次加工から当社が行うか、最終の加圧加熱殺菌のみ行うか選択可能
③レシピについて、今回の目的以外には使用いたしません(当然ですね)
④料金は原材料費や水道光熱費などの実費分のみご請求
⑤最小ロット100袋~ご案内可能
⑥当社の販路をご活用いただけます
となります。
既に10社近くのお問い合わせをいただいていますが、皆さま④⑤を喜んでいただけるのは当然として、⑥の当社の販路を活用いただけることもメリットに感じていただいています。飲食店一筋で働いてきた方にとって、いきなり「島外に販売しましょう!」といってもそれは難しいことでしょう。
従って、まずは当社の通販販路を活用したり、自分のお店で物販をやったり、都市圏にある長崎のアンテナショップなどに出荷することにより知見をため、アフターコロナに向けて共に歩んでいければと考えています。
このプロジェクト、五島市以外、例えば長崎県全体や、全国の離島や地方の方々も対象にしたいのですが、当社の開発・製造能力も限界があるので、一旦五島市を対象にしていることをご了承くださいませ。。
ただもちろん、お問い合わせは受け付けておりますし、通常の価格よりはお安く、また小ロットからご案内させていただく予定です。
3.伝えたいこと
ちなみに当社がこのプロジェクトをやることになったきっかけは?とよく聞かれるのですが、、単に五島の美味しいお店がつぶれてほしくないという個人的な理由からです笑
あとは五島の事業者さんが、より島外から観光以外で外貨を稼いでくれるきっかけになればな、と。都会に住む何百万、何千万の人々に五島の商品が買われれば、どれだけ島の経済が潤うことでしょう。
また、今回のエントリにも繋がりますが、この話は五島だけでなく、全国の離島、そして地方にも当てはまることです。ぜひチャレンジしてほしい。
さらに、飲食業だけでなく、お土産屋さんなどの小売業や、ホテルなど宿泊業の方も、「地元の味」を活かしたPB商品として開発・販売されるのもよいと思います。
レトルト加工が可能なメーカーはそれほど多いわけではありませんが、当社のように小ロット対応や販路の相談まで乗るメーカーも今はいらっしゃるのではないかと思います。(もしいなければ当社までご連絡ください笑)
また、今回レトルト加工に絞って記事を書きましたが、もちろん他にもいろんな方法があるかと思います。今の状況を乗り切り、アフターコロナでも成長できるようなチャレンジであればなんでもやってみる価値があります。共に頑張りましょう!
以上、長くなりましたが、「今、離島の飲食店がレトルト加工をするべき理由」について書かせていただきました。ご覧いただき、ありがとうございました。
もちろん、当社では全国各地の皆さまからのレトルト加工のご依頼も承っております。
ご興味のある方は、当社PB・OEM製造ご依頼フォームからお問い合わせくださいませm(_ _)m
以上、ご覧いただきありがとうございました。
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