生井 指数
煙草を吸う俺は元々、中小企業に務めていた。んでそこの仕事とかは全然余裕で、まさにデキる男って感じやったわ。まぁでも?べっぴんさんもいなければ優しい同僚すら居ねぇからつまらんわけよ、ほんならマッチングアプリなるものを使ってみて出逢いを求めたのさ、しかし神は俺から恋運を奪ったのか全くいい女がいねぇんだ。58歳?60代?年上もいい所だ、辛うじてその企業の清掃員は若ぇ女なんや、眺めるだけで俺は良かったのかも。
階段を降りた後に二重の重くて丈夫なドアがあるからそこを抜けるとよ、新鮮な空気を吸える外に着くんだ。そこんところで煙草休憩しとる。
つまらねぇ社員共にはそれぞれあだ名っちゅうもんがついとってな?俺は煙草は吸うし出会いの理想が高すぎるから“ヤニユートピア”だとよ…クッソ腹立つな中学生でもマシなあだ名を思いつくはずだわ
んで話を戻すと今日はもう1人休憩所に溜まってた、鼻血を出して止まらなくなりキーボードを血まみれにしたって言われてるジジイがおった。その名も“鼻爺”、俺より可哀想だわな、鼻爺は生きる時代が違ったから話してるとよく「昔は良かった」とか他愛もない話ばっかでウンザリする、懐古厨で鼻血野郎とかステータスてんこ盛り過ぎだろなんて思いつつも今日も一服。コロナ禍で企業が倒産した時は絶望した、まさか社員の半数がかかり始めるだなんて思わなかった。思いたくもなかった、清掃員の姉さんはあだ名すらなかった、でも美しかった。だから俺はたった独りだけどこう考えた、“理想郷”ってね