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命令に「はい」ですむ時代はもう終わらせたい


ひとにぎりの未来(新潮文庫)

星新一のショートショート「はい」は、未来の世界における人間の生き方を考えさせられます。コンピュータが人間の入学、就職、結婚、出産などすべてを管理し、人間はただ「はい」と指示に従うだけの存在。そんな世界では、個人の自由や意志は完全に奪われてしまうのです。
なんて気持ち悪い話だと思われるでしょうが、私たちもどこかで、この物語にひっかかる部分があるのではないでしょうか。
例えば、近所の仲人から「この人と結婚しなさい」と言われたり、親から「この学校に行きなさい」と勧められたりした話は、特に昔の人なら誰でもあるでしょう。また、会社で上司から指示された仕事を、いやいやながらもこなしている人も多いはずです。
「まるで北朝鮮みたいだ」という意見ももっともです。あるいは、「昔の江戸時代の、一生同じ村の中だけで暮らす百姓のよう」という見方もできるかもしれません。いずれにしても、個人の自由が制限され、社会全体が画一化されているという点では、共通しています。
しかし、この物語は単に未来社会の恐ろしさを描いたものではありません。私たちに問いかけているのは、「命令に対してどのように向き合い、自分の意志で生きていくか」ということです。
コンピュータや社会のシステムに振り回されるのではなく、自分自身の考えや価値観に基づいて行動できるかどうか。それは、現代を生きる私たちにとって、非常に重要な問いと言えるでしょう。

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