【リバース:1999】3-15もう一つの未来 チェスのシーン【考察】
※妄想が多く含まれており、この考察は正確でない可能性があります。
〇"もう一つの未来"
3-15では、ヴェルティ率いる最前線学校の児童が閉塞した空間から脱しようと試みる脱出劇が描かれています。
ヴェルティたちは計画通りに進んでいると思っていますが、その実コンスタンティンの手の上で踊らされているだけでした。
仲間たちがストームによって時代を逆行する様子を見せつけられたヴェルティはコンスタンティンの思惑通りタイムキーパーになることとなります。
〇チェスの表現
この一連の両者の対立をチェスの対局のような演出で表現しているのが特徴的でした。
「ツークツワンク」とはチェス用語で、自分が不利な状況になると分かっていても指さざるを得ない一手を意味します。
そして、「学校の見取り図」と「チェスの初形の盤面」を見比べるとかなり似ていることが分かります。
四つ角の塔がルークの配置と同じですし、"central square"も地図に描かれています。
マヌス・ヴェンデッタがいるのがh1のマス(=東南部の塔/Exit1)、ヴェルティたちが向かおうとしているのがa8のマス(=西北部の塔/Exit2)になります。
〇開始盤面
チェスのシーンが開始されるとき、盤面はすでにこのようになっています。
これは「ルイ・ロペス」と呼ばれるかなり古典的な定跡です。「ルイ・ロペス」は、この定跡を提唱したスペインのカトリック司祭の名前をとってつけられていて、「スペイン定跡」や「スパニッシュ・ゲーム」とも言われます。
最もオーソドックスな定跡であり、古くは15世紀から指されていました。21世紀でも現役で指されている定跡になります。
歴史の古い定跡を採用したのも、時代を逆行する「リバース:1999」の世界観とつながりがあるのかもしれません。
〇両者ピースを動かす
白側がコンスタンティン、黒側がヴェルティたちです。
黒番が、a6とポーンを突いたことが映像から分かります。これは「モーフィー・ディフェンス」と呼ばれる変化で、「ルイ・ロペス」の変化では最も一般的な黒の応手です。
続いて白番がBa4。チェスではポーンは斜め前の駒を取ることができます。この状況は、a6のポーンがb5のビショップを取れてしまう状態なので、コンスタンティンはビショップを下げるよう指示します。
ここまでで盤上ではこのような感じです。
黒番はここが攻め時とさらにビショップを追い詰めるためにb5と指します。
ここでもビショップに攻撃が当たっているので、白番はBb3とさらにビショップを下げるように指示します。
盤上ではこんな感じです。
一見すると黒が攻め込み、白は追いやられているように感じます。しかし、これはコンスタンティンの罠です。中央管理塔の明かりを落としたりプレゼントで気を逸らしたりヴェルティたちにわざと有利になるような状況を作り出しています。
〇逃走開始!
黒番の次の一手は、Nf6であることが映像から分かります。
ヴェルティたちが寮を抜け出したことを意味します。
続く白番はO-O、つまりキングサイドキャスリングの指示。キャスリングとは、キングとルークの間に他のピースがないときに、一気に1手でキングとルークを動かせるルールのことです。
図書館のA12やA11の窓が開いていることや、コンスタンティンの”後ろ側の窓一列にはすべて鍵をかけていない”という表現はキャスリングができる状態であるということを示していそうです。
盤上ではこの状況です。
〇トラップにかかってしまうヴェルティたち
キャスリングし終えた盤面をよくみてみると、白のe4のポーンがいまどのピースでもサポートされていない状態になっていて、黒のf6のナイトでタダ取りできるふうになっています。
ヴェルティたちのはやる気持ちと対応するかのように、黒番はNxe4とナイトでこの浮いているe4のポーンを取ります。
しかし、コンスタンティンが不敵に笑っているように、この手はあまりよくない手です。
盤上だとこんな感じです。
映像の演出はここで終わりですが、この後の進行についてもう少し考えてみたいと思います。
なぜe4のポーンを取ってしまうのがあまりよくないのかというと、次の白Re1の手があるからです。
黒のキングを白のルークはまっすぐに狙っており、厳しい1手です。ルークというピースは将棋でいうところの飛車と同じで、縦と横に好きなだけ動くことができます。
この縦横無尽に突撃していく様子がチェスのシーンが終わったあとに登場するリーリャに似ていると感じました。
また、リーリャの言う「悪ガキたちの後ろに何かいる」「あの優等生」というのは当然ソネットのことですが、ちょうど盤上をみてもe4のマスのナイトの後ろに、e5のポーンがいます。(図の赤いマーク)
リーリャはコンスタンティンの策略に気づいてヴェルティたちの脱走計画を阻止しようとしますが、それがチェスの盤上にもよく表れているのです。
〇それでもヴェルティたちは進み続ける
ヴェルティたちはソネットの援護もあり、リーリャを退けて西北部の塔(=a8のルーク)を目指します。
そのときにヴェルティはソネットに別れを告げますが、下の図においてソネット(=e5のポーン)はリーリャ(=e1のルーク)にピンされていて動くことができません。ピンというのはチェス用語で、そのピースが動いてしまうとキングが取られてしまうため、その位置に固定されてしまう状況のことを指します。
また赤い線のナイト(=ヴェルティたち)とポーン(=ソネット)は1マス分離れており、物理的・心理的な距離を感じさせます。
ここからはチェスの描写がないので、単なる想像での進行になります。ソネットは最前線学校へと戻ることになるので、白のナイトで取られます。(=Nxe5)
それでもヴェルティたちはa8のルークを目指して進みます。
そして、ヴェルティたちはようやく西北部の塔に到達することができました。
しかし、ナイトがb7のマスに移動したこの1手で、盤上では黒番のチェックメイトが確定しています。
5手メイトになります。詳しい手順は省きますが、最終的には以下の形でチェックメイトになります。
このチェックメイトは、ヴェルティ以外の児童がストームにのみこまれ、さらにヴェルティがタイムキーパーになるというコンスタンティンの思惑通りになったことを示しています。
〇まとめ
3-15はチェスのシーンが印象的でしたが、ヴェルティたちの逃走劇とコンスタンティンの思惑を盤上で見事表現していると思います。コンスタンティンは手にチェスのピースを持っていますし、プレイヤー情報のキャラ収集率のアイコンにチェスのピースが使われていたりと何かとチェスのモチーフがよく出てくるので、今後も何かチェスの表現が使われるのかもしれません。
最後に、もう一度学校の地図とヴェルティたち(=黒のナイト)が通った経路を比較してみましょう。
地図の青い経路と似ていると感じます。やはりチェスの盤上と地図はリンクしていると思うのです。
―B.―